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~ワーキングマザーが白血病治療中に考え・感じたこと~ 寄り添って欲しいなら、物言う患者になりましょう

「大丈夫ですよ~。 順調なので、何も心配しないでくださいね」

看護師さんが、手術台に横たわる私に呼びかけた。
私は何も質問していないのに、何かがおかしい。
言われてみれば、いつもよりも時間がかかっている気がする……

大学病院の手術室で、白血病患者の私は、首にカテーテルを入れる処置を受けていた。
今回が4回目だ。


抗がん剤は、首の太い血管に入れ込まれたカテーテルを通じ投与される。そのため、白血病患者は、まず首にカテーテルを刺す処置を受ける。通常カテーテルは感染予防のため1-2か月で差し替えられる。私の場合、9か月の入院中、7回カテーテルを差し替えた。

首のあと

(何度も差し替えられるカテーテル。首には自分で見るのも怖い痕が、、、。でも、今ではほとんど消えてなくなりました。)


カテーテルを入れる処置は、ちょっとした手術だ。
当然、痛い。首に刺すので、場所的にも怖い。

「首の方が、腕よりも快適なんです。両手が自由になりますから」

主治医は、淡々とそう言った。

しかし、手術台で処置を受けると聞くと患者は緊張する。処置は主治医とは別の医師が担当し、処置のたびに医師が変わると告げられ、ますます不安になった。


初回のカテーテル処置で、私は多くのことを学んだ。

麻酔注射は、始まりに2回、そして糸を縫う処置のための1回の、計3回であること。処置直後、止血のために担当医師が首に圧をかけるが、強すぎると首の筋が痛くなること。テーピングの際に首を横にしすぎると、その後正面を向くのが難しくなること。


2回目のカテーテル処置はトラブルなく済み、3回目になると私も余裕が出てきた。3回目の処置を担当してくれた医師は非常に手際が良く、それまで30分程度かかっていた処置が15分で終わった。

「今日はラッキーだった! 次回も今日の先生が、担当してくれたらなぁ」

上機嫌ではあったが、次回の処置のことを心配しながら病室に戻った。


嫌な予感は的中した。
4回目の処置はそれまでとは、全く違ったのだ。

局所麻酔の注射をする時、医師の手が震えていたし、処置が終わるのに、1時間近くもかかった。

病室に帰ってから鏡を見たら、いつもよりも顔が白い。

聞いたところ、カテーテルがうまく血管に入らず3回やり直したそうだ。そのため、看護師さんが思わず私に声をかけたらしい。医師が麻酔を追加したので、テーピングの際、首の感覚が戻らなかった。そのため、正面を向くのが難しい角度でテーピングされてしまった。


それまで、黙ったまま担当医の力量に自分の運命を預けてきた私は、大いに反省した。

「やっぱり、人間、受け身だとだめなんだ」

私は、医学の素養は全くない。基本的に医師の指示したことに従うスタンスだった。でも、治療に従うことと、自分が望んでいるケアーについて黙っているのは、違うレベルの話だと気が付いた。

そこで、厚かましいと思われるのではないかと気になったが、次の処置からは積極的に医師とコミュニケーションを取ることにした。

まず、経験のある先生にお願いしたいと伝えた。シフトはすでに組まれてしまっているから、実際に医師が変更になることは無かったと思う。それでも、こちらも医師のスキルが分かりますよ、というアピールとなり意味があったと思う。

次に、なるべく手際よく進めてほしいと伝えた。痛いのはしょうがないが、3回目の処置のように15分であれば我慢できると説明した。

テーピングについても、首の角度を確認するようリクエストした。患者は、カテーテルを入れたまま何日も生活する。そのため、テーピングについての不安を伝えることは重要だった。


その後、3回カテーテルの処置を受けたが、全ての処置を安心して受けることが出来た。

先生達は、処置を始める前に自身の経験について説明し、私の不安を取り除いてくれた。また、成果はともかく、15分を目安に素早く処置を行い、テーピングの際も首の角度について確認してくれた。双方向のコミュニケーションにより、自然に担当医に感謝を伝えることが出来たのも、嬉しかった。


医師との事前のやり取りのおかげで、処置をする側・される側という関係から、ベストな処置を行うための「寄り添う関係」になれた気がした。

自分は何に不安を感じていて、どういうことが不快なのか。自分の思いを医師に伝える「物言う患者」になると、医師との距離はぐんと縮まる。医師に寄り添って治療をしてもらえると、患者の不安もストレスも大きく解消される。


寄り添った形で治療を受けたいのならば、「物言う患者」になるしかない。でも、多くの患者は、専門知識が無かったり、医療行為の経験が浅かったりするので、委縮してしまう。

医師に自分の思いを話すのをためらっているのであれば、思い出してください。

病気を治すのは自分であり、自分のことを語るのに、医学の知識は必要ないのだと。

そして、勇気を出して医師に話しかけ、「物言う患者」になりませんか?


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