足の指の伸展:構造と機能の違い
足の指の伸展は、手の指の伸展と似た構造を持っていますが、機能において大きく異なります。特に、足の指の中足趾節関節(MTP関節)は、手の指の中手指節関節(MP関節)とは異なり、伸展の可動域が屈曲よりも広いことが特徴です。この点は、ヒトの足が二足歩行に適応するために進化した結果とされています。
足の指の伸展と屈曲の可動域
足の指の伸展・屈曲の可動域は以下の数値で示されています:
• 自動伸展:50〜60度
• 自動屈曲:30〜40度
• 他動伸展:90度以上
• 他動屈曲:45〜50度
この伸展が優位であることは、二足歩行における安定性や推進力の確保に寄与していると考えられます。
足の指の伸展に関わる3つの筋肉
足の指の伸展には、主に以下の3つの筋肉が関与しています。
1. 短趾伸筋:足背部に位置し、第2〜5趾のMTP関節を伸展させます(ただし第5趾はこの筋肉の作用を受けません)。
2. 長趾伸筋:下腿の前方に位置し、第2〜5趾を伸展させます。第5趾はこの筋肉によってのみ伸展されます。また、足の指の伸展に加えて、足関節の屈曲にも関与します。そのため、足の指を単独で伸展させるためには、足関節を伸展させる下腿三頭筋との協調が必要です。
3. 長母趾伸筋:下腿の前方に位置し、母趾(第1趾)の伸展に作用します。この筋肉も足関節の屈曲に関与するため、足の指を単独で伸展させる際には足関節伸筋群との協調が求められます。
短趾伸筋の重要性
フランスの神経学者デュシェンヌ・ド・ブローニュは、「足の指の真の伸筋は短趾伸筋である」と主張しました。これは、長趾伸筋と長母趾伸筋が足関節の屈曲にも関与しているため、足の指の伸展に特化した筋肉は短趾伸筋のみであるという考えに基づいています。この視点は、足の指を独立して動かすために短趾伸筋がいかに重要であるかを示しています。
著作者情報
この記事を書いたトレーナー
山岸慎(やまぎし まこと)
STUDIO KOMPAS 渋谷店
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