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ピーティーエーッ!
穴に埋めたいほど恥ずかしい私の過去を暴露する。
なんだと思いますか?
それは……なんと、なんと。私は「PTA会長」をやったことがある、ということ。
キャー‼︎ だって、恥ずかしくない? なんか教育ママっぽい! メガネ掛けてキリッとして壇上でマイク片手に拳を振ってそう!
自分の辞書にまずないと思っていたこの単語。なぜにかような平凡な主婦に降りかかったのか?
と言っても、幼稚園のPTAなんですけどね。
しかし、みなさん。これがなかなか大変でして、はい。
子どもが通っていた幼稚園は、母親もどんどん働けるような環境に移行しようという世の習いに逆行していた。つまり、子どもに掛けられるだけの手をかけるという、それはそれは母にキビしく、子に優しい幼稚園だった。いや、褒めてますってば。本当にいい幼稚園だった。
もちろん毎日お弁当。園バスはなしで、幼稚園まで送迎(できるだけ歩いて)。サークル活動もあるし、ボランティア活動もある。委員会活動も、もちろん。バザーもお祭りも親たちが過熱しすぎて、中止になったほど。
だからだろう。お母さんたちも始終顔を合わせているだけあって、顔なじみ。クラスメートの家族構成はほぼ把握しており、母たちにとっては、第二の女子校のような場所だった。
楽しいっちゃ、楽しかったです。めちゃくちゃ。ママ友もパパ友もたくさんできたし、キャンプに運動会、クリスマス会、大号泣の卒業式(自分の卒業でもある)。卒園後も子どもも親もしょっちゅう立ち寄れる素敵な幼稚園。
何と言っても、子どもがそこを大好きだったのが、とてもよかったと思う。
でもね。そこの会長なのだからして、女の園の頂点なのである。
聞くだけでげんなりするよね。過熱してバザーが禁止になったほどの熱が渦巻いているわけでして。
なんでも数代前の副会長はストレスで突発性難聴になったとか、気に入らない会長宅にOGたちが駆け込んだとか、会長がヒラ役員に呼び出されて囲まれたとか、なんかヤバい噂があとを立たず。やっぱり何だか女子校みたい。
そんな私が呑気になってしまったのが会長職。
なりたかったわけじゃない。なるとも思っていなかったし、立候補したわけでもないのだが、なぜか推薦投票で一票だけ、人より頭が出てしまって当選した。なんと一票の差に泣くなんて(私が)!
選挙前はママたちの間で下馬評が飛び交い、私は完璧なダークホースであった。小学校1年生のお兄ちゃんがいるということも、当選予想から外れた理由だ(お迎えがあったりして、1年生の親は何かと忙しいので普通は票を入れないのだ)。
投票前には電話やメールが入ってきて、やれ「●●さんは出馬するか?」だとか「△△さんに投票しようよ」などの、ウンザリするような根回し地ならしがなされていたし。仲良し派閥が大勢で幹部を席巻しようと蠢いている、という噂もあった。
いやいや、こんな世界は絶対イヤじゃと思っていた矢先の当選。
どこの馬の骨? と、無名の私を訝しんでいる人。当てが外れてがっかりしている人。当然、軽く恨まれたりもした。
たぶん私はどこのグループにも属していなかったので、無党派層を集めたのではというその後の票読みで……って、どこの政界の話だよ。
そして当選した瞬間から、山のようなファイルや議事録を渡され、前年度もそのまた前の年度もずっとスケジュールをみると毎日会議だらけ。遠足には付き添うし、園行事にはすべてアシスタントで入る。子どものお楽しみ会は企画するし、母親たちの講演会も主催。なんやこりゃ、出版社勤務並みに忙しそうなのである(そうだよ、私には1年生の息子もいるし!)。
こんなそんなで女山のボスとなった私であるが、結果として案外うまく行ったのであった。みんな仲良く、最後の会議は涙あり笑いあり、その後も飲み会などで集まったり……。
何が良かったのだろうと振り返ると、ひとえに無欲の勝利だったのかもしれない。
何か志があったわけでもないし、成り上り意識もない。自己顕示欲もない。承認欲求もない(なぜか平和そうな子育て中のママたちの間でも、そういう尖った意識は度々湧き上がるのである)。
とにかく、その場にいるみんなの利益を考えることだった。
自分の希望や欲望はさておき、園のみんな、とくに子どもたちのハッピーを第一優先で考えること。
あまりにシンプルであまりに当たり前だが、それに尽きると思う。
そこが伝わると、ものごとは穏やかに回るのだなと実感した。
なぜ、こんなことを書いたかと言うと、最近読んだ記事で糸井重里さんがこう答えていた。
「自分がどれだけ利益を得られるか」を考えることを休ませる知性が求められている。
僕は、自分の利益を優先する資本主義の代わりになるものとして、自分を殺してでも人を生かすという利他性がキーワードになるのかなと思っています。
コツは、自分の利益を後回しにすること。そうかもしれない。
社会ってそういうことなんだと思う。
って、オイ。安倍さん、オイ、聞いているか。
中には暴れ馬もいたり、当初、金髪ママから「あいつ、潰す!」と影で言われたこともあったらしいが、この姿勢を貫いたおかげで、おさまったどころか「姉御」と呼ばれるようになったのでした……。めでたし。
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