建築事務所のいろいろ_転職 その時が来た!①
BIGに移籍して早7年あまり。良いチャンスがいつやってきてもすぐに動けるよう、ある程度の準備は日ごろからしていた。アメリカでは転職は日常茶飯事でBIGでもコロナ禍、社員の入れ替わりが激しかった。私の場合、年も年だしもしかしたら定年までいるか?とも思ったが、その時は予想より早くやって来た。
ちなみに前回の移籍、スティーブン・ホール事務所からBIGの理由は給料とそれからこことここに書いた通りだが、今回はもう少しシビアな理由だった。
それは、自分の仕事を公平に評価してもらえない、からだった。BIGは素晴らしい建築事務所だ。ビアルケや彼を支えるパートナーたちはアイデアの宝庫で、私より若い彼らが名実ともに大きくなったBIGをリードし、ワクワクする建築がここ最近どんどん建設されてきた。そしてそれを可能にしたのが、急成長し出した8年前ごろから入社した実施経験のある「私たち」だった。
が、その急成長が今回の移籍理由を生み出しているのかも知れない。あまりの急な成長に、事務所を率いるそのボスたちの殆どが、実施設計や施工段階に実際に手を動かして関わることなくボスになってしまった。だから「私たち」がやっていることがどういうことなのか、どれだけの知識と時間や労力をかけているかがいまいち分からない。
もちろんそのことには気づいていたけれど、転職となるとものすごいエネルギーがいるし、なんといってもGOOGLE やトヨタウォーブンシティのような素晴らしいプロジェクトに関わっていたため移籍の考えはなく、その部分についてはなるべくスルーしようとしていた。
3月末、決意の日はやってきた。この日私はボスと一年の勤務評価を話し合うべく30分の打合せをした。
ボス:きみは~、実施設計の技術的知識がないし、図面のかき方を知らないですね。
私:は?全然言ってる意味がわからないのですが、もう少しどういうことか具体的に説明してもらえますか?
ボス:え~っと、う~んと。
私:(説明できんのかい!?)もういいです、他の人に意見を聞いてみます。
そしてトドメがこれ。
ボス:まあ、僕のアドバイスとしては、実施設計に必要な知識を得るにはもっと雑誌を読むといい。
私:は?(絶句。。。)
もうここまで聞いたところで私の気持ちは決まっていた。ここにいたんじゃ日々の努力は公平に評価されない。
雑誌を読む?実施設計の知識を学ぶために雑誌を読むだと?!実施設計の知識を得るには、実際に実施設計に関わるのが一番の学びじゃないのか。。。!?そう叫びたかったが、もう心は決まってしまったので何も言わなかった。図面のかき方を知らない。。。BIGsterの中でも手書きのスケッチからREVITでの詳細図までできる数少ない一人と自負していただけに、言葉がでなかった。今まで携わった数あるプロジェクトの図面やスケッチを掘り出して目の前に並べたかったが、これももう意味はないだろうからやめた。
3月末日、移籍の決意が固まった。私は出ます!
つづく
(追伸: 確認のため、後日何人かのビッグスターに技術的知識と図面のことについて意見を聞いたところ、誰もボスにアグリーする人はいなかった。BIGもボスも本当に才能があるのです。ある部分の経験が抜けているだけ。でもやっていることがちゃんと評価されないのはダメ。こういう時は自分が動く、それが一番です。)
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