12/7 「歴史と表象の回路を考える」グループワーク発表会
12月7日(木)の専門ゼミにて、グループワーク発表会を行いました。今回は、「歴史と表象の回路を考える」という共通テーマを設定し、グループワークでの成果を発表していただきました。設定した共通テーマは以下の通り。
歴史小説、大河ドラマ、映画、音楽など、歴史上の人物や事件に取材した作品は枚挙にいとまがない。それらの諸作品は、歴史をどのように描いているのか。そこに描かれた時代背景はどのように考察できるのか。実際の史実との異同やその描かれ方にも着目しつつ、歴史と表象がどのような回路によって繋がっているか発表し、検討する。
第一グループが取り上げた作品は『シンドラーのリスト』(1993年)。
ナチ体制下、ドイツ人実業家オスカー・シンドラーと彼が助けたユダヤ人をめぐる実話をもとにした映画です。
第一グループは、ナチスドイツのユダヤ人迫害をめぐる歴史の認知に与えたインパクトを取り上げつつ、映画に見られるフィクション性やドラマ性が、鑑賞者の歴史認識を歪める可能性もあることにも着目しました。ドラマチックな音楽の利用や臨場感のあるカメラワークはその効果を高める点にも寄与しています。ポスターにもある赤い服の女の子にも着目した表象分析も秀逸でした。
映画によって、エンターテイメント性を保ちつつ史実を広く認知させることの意義と問題点を考えさせられる発表でした。
第二グループが取り上げた作品は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019年)。
広島市・呉市でアジア・太平洋戦争下を生きる主人公すずをめぐるアニメーション映画です。このグループでは、このアニメーションの人物がいかに綿密な時代考証と史料調査のもとで形成されているかに着目しました。それによって、穏やかなタッチのアニメーションのうちに、多くのリアリティーに満ちた表現が隠れていることを発見していました。
親しい人々が戦争によってなくなってしまうことに対するリアルな反応、そして玉音放送に対する人々の反応を当時を生きた人々のインタビュー調査にまで辿りなおして紹介していた点など、非常に綿密な調査に支えられた素晴らしい発表でした。
第三グループが取り上げた作品は『最後の決闘裁判』(2021年)。
中世フランスの決闘裁判をめぐる有名な史実をもとにしたリドリー・スコット監督による映画です。このグループでは、ジャン・ド・カルージュ、ジャック・ル・グリ、マルグリット・ル・カルージュ三人の視点から描かれた一つの出来事という映画の脚本構成にも着目し、「物語」としての歴史の表象を批判的に分析していました。また特に不倫を訴えたジャンの妻、マルグリットの視点の特異性にも着目し、ジェンダー論的な観点から非常に価値の高い映画であることを論じていました。
それぞれのシーンや映像表現に着目した細やかな鑑賞と、自身のオリジナルな視点に基づく論理の提示が織り交ざったとても良い発表でした。
それぞれのグループがそれぞれの作品に真剣に向き合い、作品に託された様々な意味や意図を読み取ることで、より興味深い鑑賞の視点を提示してくれました。今後もぜひ尽きることのない作品の源泉が、「歴史」に基づいていることを発見してくれるのを期待しています。
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