東シナ海の小さな島ブランド株式会社(鹿児島県薩摩川内市・甑島)
先週は鹿児島の離島、甑島(こしきじま)に出張しました。
甑島は上甑島・中甑島・下甑島という3島の有人離島と多数の小規模な無人島で構成されています。ちなみに下甑島は漫画の「Dr.コトー診療所」のモデルとなった手打診療所があることで有名です。
私は上甑島の里地区を拠点に活動をされ、「令和4年度ふるさとづくり大賞」で内閣総理大臣賞を史上最年少の38歳で受賞された方を取材しました。
その人の名はヤマシタケンタさん。東シナ海の小さな島ブランド株式会社(通称:アイランドカンパニー)の社長です。
アイランドカンパニーの事業は一言では語れません。
ヤマシタさんが耕作放棄地をなんとかしようと農業を始めたことを皮切りに、集落で唯一の豆腐屋、ベーカリー、行商(移動販売)、宿泊施設、カフェ、バー、古民家再生、公共施設管理、特産品開発など…なんと17もの事業を甑島で手掛けています。
通常の会社経営だと儲かっている事業を横展開するのが普通です。その方が培ったノウハウが活かせて、仕入れコストも削減できるなど、効率的に利益を上げることができるからです。
しかし、アイランドカンパニーの事業は全てゼロから立ち上げています。しかも素人がです。だから非効率は承知のうえ。このことから利益を優先している会社でないことがよくわかります。集落にないもの、あったらいいものを作り出しているまさに本物のまちづくり会社です。
昨年からヤマシタさんは「鹿児島離島文化経済圏」という団体を立ち上げられました。この団体には南北600キロに広がる鹿児島の有人離島28島のキーマンが参加しています。
従来の自治体単位ではなく、明治維新前のように海域で自由に連携することで、人口減少が深刻な各離島の活性化を図ることを目的にしています。なんともスケールが大きい話で私は惹きこまれました。
もちろん全てが順風満帆ではありません。アイランドカンパニーは社員が複数の仕事をこなさなければならないなど理想と現実のギャップがあります。まちづくりの憧れだけでは続けられません。
私はどんな苦労も「修行ですよ」と言い切るヤマシタさんに幕末の薩摩藩士の姿が重なります。薩摩から明治維新が生まれたように、令和の新しいムーブメントは鹿児島の離島から生まれるように思います。