
誰でもプロの作詞家・作曲家になれる本【6】
第6章 作家集団コミュニティの時代へ
・「コライト」が大流行の音楽シーン
最近流行の「コライト(Co-Write)」という言葉をご存知ですか。文字どおり「協力して曲を作る」ということです。
私のようにメロディーメーカータイプの作曲家もいれば、ギタリスト出身でギターサウンドが得意な人、弦楽器のアレンジが出来る人、トラックメイカーでデジタルが大得意な人、といろいろいます。それらが得意分野を持ち寄って、一緒に作曲活動を行うことを、コライトと呼びます。
大手メジャーレーベルのアーティストの楽曲の作詞・作曲クレジットを見ると、複数の名前が掲載されていることが増えました。これらはコライトであることが多いです。
また、最近のコンペでは、楽曲の高い完成度がはじめから求められることが多いので、このようなコライトの傾向が高まっています。
日本の作曲家が、アメリカや北米の有名なミュージシャンとチームを組んで、一緒に曲作りをすることも珍しくなくなりました。すべてがリモートで行われることも多いです。また、はじめから作詞家もコライトのメンバーとなることもあります。
複数のハイレベルなミュージシャンがタッグを組むことで、「スキのない」どこを切ってもぎっしり具が詰まっているような曲が増えました。シンガーソングライターやバンドの曲とは対極の世界観です。
アマチュア作曲愛好家の間でも「コライトしよう」と呼びかけあって曲作りを行うことが増えているそうです。
これからは「コミュニティの時代だ」とよく言われますが、作詞・作曲の世界も、ひとりでやる時代ではなくなってきたようですね。
もっとも、それぞれのミュージシャンは自室やスタジオに籠もって、音を作り、データを共有しあって高めあっていくのですから
「個」
であることに変わりはないのですが。
コミュニティの時代になればなるほど、自分の好きなことや得意分野を知って、それを追求することが、今まで以上に重要になりそうです。何もできないのにコライトに参加しても、良い作品は生まれませんから・・・。
でも、逆にいえば、たとえば
「いい歌詞が書ける」
「いいメロディーが書ける」
ならば、アレンジやトラックメイキングやボーカルを、得意な人と組むことによって、自分でコツコツDTMに向かっているより、はるかに良い曲が出来上がります。
この本をお読みくださったあなたは、ぜひ、そのスタイルで、プロへの道をショートカットしてみてはいかがでしょうか。
・切磋琢磨しあうコミュニティの大切さ
私が運営している音楽レーベル「ペンギンレーベル」では、プロの作詞家・作曲家養成プロジェクト『HOPES』(ホープス)を、昨年から始めています。
今はちょうど、2期生が曲づくりを行なっているところです。
1期生の15名は、無事、全員がプロの歌手の方々に楽曲を提供し、プロデビューを果たしました。全15曲を収録した書籍が発売され、現在、全国の書店やアマゾンで流通しています。
2期生からは、楽曲の発売のほか、カラオケにも収録されています。
『HOPES』の受講生は、19歳から60代まで、男女半々です。
みなさんそれぞれ普段は別の職業を持っています。
きっかけは「ちょっとした思い出づくり」という方もいれば、副業を目指して本気で取り組んでいる方もいます。
作詞・作曲は未経験な方がほとんどです。
みなさんに共通することは
「文章を書くのが好きで、作詞に興味があった」
「昔から音楽の仕事に憧れがあった」
ということでしょうか。
それほどはっきりした動機がなくとも
「音楽や言葉で、自分を表現してみたい」
という思いで、入塾してくださる方もいます。
そのような気持ちさえ持ってきていただいたら、あとはこの本にかなり詳細に書かせていただいた授業のノウハウによって
「誰でも」
いい歌を作れるようになっています。
そして、私が大切にしているのは
「一度きりで終わらないこと」
です。
現在は「HOPES」プロジェクトは終了し、新たに
「まきりかの『おとだま塾』として作詞講座・作曲講座を実施しています。
2024年は6月15日開講です。
月1回、全5回、10月5日までに自分だけの「歌」を作って修了します。
2024年は、すべての塾生さんの詞に、まきりかが曲を書きます。
プロを目指すまでではなくても、世界にひとつの自分の歌を作ってみたい。
何かを表現してみたい。
あるいは、完成曲の商用利用も可能です。
『おとだま塾』のページ
https://j2p23.hp.peraichi.com/
おわりに ―今日から一歩を踏み出そう
「誰でもプロの作詞家・作曲家になれる本」
という衝撃的なタイトルで始まったこの本も、ついにラストとなりました。ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。
作詞・作曲というのは本来、とても感覚的で、経験の積み重ねによる創作です。それを「言語化」したという点でこの本は、かなり画期的な試みだったと思います。
音楽的な知識がほとんどなくても読めるように、実践できるようにしたかったので、知識のある方にはもどかしい側面もあったかもしれませんが、そこはご容赦くださいね。
実際の私の作詞・作曲講座はマンツーマンなので、そのかたの音楽知識にあわせて、コード理論やメロディーラインでのテンションの使い方などをバッチリ解説したりもしています。
それでも、この本ではふだん講座でお伝えしていることを、余すことなくご紹介しました。
大事なのは、まずやってみることです。ぜひ今日から一歩を踏み出してみてください。
プロの世界で、あなたをお待ちしています。
おわり
まき りか
1969年札幌市生まれ。
金沢大学法学部卒業後、ゲーム会社のハドソンに作曲家として新卒入社。「桃太郎電鉄」など人気ゲームの作編曲に携わった後、フリーの作曲家、作詞家、脚本家、コピーライターとして活躍する。
またミュージカルの脚本と曲を同時に書くユニークなスタイルで、日本でも数少ない創作ミュージカル作家として知られる。
主な作品に、CM「お家探しは、すまいーだ」(歌:華原朋美)作曲&サウンドプロデュース。CR「信長の野望」作詞。NHK FM青春アドベンチャー『輪廻転Payうた絵巻』(主演:昆夏美)脚本作曲。他多数
主なミュージカル脚本作曲歴として『KACHIBUS』(主演:森崎博之)、『WAY OUT』(主演:酒井一圭(純烈))、『ソーーーォス!』(主演:なだぎ武)、『SNOW MANGO』、『DAICHI』、『スコア!』、『O.G.』などがある。
ペンギンレーベル プロデューサー。
海辺の出版社 代表。
まきりかオフィシャルサイト
https://makirica.work/
いいなと思ったら応援しよう!
