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CONNECTED by Paul Pankert

ベルギーのヴァイオリン奏者であり作曲家であるPaul Pankert
バロック音楽そして現代音楽の二本柱で活動を展開する彼の新作は、アコースティックの楽曲にLive Electronicという手法。

プリペアドされたチェンバロの12分強の音世界に、この楽器を作った者も驚愕するであろう音響世界。自身が演奏するバイオリンにリアルタイムでエフェクトをかけ、会場の響きと同期する3曲目。作品の中でも一番短い曲で6分のアルトサックスにエフェクトをかけたもの。この曲がラジオで流れた瞬間すぐにネットで楽曲を調べ、Paulに直接連絡をした。多数の奏者が演奏しているとおもいきやライブエフェクトの効果であったと知る。空間の音響をも計算したエフェクトセンスに唸るしかない。

以前パリでダンサーのための音楽を制作した際、やはりこの手法でMatthieuというエレクトロ技師がわたしのサックスの音にこの手法を使っていたが、楽器そのものの特性はその時発揮されていなかった気がする。その時のネガティブな感覚がPaulによる作品によって一変した。

アコースティックとエレクトロ。エレクトロというと現代的な印象を受けるが、しかし始源的な、プリミティブなあの時空間にもこういった"音響"はあったのではないだろうか。もしかしたらそれは、現在のわたしたちの耳では感知できないのかもしれない。

 5曲目のRemote 2.0ではフルート、バリトンギターそしてパーカッションによるもの。ここでもエフェクトが施されているが、前述のプリミティブという感覚がぴったりとはまる。

この作品の中の白眉は何と言っても、随所で聞くことのできるMicrotonalityマイクロトーナル(微分音)。西洋楽器の代表格でもあるサックスでさえも、実のところマイクロトーナルは鳴らすことはできる。要は、演奏者がその音を聞き取れるかどうかなのだ。ミとファの間の音?キーがないから微分音は出せない、と言い放つサックス奏者がどれだけ多いことか。

世界は今、白と黒、12音階だけでは分けられない世界を聴き始めている。そしてそれはアラブ音楽や民族音楽と呼ばれる世界ではなく、西洋の耳が牛耳ってきた音楽世界への、西洋からの問いかけであり、実践だ。

Paul Pankertの楽曲をお送りするopenradio No.164/2021/7/10 新月の放送はmixcloudからご試聴になれます。

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Paul PankertはKL-EXというensembleを率い、そしてレーベルも運営しています Klagexperimente

購入は直接こちらから、郵便事情はあるもの、ベルギーの切手が貼られた封筒で直接届く、そんな音楽との出会いもいいかもしれません。

https://www.kl-ex.com/fr/projets/cd-lp-connected/

Album Title : CONNECTED  by Paul Pankert

Player : KL-EX Ensemble

Claire Lecoq, harpsichord
Grégory d’Hoop, alto recorder
Paul Pankert, violin, live electronics
Philipp Gerschlauer, alto saxophone
Anne Davids, flutes
Vedran Mutić, bass guitar
Achim Bill, percussions

Cover : Painting by Romain van Wissen (acrylic on canvas, August 2020)

Recorded by Patrick Lemmens (Galaxy Studios) (Tracks 1, 3, 5)
Recorded by Gregor Pankert (Berlin, private studio) (Tracks 2, 4)
Mixed at High-Score Studio by Patrick Lemmens
Mastered at Galaxy Studios by Tom Van Achte
Executive Producer ETCETERA RECORDS Dirk de Greef
Art-Direction Roman E. Jans
Photography by Peter Ortmann



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