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建築事務所のいろいろ_Olson Kundig

Olson Kundigに転職して早1年と数か月。黒川紀章事務所から始まった建築家としての職歴も20年ほどになるが、まだまだ新たな発見や学びがたくさんあり驚きだ。投稿のタイトルでもある「建築事務所のいろいろ」、本当にいろいろなのだ!

まずは日本ではあまり知られていないOlson Kundig事務所を紹介したい。1966年にJim Olsonによって創設され、後にTom Kundigがパートナーとして参加、去年までは二人の故郷であるシアトルのみを拠点として活動してきた建築事務所だ。Tom Kundigは前回紹介したように、Steven Hollの生徒でもあった人物で、代表作であるChapel of St. Ignatiusの建設にも携わった経歴をもつ。今でも二人の親交は続いている。
Olson Kundigはこれまでは住宅を中心としてきたが、ここ数年でホテルなどのホスピタリティや美術館などのプロジェクトも増えた。更なる成長を続ける中で、昨年にはニューヨーク事務所が開設され現在建築、インテリアを中心に約300人のスタッフがおり、ニューヨークには25人が在籍している。ニューヨーク事務所には以前在籍していたBIGからも数名、OMAやREX、Dillar Scafidio+Renfloなどから移籍している。

Jim Olson 自邸
Jim Olson 自邸: 小さなコテージから始まり家族構成の変化とともに増設改築が繰り返された興味深い作品。
マリオットホテルスパリゾート(メキシコ)
NIKE イノベーションセンター

さて、話を「いろいろ」に戻そう。
まずは事務所の十八番ともいえる住宅プロジェクトを担当することとなった。これが学びの連続なのだ。というのも今まで係わってきたのは美術館、図書館、オフィス事務所などなど、とにかくほとんどの仕事が住宅以外であったため、住宅の世界がこんなにも未知な世界で、施主との関係やデザインプロセス、技術的なところまでとても違うとは知らなかった!しかも暖炉とか引き戸とかそういう住宅に特化したことが全く未経験な私!

一番びっくりしたこと、それはほとんどの住宅プロジェクトにはコンセプトがないということ。(これは私のたった一年弱の経験に基づくものなので次回は全然違うことを学んでいるかもしれません。)これは建築家人生初めての経験だった。スティーブンホール事務所では全てはスティーブンのコンセプト水彩画からスタートする。例えば先ほどのChapel of St. Ignatiusは、「Seven bottles of light in a stone box 斥箱の7つの光の筒」からすべては始まった。プログラム、平面図、詳細にいたるまで全てがこのコンセプトに基づいてデザインされる。

スティーブンホールによる水彩画
内観

BIGではまずは詳細な敷地やプログラム、タイポロジーのリサーチをし、それに基づいてダイアグラムがつくられ、それを建築化していく流れだ。
黒川紀章事務所では、彼の共生の思想など黒川氏が掲げる哲学自体が建築として具現化された。これはSteven Holl事務所からBIGに移籍した時、どこを探してもサンスケが見当たらなかった衝撃と同じぐらいの驚きであった。

確かに住宅では一般受けするような大きなコンセプトや、資金集めなどに必要な売りになるコンセプトは重要ではなく、施主が生活する空間として快適であるか、間取りの構成やそこから見える景色などとの関係は良いか、などが大切だからか。じゃあ階段やリビングの主役ともなる暖炉などのデザインはプロジェクトの軸になるコンセプトなしでどうやってデザインするのか。まだまだOlson Kundigでのデザインプロセスを勉強中の私なのである!

つづく
(追伸:それにしてもアメリカにはどこまでも金持ちがいるものです。個人住宅に携わって改めて驚きます。現在進行形のプロジェクトはセントラルパークに面した五番街の既存のマンション建物内のリノベ。この工事費が24億ドル。リノベでこの額を払える金持ちがアメリカにはたくさんいる。すごいことです。)


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