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ティーポットが満たされなくても

それでもあなたが好きなんだよ な話。

アニメ歌舞伎町シャーロックが毎週の楽しみだった。

最初は一話完結型のほのぼの探偵物語かな?と思っていたがその予想は大きく裏切られる。

話数を重ねるごとに、人間の脆さや悲しさ・愛しさや人情が浮き彫りになっていき、どこか欠けたものを持ちながらも懸命にたくましく生きるキャラクター達が紡ぐストーリーに魅了された。

その愛すべきキャラクターの1人にモリアーティという16歳の少年がいる。

クレバーで様々な出来事を卒なくこなし、目に見えない思いやりとジョークを織り交ぜる彼は心の奥底に深い闇と空虚を抱えていた。

彼を支えていた双子の妹は、彼の心を穴の空いたティーポットだと表現した。

愛や優しさを注いでも注いでも、ポタポタと穴から零れてしまう と。

私の身近にも、穴の空いたティーポットハートを持つ人がいる。

どれだけ注がれても満たされない気持ちは、私には計り知れないしとても苦しいものだと思う。

満たされないだけで、相手が一生懸命注いでいることは見ていて感じるものだから。

「こんなにしてもらったのに、どうして心がすぐに乾くのだろう、どうして空っぽなんだろう」

満たされない人は、注いでくれる人以上に罪悪感や申し訳なさが生まれる。

そして穴を塞ごうとし、塞がらず悲しくなる。

私は思う。穴あきだっていいじゃない?と。
人間は不揃いだからこそ魅力的で面白いのだから。

もしも世界中の人間の心が、たっぷり満たされたティーポットだらけだったら、文学や芸術、音楽が生まれることはなかっただろう。

穴が空いていたっていい。
本当は空っぽなんかじゃないことは、愛を注いでくれた相手が1番知っている。

それでもあなたが好きだから、私達は注ぐことをやめないのだから。

あなたが笑って生きていてくれたら、それだけでいい。

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