「Familiar」全曲解説その6
こんにちは、今年は秋が来るのが早いですね。ホッとします。
それでは6曲目、「駆けるwith浮」です。
僕はツアー中、なるべくそのまちに住む人のように振る舞うようにしています。スーパーでお惣菜を買ったり、本屋で雑誌を買ったり、ファミレスに入ったり。そうやってそのまちに暮らし人たちの気分を味わうことで、世の中を見る視点が増えることで、今の世の中にあって欲しいものがわかるような気がします。
「駆ける」は旅の曲です。歌詞の最後、「駆け続けること ただそれこそが景色を変える」を書いたときに、浮さんにお願いしようと思いました。旅がそのまま行き方になっているような浮さんに歌ってもらえたのは嬉しい限りです。
この曲には二つの世界線が同時に流れています。歌い出しの男声と女声を聴き比べてみると、メロディーは同じですが、そこだけ調が違います。男声はロ長調、女声はニ長調です。
1月に浮さんと九州ツアー中、ライブ前のサウンドチェックでこの曲を二人で合わせたら、僕の声が本来の音階とは全然違うところに泳いで行きました。もともと「キーがちょっと低いな…」と思ってたところだったので、思考ではなく身体がそう歌いたがった、という事だと思うんですが、それをミスにしてしまうと身体に嘘をつくことになるなと思ったのでそのまま採用しました。それが歌い出しのロ長調の男声パートです。
間違える、とは一体なんなんでしょうね。選択の結果が、想定と違った、と言うことを指すのであれば、想定をより鮮やかに浮き彫りにできた、とかより良い回答に近接するステップ、とかの方が健全だと思うんですが、どうなんだろう。
たった今、その選択によって苦い思いをしたとして、その苦さを味わえるこの「生」を言祝ぐほうが、苦さの価値はあがるんじゃないでしょうか。
少し話が逸れましたが、曲名の「駆ける」はイコール「成長する」と捉えています。外に出て、自分の足で移動して、なるべく多くの選択に関わることが、人としての成熟の大きな助けになると信じています。
最初の話題に戻りますが、調が二つ並行することで、人との関係性のあり方の歯痒さみたいなものを描けたと思っています。人って例えば赤い糸や、へその緒や、目に見えないエネルギーでで繋がっていたとしても、意識し、会話し、触れ合う僕らは別々の生き物です。 別々の生き物が移動する以上、速度や方向性の違いで離れていくのは致し方ないことだとは思いますが、だからこそ共有された時間がかけがえのないものになるとも思います。
ストリングスは、パレード、偏西風と同じくイガキアキコさんです。最初のオーダーは、バイオリン一本、男気の独走(奏)だったんですが、「かわるがわるやってくる景色みたいな気持ち」とメッセージを添えて、セクションが送られてきて、おかげで山のふもとの景色が一気に広がりました。音源もらってちょっと泣いたよほんとに。
パートそれぞれはしっかりアクセルを踏み込んでくれた、疾走感のある演奏はすごく気に入っています。浮さんの歌唱も文句なしに素晴らしいです。
楽しい時間は短いもの、あっもう終わり?と感じるくらいの短さも気に入っています。
録音
原真人
牧野容也(Vo)
イガキアキコ(Vln)
ミックス
原真人
Vo,Gt 牧野容也
Ba カナミネケイタロウ
Pf 谷口雄
Dr あだち麗三郎
Vo 浮
Vln イガキアキコ
牧野容也「駆けるwith 浮」
https://music.apple.com/jp/album/%E9%A7%86%E3%81%91%E3%82%8Bwith%E6%B5%AE/1754539051?i=1754539552