【セルフライナーノーツ】#11. シュクフクノオト【Re:Lease】
[前記事]
#00.はじめに
#01. Re:Structure
#02. 暁スリーパー
#03. ごめんあそばせ
#04. Stay Smile
#05. さよならホメオスタシス
#06. 箸休め
#07. 優しい言葉
#08. 踏切
#09. Re:Bound
#10. Re:Lease
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【クレジット&歌詞】
作詞:小田貴音 作曲:小田貴音 編曲:万貴音
【楽曲解説】
小田貴音が40歳を迎えるタイミングで書き下ろした”おだやか”な楽曲。初出は「Prototype 2.0」です。極めてプレーンで派手な様子は一切ない曲だと思うんですが、この曲が好きだと言ってくれる人が思いの外多いことに驚きつつ嬉しく感じています。弾き語りしやすそうな曲だからでしょうか。
自分にとって年齢はそこまで重要視しているものではなく、近年ではそのタイミングにかこつけてライブしたい、ぐらいの温度感だったりします。笑 祝われたいんより単純に会いたい、そして俺の祝うなら俺の両親を祝ってくれ的なポジション。
ただ、節目というか人生の楔のようなものはやはり必要だと思っていて。ここまでにこんなことをしておきたいとか、ここから望むライフステージはどうだとか、あとどのぐらい生きられるんだろうとか、そういうことを考える材料の一つじゃないかと感じます。四十路ともなると体の変化もちょいちょいありますしね(徹夜はめちゃくちゃダメージ引きずるから極力やめとこう、とか)。
万貴音の楽曲なのに個人的な歌はどうなんだ、と思ったんですが、相方に相談した結果、書いてみることに。自分で自分のバースデーソングを書く選択肢はなかったので、音楽家としての自分の日常をシンプルに綴った歌にしました。
皆さんもご存知の通り(?)、小田は稀代のヒットメーカーにはまだほど遠く、天才でもカリスマでもありません。食べることと飲むことと、音楽が人の数倍ぐらい好きな人間です。二浪して大学に入り就職経験もありませんが、30歳になるタイミングでアルバイトも辞めて、それからは音楽関係の仕事だけで今まで生きてこれました。第一は自分の周りの人たちの温かい応援や支援のおかげ。もう一つ挙げると、頭の中に鳴っている音を外に出せるまで無数のトライ&エラーを繰り返した結果です。
鼻歌混じりに、なんて言葉がありますが、その鼻歌を作るために一度泥まみれにならなきゃいけないのが自分です。書いては消して、消しては書いて、を繰り返して今の自分が出来ました。多分、根性があるんじゃなくて諦めが悪いんだと思います。「こんなもんでしょ」で筆が置けないのは、適当に作ったものを今後聴き続けるはめになるのが嫌だから。
そんな自分ですが、やっぱりお腹を痛めて、ともすれば命を削って作った音楽はたくさんの人に愛されるものであってほしいというエゴを持ってます。分かる人だけが分かればいいんだよ、ってのはなんか違う。音楽、特に歌は聴かれることによって初めて熱を持つものだと思います。好き嫌いよりもその根っこ、聴いてくれた人の何かを動かせること。嬉しい、悲しい、の前段階のざわつきがあるかどうか。
実兄・小田和奏がやってた「No Regret Life」というバンドのデビュー曲「メロディー」。「僕が歌って 街が華やいで そして君が笑えばいいな」という歌詞がその根源かもしれません。とある不器用な音楽家は、自分を賞賛してくれる音楽ではなく、あなたの中の何かに触れる音楽を目指して、今日も五線紙を汚しています。
この曲をラブソングだと捉える人も多いようで、意外と同業者でそういう意見をよく聞きます。ライフソングなのか、ラブソングなのか、捉え方はあなた次第。両方でもあるのかな。色んな想いはあるけども、それでも僕は人が好きです。
アルバムとして本編の流れは前曲「Re:Lease」でエンド、この曲は「カーテンコール」にあたります。演劇を見に行った時、純粋に作品を観て心に閉じ込めるなら本編が終わった時点で会場から離れるのが正解なのかもしれませんが、カーテンコールで気持ちを緩める瞬間を含めて観劇を楽しんで来たので、こういう流れが好きなのかもしれません。
【作詞振り返りメモ】
・「A=440」
楽器チューニングの基音(440Hz)。吹奏楽ではA=442だったりすることも多いんですが、自分の場合は440で作る場合がほとんどです。
・「この目を閉じる日」
肉体として、ミュージシャンとして。求められる限りは頑張りたいという意味と、たとえ死しても音楽は残ってほしいという意味と。
・「君の声 重ねてくれるのなら」
一つは相方に、一つはみなさんに。これが消えなければ、僕はずっと生きてるということです。
・「毎日(ハーモニー)」
制作段階で「毎日」に「ハーモニー」とルビ打ちしました。文字にするとネタみたいな厨二感がするけど、あなたと一緒に生きているから今の音楽がある、という気持ちは間違いはない。一人で生きてきたんじゃない。
【作編曲振り返りメモ、EP盤との違い】
・明確なメロディは歌のみ。
イントロ/アウトロにそこそこボリュームはあるけど、明確なメロディはなし。単楽器の弾き語りだと普通のことですが、この曲では楽曲より歌に焦点を絞りたかったので極力味付けせず。
・意外なリンク。
多分誰も気付かない自己満足要素として、3:18のドラムと3:32のベースラインは「Re:Structure」から引用してます。これは手癖じゃなくて意図的に。
・ブレスとコーラス。
EP盤との違い、その1。イントロのコーラスはEP盤のアウトロで出てきたものをそのまま追加。そしてアルバム盤ではブレスから始まります。「Prototype 2.0」をお持ちの方は聴き比べてみてください。
・再び動き出す秒針とリバーブ。
EP盤との違い、その2。アウトロに時計の音が入っているのは共通ですが、最後の最後のコードで再び動き始めた時間の象徴として時計の音を入れました。そこでカリカリ言ってる音は紙に手書きで「シュクフクノオト」と鉛筆で書くのを収録した音なんですが、そのラストにもリバーブを追加。終わるのではなく、ここから始まるのだ、という思いを込めて。
これにて万貴音3rdフルアルバム「Re:Lease」全楽曲のライナーノーツを綴らせていただきました。どれだけの方に届いたかは分かりませんが、コロナ禍に生きたとあるミュージシャンの一欠片を音にして、それをまた言葉にして綴らせてもらいました。答え合わせとして書いたものではなく、あなたにとって感じてくださったものが正解です。
スマートな結びの言葉が思いつかないので、短くなるかもしれませんが「あとがき」を書いてシリーズ完結にしようかな。もうちょっとだけ続くんじゃ。
ではまた。
万貴音 小田貴音
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[Subscription]
・アルバム「Smile Co.」
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・シングル「クローバー」
https://linkco.re/07fFrAb9
・アルバム「ノーマライズ」
https://linkco.re/350NZmQx
・シングル「ごめんあそばせ feat.桑原しおり」
https://linkco.re/b39081qC
・シングル「にらめっこ」
https://linkco.re/a4ey4Q58
・アルバム「Re:Lease」
https://linkco.re/p0mpAhd5