そういえば初めて書く「お詣で」レポ(一回目の3)
普段体を鍛えていない私、113段の石段を駆け上るだけでも相当消耗しています。
それでも勢いに任せて、手水を上半身に浴びせ(中には手水鉢に飛び込む人もいます)人のひしめく本堂へ。
この時点ですでに本堂は過密状態なんて年もありましたが、今年はコロナ第6波の影響もあり、人が密集しているのはせいぜい綱周辺くらいでした。これは逃せないチャンス!
綱を昇るなら、壇上に上がって綱目掛けてダイブするのが一番いいことは、これまで5回の経験で学んでます。ただこの壇上、いつもなら人が押し合いへし合いしていて、油断していたら振り落とされる危険な場所です。
今年はまだ余裕がある。ためらわず壇上へ。石段を駆け上ったせいか股関節周辺の筋肉ガタガタだけどよじ登る。
ここに上がったらもう、戦うのみ!
怯んでいては先を越され、下に振り落とされてしまいます。やらなければやられる。まさに戦場!
但し、参加者の中には中学生くらいの子供もいます。子供優先は祭事のマナー。そこはみんなで助け合う。
裸なので、一挙手一投足、姿も心の内までをも天地人に見られているのです。私は勇敢か、私は清廉か、徳を求める修行者として適格か?
過去5回挑戦し、うち綱から落ちること3回、綱に触れることすらできなかったこと2回。ただ参加することに意義などない。何が足りなかったのか、どうやったら上まで到達できるのか。全部顧み、全部イメトレした。
そして、綱は目の前に。今度こそ!
このあたりまでは、多少体力を消耗していても昇れます。
この先からは昇り方を変えなければなりません。
イメトレでのシミュレーションは大当たりでした。太縄は克服。あとは脚力。渾身の力を振り絞ることなんて、自分の普段以上の力を出すなんて、日常生活ではまずねーでしょ。
必死でにじり上がり、銅鑼の上のお兄さんに腕を掴まれて。もう一人のお兄さんが下帯に手をかけて力いっぱいに引き上げる。
初めて味わう感触。そしてここまでくれば、頂上は目の前。
と言うか、この2人のお兄さんのヘルプがなければ、力尽きて派手に転落し、地面に叩きつけられていたかも知れません。感謝!
腕力も脚力も限界。そして胸は擦り傷だらけ。膝からは流血。
ここまで体を張らなければ、自分の日常の武装を捨てて無の自分を曝け出し、肌を寒空の下に投げ出さなければ、意志の弱い私の7年越しの目標は、到底達成できなかったでしょう。
おまけに私は周囲の参加者に比べてひときわ体力がない('A`)
写真を見てあらためて、自分の体の小ささを確認しました。。。
次々と登頂してくる男たちを讃えるのも、ここにいる喜びの一つです。
心は達成感と充実感で溢れ返っています。そしてこの高みから見下ろす、下で人がひしめき合う光景は、不思議以外の言葉では言い表せない、まったくの別世界でした。
頂上でじっとしていても寒いだけなので、いつかは下に降りなければならないのですが、これも綱づたいです。
そして祭事終了の鐘が鳴り、全員でまた石段を駆け下り、木の枝に鏃としての紙を巻いただけの質素な「矢」を受け取って、送迎待ち合わせ場所の「ぱん工房 あかべこ」さんへ。
2回目に参加した時は、この店にたどり着く寸前で転んで、左側面血まみれになったんだっけ。。。
歩く時ほど慎重に。気を抜かず。
しかし寒い。全身の震えが止まらない。。。
例年のことながら、いつもこの店内でお茶をいただく時が、一番寒さが身に堪えます。アドレナリンは既に出尽くしましたので。
そして宿に帰還。バケツの足湯と、温かい豚汁を用意してくれる女将さん、毎回毎回ホント感謝です。
ここで、下帯姿で矢を持った男はヒーローになれます。他の宿泊客(ほとんどが観覧客)にも拍手で迎えられ、体をピタピタ触られます。優しい労いの言葉に包まれます。
でもとにかく寒いです。いくら宿のロビーが暖かくても、人の心が温かくても、体の冷えがまさります。
あらかじめ暖房を25℃に設定した部屋に戻っても、指が震えてまともにスマホをタイプすることすらままなりません。
熱めの風呂をいただいて(擦り傷ヒリヒリ)、自販機で「淡麗」を買って。余韻に浸って。。。
これまで「体を張る」ということにまだ多少の躊躇があったのかも知れない。迷いがあったのかも知れない。
今回はそれを多少は振り切ることができたから、成功につながったのかも知れない。
「もし人が多かったら?」
それでも私は綱に飛びついていたに違いない。上を目指していたに違いない。たとえ綱に詰まってる人を足掛かりにしてでも。
そして今年一度目の「お詣で」を無事終了した私は、翌日9:35発の只見線に乗るべく、眠りにつくのでした。
(完)
Special Thanks to 「瀞流の宿 かわち」様
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