【セルフライナーノーツ】#05.etc.【Ancient Collections】
先日2/10のFMはつかいち「インディーズ・アロー」のインタビューでも話題になった(そして盛り上げた挙句オンエアしなかった)楽曲のライナーノーツを書きます。笑
https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nEUIK6CRcjI-gVpUdl4R8WD03H1uniSjk
YouTube Musicでもお楽しみいただけます。ぜひぜひ。
・楽曲概要。
・1st Mini Album「キセキ」(2006.10)より
・作詞/小田貴音、中原万貴 作曲/小田貴音
・楽曲解説。
この曲はそんなに深いエピソードがあるわけではないんですよね…。ただ、今までの万貴音の楽曲の中で、こういうテイストの曲はほとんどない。系統として近いのは「ばんゆう(#16)」ぐらいでしょうか。
前記事でも触れたように、当時は中原万貴の作詞のレッスンもやっていたので、その中の課題の一つで「主人公を人間以外に設定してみる」ということをやってたと思います。つまり「擬人化」。これは自分でも結構難しいテーマだと今なお思ってて、人がモノを扱うことを、逆の視点から観察することでもあります。
動物が主人公の歌詞は結構ある。たとえば「犬視点」とかね。以前ライブでご一緒したことのある東真紀さんの「ジョンの純な恋物語」とか、涙腺崩壊ものの犬視点ソングです。ペットや生き物の場合は想像や感情移入がしやすいのも分かる。アニメやマンガでもたくさん名作あるもんなあ。
だがしかし、万貴音でやったのは「主人公:人形」。のっけから何ともチャレンジャブルですね。笑
「アナタのとこに来たのは〜」「ワタシを抱き寄せるアナタの〜」あたりは中原万貴謹製だったと記憶してます、多分きっとそう。ストーリーの起点を作ってもらって、そこからは小田の厨二病全力妄想の筆を走らせました。結果、こんな形のダークファンタジーソングが錬成されたわけです。笑
当時の傾向として、人称は「ボク」「ワタシ」「キミ」とカタカナで表記することが多かったです。これは男女ツイン、メインサブではなくどちらもメイン、というボーカルバランスを鑑みて、特に主人公はある程度男女どちらでもイメージ出来るものにしたかったのが理由。もちろん曲によって多少偏るんですけど、そういう心づもりで書いてました。
にしても、この曲はカタカナ使いすぎだと今は思う。笑 カタカナ表記は漢字やひらがなより硬質というか、無機的な印象をもたらすと思っているので、この曲では多用しちゃったのかな、と感じてます。振り返るって、自分のことでも色々と発見がありますね。
最後の「・・・まるで?」はもう完全にホラー。笑 自分が人形だということに気付いて終わる、という。小田のホラー映画好きが予期せぬ所で炸裂してしまったのでしょうか。
CDブックレットの該当ページを公開。こんな可愛い人形なのにね。。笑
・楽曲の特徴。
ドラム、ベース、パーカッション数種、エレピ2、エレキギター2の編成。アコギ弾いてない!コーラスは厚めに入ってますが、ボーカルはそれぞれ独立しています。
ジャンルとしては、R&Bっぽさを意識しつつ、根底は「fourplay」などのフュージョンの雰囲気です。歌の節回しなんかは小田、こういう系統をそれまでやったことがなかったので、中原ボーカルのアドバイスも取り入れて作っていった記憶があります。こういうとこが、ユニットで音楽を作る強みだと思う。得意分野はそれぞれ、好みもそれぞれ、それをぶつけるから面白い。
Aメロ部はほとんどコードを固定しておいて、隙間たっぷり。ボーカルとエレピ、ギターのおかずがグニグニ動いていくスタイル。明確な強いメロディで構成するのではなく、現場でセッションしている生感。ボーカルもいきなりオクターブ跳躍(+ファルセット)、みたいなトリッキーなもの。今の楽曲よか、やってることは大人かもしれません。どちらが良いか、ということではなく。
サビパートは長調、短調どちらともとれるような(とれないような)ハーモニーで進行。Aメロの緊張感との対比で、横の流れを強めた分かりやすいメロだと思います。Bメロはその対比が混ざった、緩衝材としての役割。
ポップな匂いはあまりしないし、ボーカルも今の万貴音からは想像つかないようなフェイク多めな作りになってるのが、かなり挑戦的な楽曲なのかなと思います。この路線を煮詰めてたら、万貴音の楽曲って今とは全く違う場所に着地してたんだろうな。こういう実験的な楽曲がきっかけになって、次のアルバム「Double Blind」という、より尖ったアルバムが出来たことを考えても。
にしても、この時期はギターとかベースとか、上手いわけじゃないけどかなり弾きこんでたんだな、と感じます。「こんなことしたい」がはみ出してたんだろうな。野生とか本能とか野心とか、そういう面も改めて見習いたいです。
そんな楽曲がこの「etc.」です。ものとしては格好いい曲かもしれないなと思うんだけど、ライブで表現するのが実に難しいので、あまり日の目を見せてあげられなかったなというのが惜しい。舞台セットにこだわったり、ダンサーつけたりとかすると、もしかすると映えちゃうのかもしれません。
この曲で何を解説しようかちょっと心配だったんですけど、思ったより筆が進んだように思います。やはり我が子は可愛いから、ですかねー。
次回は#06「6月のラブレター」です。業界関係者からも高く評価された、初期の傑作の一つ。どうぞお楽しみに。
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・シングル「優しい言葉」
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・アルバム「ノーマライズ」
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・アルバム「Ancient Collections」
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