【セルフライナーノーツ】#8.ヒネクレモノトーン【Ancient Collections】
ちょっと間が空いてしまいましたが、いよいよ2枚目のアルバム楽曲に突入です。4枚分の音源を一まとめにしてサブスクリリースしたものなので、曲ごとの繋がりについてはやや意味合いが薄れちゃうんだけど、今はそれこそ色んな聴き方をされてるので、その縛りはやや緩く考えています。お好きに切り取っていただければ。
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moraではダウンロード販売のようですね。データを手元に置きたい方も一定数いるんじゃないかなと思います(自分もその類です)。良ければぜひ。
・楽曲概要。
・2nd Mini Album「Double Blind」(2007.2)より
・作詞/小田貴音 作曲/小田貴音
・ミニアルバム「Double Blind」について
アルバム1曲目なので、「Double Blind」の特徴を軽くお話ししておくのがいいかなと思います。
取り扱うジャンルの傾向は今も昔も変わらず「何でもあり」ではあるんですが(ただしあくまでポップとしての王道を目指して)、ミニアルバム「Double Blind」はコンセプトアルバムとしての狙いが結構強く打ち出されたもので、「二面性」を強く意識して作られたものです。タイトルは心理学分野で出てくる「二重盲検法(ダブルブラインドテスト)」から。小田、こう見えて大学は心理学専攻だったんですよ。二重盲検法が何なのかは、各自ググってください。笑
人間誰しもが、確固たる自分を持っているわけではない。現在38歳の小田ですが、「自分らしさ」については相変わらず、全く分かりません。これほんとに。好みから思想から、見事に日々ブレブレです。みんなの役に立てる人間であろうと思いつつ、裏では自分の身を立てることで精一杯になってたりもして。面白いことは無数にあるなあと思った数秒後には、あらゆることに大して不感症になっている自分もいる。
物事には表と裏がある、というだけではなくて、白と黒の狭間でじたばたしている様を切り取りたくて、しかもその正解は自分自身ですら分からない、という事象を7つのストーリーで表現したのがこの「Double Blind」というアルバム。
・楽曲解説。
アルバム「Double Blind」のプロローグ的な楽曲として作られた、若干ラップ的なメロディ形態を持つ曲。1stミニアルバム「キセキ」とは逆の佇まいの万貴音を見せるべく作られた曲です。
タイトルは「捻くれ者+トーン(音)」、「捻くれ+モノトーン」。褒められても評価されても「いや別に」とか「でもあいつのほうが」って返しちゃう、そんなちょっと卑屈で面倒くさい人いません?俺です俺。笑 世界を見渡せば、自分より能力値や魅力値が高い人間だらけなのはごく当たり前のことなんだけど、それをモロに受け止めちゃう不器用さ。
他人と比べるばかりじゃダメだということ、色んな価値観や存在があってもいいんだということ、分かってるんだけどそれを払拭するにはなかなか難しい。自分にも周りにも素直になれない。それを繰り返している内に、ガチガチの自分に囚われて思考が固まり、色味が失われてしまう。それが「トーン(音、メロディだけでなく「色合い」の意味でも)」と「モノトーン」。
歌い分けも音域も男女ほぼ同じぐらいで、サビは基本的にユニゾンです。ツインボーカルそれぞれの個性を見せるのではなく、一人の人格をカメラの別アングルで見せていくイメージを狙いました。曲中で数カ所ハモリになる部分があるんですが、サビ終わり「ヒネクレモノトーン」のハモリは男声の小田が上パート、女声の中原が下パート。ね、ひねくれてるでしょ。笑
・楽曲の特徴。
一応ジャンルとしてはポップロック曲、になるのかな。歪みの効いたワウギターのおかげで、ダーク寄りだけどファンキーなサウンドにもなってると思います。楽器はドラム、ベース、アコギ、エレキギター(歪み+ワウ)が2本。
普段割と細かくドラムを打ち込んでいくスタイルの人間なんですけど、この曲は2小節の打ち込みを延々とループさせて作ってます。なのでこの曲の打ち込みは3分で終わりました。笑 じゃあどうやって味付けするのか、というと、「エフェクト」。この曲ではリバーブを深くかけた部分と、フィルターで低域をカットした部分と、最後の方はフランジャー(ジェットサウンドとも言われます)をかけてサイケな感じに。
イントロ・間奏・Aメロ・Bメロ後半はギター陣の単音リフ。複数の楽器のユニゾンってバンドっぽくて好きです。こういったリフを活かす楽曲、結成初期は多かった気がしますよね。前記事(#7)でも1サビ抜けにリフのユニゾン出てくるし。
延々単音で引っ張って、Bメロ前半やサビになるとようやく明確に楽器側にハーモニーが現れる。緊張からの開放感。この曲、使ったコードはAm、D7、Fの3つだけなんです。ドラムは延々ループ、コードもめちゃくちゃ少ないけど、それでも緩急や楽曲としてのストーリーは作れる。自分にとっては思い切った実験でした。
ボーカルは基本ユニゾンというか、1本のメロディで進んでいくんだけど、数カ所だけ「平行5度」のハモリが存在します。ギターでいうと「パワーコード」と呼ばれるもの。歪みの効いた低音のパワーコードはコードの土台を強烈に支えてくれるものになるんですが、ボーカルのハーモニー(と音域)でやると、無機質な響きになる。ハーモニーが明るいか暗いか、などの主要なキャラクター付けは「3度」の響きが行うんだけど、平行5度はその役割を持たないんです。一番モノクロなハモリ、なのかな。
長くなるので頑張って弾いたベースのことは置いといて(笑)、最後の特徴は何と言っても、曲が進むごとに暴れていくワウギター(エレキギター)の存在でしょうか。ワウを2本入れることは普段ほとんどしないんです。浮き物というか、ちょっと飛び道具的な音なんで、たくさんあると安定感がなくなる感じがして。それを今回はやっちゃった。1本目のワウはきちんと行儀良くリズムとハーモニーを刻むものにしておいて、2本目は曲の中で独立したものとして配置。中盤ぐらいまではまだ楽曲に呼吸を合わせながら動いてるんですが、ラストあたりは完全にイッちゃってます。笑 デタラメに弾いてるわけではないんですが、完全に調和しない動きに。これ、曲の本来のコードからわざと半音ずらして演奏してるんです。普通に弾くより何倍も難しい、だって音当たって気持ち悪いんだもん!笑 まあでもそのおかげで、「檻の中で暴れてる」ようなカオスなエンドを作れました。
今回書きすぎた気もしますが、短い楽曲ながら結構色んな実験をしたのがこの「ヒネクレモノトーン」だったのでした。
次回は#9「2秒後」です。思春期バリバリのとんがったサウンド、どうぞお楽しみに。
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