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「Familiar」全曲解説 その1

 これから「Familiar」に収録されている楽曲の、作られた経緯や見えていた風景、僕なりのメタファーの解釈を一曲ずつ解説していこうと思います。週一くらいの更新を目指します。あぁ夏休み・・。

 ただあくまでも、僕と曲との関係性の話なので、これが正解、という話ではないです。聴いてくれた人それぞれの受け取り方があるし、それはその人のとても大事な感性なので、楽曲は自由に受け取ってもらえたら嬉しいです。ここでは、へぇーそんなこと考えて作ってたのね、くらいに読んでもらえたら。では一曲目。

むすんでひらいて

 この曲は2023年の沖縄ツアーの合間、半日ぽっかりと空いた時に、「せっかくなら曲でも作るか!」と思い立ち、2時間ほどでずるずるとできた曲。

 沖縄について語るのは本当に難しいですね。基地であったり、軍事施設であったりその土地の自然や現地の生活を損なう恐れがあるものが立て続けに建てられる中、給料の良い米軍基地への就職が決まった孫をおばあが泣いて喜ぶ話も聞いたりすると、沖縄の抱える大きな矛盾の前になんと言っていいか分からなくなってしまいます。ただ僕が出会った人たちはみんな優しかったし、土地全体の抱える悲しみを住人みんなで分け合い引き受けているような感じがしました。なので、その影響を大きく受けて、人と人が手を取り合って耐えたり、支えあったり、祈ったりする曲になりました。

 この曲に出てくる「雨」は、災いのことを指します。次いで、「傘」は身を守る術のこと。「傘を持たない人は濡れずに歩けない」とは、言い換えれば、災が起こった時、弱者は傷つくしかない、という意味になります。「災い」なんて書くと大げさに見えるかもしれませんが、周りを見渡せば、家の中や学校、職場、近所にもそれはいつでも息を潜めていて、誰にとっても人ごとではないと思っています。
 天災であれ人災であれ、傷つくのはいつも個人で、一人の力では抗うことが難しい。そういう最中に手と手を結ぶことで(問題解決には至らなかったにせよ)もたらされる癒しがあるのではないかと信じています。

  イントロのギターはスガシカオの「夕立ち」を参考にしました。リズムパターンが同じでも弾く人によってノリが全然違いますね。からの、あだち氏によるドラムのフィルインが最高です。アウトロのフェードアウトはメンバーの演奏が素晴らしく、カットするのがもったいなかったので、可能な限り伸ばしました。マスタリングに遊びに来てくれたわがつまさんがこぼした「谷口さんすごい・・」に心の中でニヤついていたことは内緒です。

Gt, Vo 牧野容也
Rhodes,Pf 谷口雄
Ba カナミネケイタロウ
Dr あだち麗三郎

録音、ミックス 原真人


牧野容也「むすんでひらいて」
https://music.apple.com/jp/album/%E3%82%80%E3%81%99%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%B2%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%A6/1754539051?i=1754539062

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