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Pendle FinanceのPT/YT
2024年に圧倒的なトラクションを出したPendleについて、躍進の背景等をまとめる。
Pendle概要
PendleのTVL推移を振り返ってみよう。2023年末は$234mだったが、2024年6月には$6.6bに到達、その後$2bまで減少したが、2024年末には$4.4bまで回復している。Pendle自体は2021年夏頃から既に利用可能であり、2021年冬の米国による利下げや2022年のTerraやFTXショックなどを経験してもなお粘り強く運営され続けてきたプロジェクトであることはこのチャートから読み取れるだろう。
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そもそもPendleとは、利回りが発生するトークンを固定金利部分と変動金利部分に分解できるプロダクトである。もう少し細かく言うと、TradFiでいう割引債に近い概念である元本部分を表すPT(Principal Token)と、金利部分を表すYT(Yield Token)に元のアセットが分解されることにより固定金利を実現する。
そもそもこれまでDeFiにおいては変動金利の商品が主流であったが、TradFiにおいては固定金利の商品も多く、DeFiにおいても固定金利のプロダクトが確実に流行するということはdegenの間で言われ続けていた。しかし、ローンチから2年ほどは特に大きなユーザーニーズを掴めず、TVLはそこまで大きく伸びなかった(ShanghaiアップデートによってLSTが安定して多くのLSDプロジェクトが出てきた2023年は少しづつTVLが伸び始めた)。そして2024年に入ってからはEigenlayer周りのLiquid Restaking Token関連プロジェクトであるEtherfi、puffer、kelpDAO、Renzo等のポイントプログラムが多くのユーザーを集めたが、LRTのPT/YTをPendle上で発行して、YT保有者がステーキング報酬以外にEigenポイントやLRTポイントを得ることができるようなった。さらに、PendleとLRTプロジェクトはBizDev面でも協力し、ただLRTを保有するよりもPendleのYTまたはLPを保有する場合のポイントに数倍のブーストをかけるといった試作も展開し、EigenとLRTのポイント二重取り狙いのユーザーが大量にPendleに流れることでTVLは$6bを超えるまで成長した。その後も複数のトークンがポイントプログラムを絡めてPendleに上陸し続けている。
PendleはBase、Arbitrum、BNB Chain、Optimism、Mantleにも展開しているが、TVLの大半はEthereumだ。
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Pendleで取り扱われているトークンの種類については、ETH系、BTC系、USD系がメインで、それ以外のものも少々ある。TVLが大きい銘柄について少し取り上げてみよう(後述するTVLは2024年1月6日時点)。
取り扱いトークンの種類
ETH系
上述の通り、2024年Q1-2はETH LRTのポイントプログラムによって非常に盛り上がった。EtherfiのeETHやpuffer financeのpufETHのPT/YTなどがPendle人気を牽引していた。eETHに関してはポイントプログラムに熱狂したユーザーが多かったため、YTを購入して大量のエアドロップ獲得に賭けるポジションが多く、PTのAPYが60%を超えていた時期もあった。しかし、大元であるEigenlayerと、各LRTプロジェクトのTGEが済んだため、それらのPT/YTは2024年Q3以降はあまりお金が集まらなくなり、Pendle自体のTVLも減少した。現在残っているのはpufETH($27m)、eETH($24m)、weETHs($15m)、rswETH($15m)、agETH($15m)、rsETH($15m)、weETHk($4m)である。cmETHは$55m集めているが、この理由は添付画像の通り、Powder、eigenlayer、Symbiotic、Karak、Vedaのポイントを獲得できることだと考えられる。
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現在ETH系トークンで最もPendle上にてTVLが大きいのはstETHだ。これはLidoにETHをステーキングすることで得られるLiquid Staking Tokenである。特にLidoのポイントが付くといったわけでもなく、APR3%弱程度あるstETHのステーキング利回りを取引するために利用されている。stETH自体が$35bという莫大な金額発行されているトークンであり、Pendleに$64mの流動性があっても不思議ではない。ETHのLST関連で言うと、RocketpoolのrETHもPendleで利用可能だ。
BTC系
PendleにはBTC関連のトークンも少なくない。そもそもこのトレンドはBTC版のEigenlayerとも言われるBabylonから来ているものが多い。Babylonは遊休資産となっているBTC(の大きい時価総額)を他のチェーンのセキュリティ確保のために利用することでBTC保有者に利回りを付与しようというコンセプトのプロジェクト。Babylonに直接BTCをステーキングすることもできるが、SolvやLombardなどに一度ステーキングして、それをbabylonにステーキングするということも可能であり、当該Liquid Staking Tokenを保有することでBabylonとLiquid Staking Tokenを提供するプロジェクトのポイントが二重以上で獲得でき、さらにPendleでYTやLPを保有することによってポイントのブーストがかかる等の理由からBTC LSTのPT/YTのPendle上のTVLが大きくなっている。この構造はETHにおけるEigenlayerとLiquid Restaking TokenのポイントプログラムとPendleの関係に非常によく似ている。現在Pendle上でTVLが大きいのはpumpBTCの$152m、SolvBTC.BBNの$95m、uniBTC(Corn)の$81m、LBTCの$69m、SolvBTC.BBN(Corn)の$58m、LBTC(Corn)の$18m、eBTC(Zerolend)の$6mなど。
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USD系
2024年にEthenaがUSDeを本格的にパブリックにしてから、アルゴリズム型や暗号資産担保型ステーブルコインの盛り上がりが再燃した。実際にEthenaのガバナンストークンENAの時価総額はDeFiトークンの中でもUNI、AAVEの次に名前が出るほど大きくなっており、初期にEthenaに貢献していたユーザーのエアドロップが大きかったことや、ステーブルコインをステーキングするだけでも一定水準の利回りを得られるようになったことから、ethenaや他のステーブルコインのポイントを獲得したり利回りを得ようとするユーザーが増加した。また、USDeやsUSDeのYT/LPを保有することでEthenaのポイントにブーストがかかる事例を他のステーブルコインプロジェクトも模倣し、多くのステーブルコインのPT/YTがPendleで取り扱われTVLを伸ばしている。
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Pendle上でTVLが大きいのはsUSDeの$344m、USD0++の$138m、wstUSRの$69m、USDeの$27m、syrupUSDCの$17m、rsUSDeの$6mなどである。
その他、sENA、rsENA、USUALx、mPendle、ePendleなどのように、プロトコル収益をDeFiネイティブトークンに還元したり、それをステーキングすることでリワードにブーストがかかったりする場合のステーキングされたネイティブトークンがPendle上で利用可能だ。また、最近はVIRTUAL/cbBTCのAerodrome上でのLPトークンも取り扱われている。しかし、ETH、BTC、USD以外のPT/YTのTVLはPendle上ではまだあまり伸びておらず、PendleのTVLはそれらのポイントキャンペーンに大きく依存しているのが読み取れるだろう。
とはいえ、固定金利自体の需要が確実にあるのはTradFiが証明しているだけでなく、DeFiプロジェクトがユーザーに還元する流れ(ポイント等)は今後も続くため、PendleやSpectraなどこの領域自体はさらに盛り上がる可能性は高いと思われる。
また、PTを担保にステーブルコインを借りる取引を何周も繰り返してレバレッジをかけたり、DEX LPのPTができたり、特定のvault tokenのPTができたりなど、PT/YTを発行することによってより多くのDeFi運用パターンが生み出されるのは既定路線。Degenにとってはリサーチ量が多くなり大変ではあるが、同時にこのYield Tokenization Protocolがさらなる収益機会をもたらしてくれるのは間違いないだろう。