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「彼女はおやつを食べた」「子どもが転んだ」「彼は先生に怒られた」をイカします #100日間連続投稿マラソン
「彼女はおやつを食べた」
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン (←イカした音です。お付き合いください)
彼女の舌の先端が唇の端からしきりに現れたり隠れたりして、また現れた。残ってしまった糖分の掃除を終え、僕と目が合うとさっと右手で口元を隠した。赤くなる耳。時計は午後三時四十三分を示している。
「見ました?」
「見てないよ」
「嘘ばっかり」
彼女は円卓の下で、リラコからすらりとした脚を伸ばしてあぐらをかいていた。チョコレートを包んでいた紙があちこち折られている。まず、二等分。開いて、正方形が四つできるようにまた二等分。中央の線に合わせて片側をまた半分に。裏返す。僕もこの折り方を知っているし、続きがどうなるかも分かる。最後には僕に手渡すつもりなのだろうか?
長い針が九で止まった。
彼女はため息をつき、髪をかき上げると包装紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ放り込んだ。
「子どもが転んだ」
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
LINEを読みながら横断歩道を渡っていると、何か黄色いものが転がってきて足に当たった。見ると、小さな帽子だ。転がってきた方向に目をうつすと、おさげの女の子が倒れている。
女の子は顔を上げた。
目が見開かれ、口も開いている。かと思うとだんだん赤くなり、中心にしわが寄って痛々しい声が漏れ出た。子どもは涙じゃなく声で泣くのよね、たった今やりとりしていた保育士の友人の言葉がそのまま目の前にある。
女の子の手を引いていた女性は、娘を立たせて膝を二回はたいてやった。
「大丈夫、大丈夫!こんなんで死なないから!」
女の子の声。
「泣かないよ!血は出てないから大丈夫!」
悲壮な声。やっとひとすじ涙がこぼれた。
私は帽子を拾って女性に渡した。彼女は深い会釈をして受け取ると、娘の頭に置くように被せて出発した。女の子もおぼつかない足元で歩き出した。ママに握られた小さい腕が前後にふらふらと揺れた。
「彼は先生に怒られた」
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
昼休みの終わりが近づくチャイムが鳴るころになっても、あいつは帰ってこなかった。
食堂のトレー返却口のところで担任に声をかけられ、そのまま一緒にどこかへ行った。あれから三十分は経っている。他にもあいつを気にするやつがいて、みんな俺に聞いてきたが首をかしげてみせる以外になかった。約束していたサッカーはついにできなかった。心なしか教室が静かだった。下手な口笛も、もっと下手なボイスパーカッションも聞こえてこない。
五限の始まるチャイムが鳴った。
担任が教室に入ってきた。黒板、と低い声で日直を注意する。あいつは教室の後ろのドアから入ってくると、音を立てて椅子を引き、机に突っ伏した。
どうした、と小声で聞くが返事はない。
数学が始まった。
黒板が半分まで埋まったころになっても、やつは突っ伏したままでいた。担任は教科書から顔を上げると、やつの名前を呼んだ。
「おい、顔を上げろ。授業は授業だ」
顔が上がる。見たことがないほど真っ赤になって、眉間には山脈のようにしわが寄っている。目はうっすら潤んでいる。
うっせーじじい、と小さく聞こえた。
#100日間連続投稿マラソン 、初日でした!
お付き合いいただき、ありがとうございました(*'ω'*)
ふぅーー時間がかかりました笑
最後までできるかちょっと不安になりつつ、めちゃくちゃ楽しみました(/・ω・)/
書いていて思ったことですが、彼、とか彼女、とかあまりにも抽象的すぎて入り込みにくい、、ですね。まだ模索中ですが、今まで書いてきた小説の登場人物を、イカの舞台にも出演させるの面白いのかな等と思っています。
「彼女はおやつを食べた」「子どもが転んだ」「彼は先生に怒られた」をイカしてくださる方、ぜひコメント欄にお願いいたします!
ではまた明日(*´▽`*)✨
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