2020-4-30
小さい頃から好きだった あのにおい
夏の朝のにおい
日は直接当たっていない それなのにやけに白い朝 風呂場、すりガラス外の格子は今日もぶっきらぼう 外を覗くのはこわかった
5cmあけた窓から 夏のはじまりみたいな空気が少しづつ入ってくる
全部開けきることなんてできないので このくらいが丁度いいのだ
小学生
毎週金曜
うわばきをかならず家に持ち帰ってきた
土曜の朝
風呂場にひとり、うわばきを洗う
柄の先がクマの顔の形をしたブラシはダメ
それはお父さんのYシャツの襟を綺麗にするの
脱水は決まって5分 洗濯機はうなって静けさを作った
脱水が終わり2階にうわばきをもっていく
裸足で洗っていたから足がびしょ濡れだ
足をマットで拭いて、くつ下を履く
2階に上がると風呂場よりも濃い濃度の夏のにおいがした あの頃は夏があまり好きじゃなかった
居間に戻るとおじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さんがいてコーヒーを飲んでいた
ねえあの時、なんの話しをしていたの?
大人はいつだってわたしのあこがれだった
大人に囲まれて育ち、自分も早く大人になりたかった
大人に擬態したかった
わたしも皆みたいにかっこいいのが良かった
小さいわたしにとって土曜の午前はやすらぎだった
皆がお話を聞いてくれるから
甘えきって頼りきった
ずっと「一番年下」でいた
幼いなりの決まり事
風呂場でうわばき洗いながら歌いながら考えながら、
子供ながらに色々あったね
でも絶対に、大切な場所、時間だったね
あの頃
窓から少し覗いた外の景色を覚えていない
小4の時に建った灰色のアパートは世界を狭めるみたいだからあんまり好きじゃなかった
今では他の家庭がそこにあると考える なにも知らない他人が自分のそばで生活を送る 微妙な距離感どぎまぎする
2階 階段横の窓から見えたあの景色だけは覚えてる
今はもう開かない開けない 木製の雨戸
外は青色で内は紺だった
重くてかたい古びた雨戸
すぐそばに建ってるはずの高層マンションがやけに遠く見えて変な感じだった 不思議に思った
2020-4-30
今日はやけに夏のにおいがした。久々にベランダに出ると気持ちよかった。しゃがんで昔みたいにじっとした。昔を振り返るとすこし傷つくけれど、今日はそんなこともなかったよ
買い出しに行ったスーパーは混んでいた。密です、密。ずっと前からコンビニのアイスコーナーで目をつけていたセンタンのアイスキャンデー(多分ほとんどの人が見たことがあると思う。男の子の顔が描かれている、長細いパッケージのあれ)をついに購入。しかし帰宅後部屋に放置、見事に溶け、割れた。目の前でグシャッとアイスの割れる音がした。悲しい………
「においは記憶と密接な関係にある」と、前にドラマで聞いたことがある。わたしにとって永遠のテーマだ、においと記憶
良い記憶も悪い記憶も全て すぐには消化できない。
それでもいまは良い。全部がいまのわたしを作っているし、1日1秒はいつも無駄ではないので。
好きなバンドのめでたいニュースに心踊り、一周まわっておセンチに浸りながら就寝 。
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