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「頬ずりする」をイカします! #100日間連続投稿マラソン
今日は船石和花さんからいただいたお題をイカします(*´▽`*)
「頬ずりする」
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
やっと髪を解くことができる。
私は駅の南口から伸びる階段を下りながらきついゴムを引っぱった。頭を振ると、首のうしろに風が通った。
ロータリー脇のコンビニで、缶詰と缶チューハイ2本と冷食の餃子を買う。シュークリームも追加。今夜はこれで溜めてしまっていた映画のDVDを全部再生しなければいけない。その前に部屋の掃除だけ。あとLINEの返信と、昨日諦めた洗濯物を畳む。明日はお昼まで寝ていて、午後になったら返却しに行って、また適当におつまみを買ってやるんだ。
湿っぽい路地にパンプスのリズムを響かせる。両脇にずっと続く住宅街は、紺色にオレンジ色の窓を浮かべている。音楽が聞こえてきそうだ。カレーの歌。カレー曜日はどこも浮かれて見えて、それが余計に私の気分を盛り上げた。
アパートの階段を駆け上がり、鞄を探って鍵を出す。ドアノブを回す。
「ただいま!」
電気をつけると、リビングの床で寝ていた息子が耳だけこちらを向いた。
「ひとりでさみしくなかったかい?」
しっぽが揺れる。手足をだらんと伸ばし、腹を丸出しにする。野生はもうかけらもない。
「私はさみしかったよう」
彼の腹に顔を埋めた。
腹毛が頬に触れる。においが温かい。押し付けるようにゆっくり首を振る。もっと温かくなる。彼が抗議の声をあげたので、私は顔を上げた。
「これ食べる?」
袋から缶詰を出す。すると、彼は急に起き上がった。
「食べるの?」
太腿に肉球が乗っかる。
皿にあけてやると、彼は顔を突っ込んで食べ始めた。
三年前に保護したとき、息子は小さな段ボールの中でひんひん泣いていた。ほとんどぞうきんだった。汚れた毛がべとべとにくっついて、カラスにしっぽを狙われて震え、運命に小さな抵抗をしながら必死に生きていた。それが、なんだ、今では毎日仰向けで床に転がって、ただ目の前のまぐろ&かつおスープに舌を突っ込んでいる。奪われることも、襲われることも忘れてしまったらしい。
「おい、どこにもいくなよ、君はひとりじゃ生きていけないぞ」
小刻みに上下する横腹に、頬を寄せる。毛が肌に優しい。鼻先を押し付けると、温かいにおいがする。私の頬で腹毛がもしゃもしゃとかき混ぜられた。
ニャア、と息子が言った。
「そっか、ずっとこうしてほしいか。じゃあ今日は、映画はやめようかな」
彼の頭を撫でる。スープのしょっぱいにおい。伸びをすると、足先が山になった洗濯物に埋まった。しーらない。
#100日間連続投稿マラソン 28日目でした!お付き合いいただきありがとうございました(*'ω'*)
今日はひさしぶりの日光で、うきうきでした。
それでは、また明日お会いしましょう(*´▽`*)/
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