「新しい自分」だからこそ生み出せる価値に気づいた日々
【休職していても歳は取る・Version 2になった自分が作れる価値とは?】
このエッセイは、東洋経済オンラインでも掲載されています。
https://toyokeizai.net/articles/-/540908
「新卒採用の面接官は以前何度もしたことがあるけど、最近の若手は今までの社員と全然ちがう感じがするなあ・・・」
わずか3か月の間に、何度もこう感じる場面があった。
私が言う「最近の若手」とは、私が不在の間に入社した入社3年目以下の社員である。
でも、改めて分析してみたら、彼らが特殊なのでは無かった。以前の私を知っている人たちはそれ相応の態度で接してくれるが、彼らにはそれを期待することはできないのだ。
病気になる前の「働く私」を認識していない彼らから、まず「認知してもらうこと」からスタートしなくてはならないと悟った。「私がどのようなバックグランド・スキル・知識を持っている人間なのか」を説明し、認めてもらなければならない。
「時間がかかっても、しょうがないよな」
そうあきらめて、コツコツ信頼関係を築いていくことに決めた。
でも、そう思えるようになるまでは
「違和感あるなあ、その言い方」
「コメントに深みがないなあ」
など、若手社員に対してネガティブな印象を持ってしまった。
「私も歳を取ったなあ~」
と自分自身につぶやく場面も多かった。
でも、彼らが悪いのではない。
お初に会う「3年間も休職していた知らない40代半ばの女性社員」に、そんなにリスペクトを払う必要性を感じないだけだ。
やれることを毎日積み重ねていく。それ以外できることはない。
「入院中にも、似たようなことを感じたことがあったな……」
仕事をしている時も病気の治療をしている時も、生き方の基礎はそう変わらないと痛感した。
ただし、自分自身に対する自信を失ったわけでもなかった。
仕事を休んでいた3年間、寝ぼけて何もしなかったのではない。むしろ、白血病の治療を通じ、人としての経験値は確実に上がった自信がある。
「3年ぶりに復職した私の価値って、何だろう?」
そう日々自問自答しながら、自分だからこそ生み出せる価値を惜しみなく作っていこうと決めた。
もともと3回の留学(高校・大学・大学院)と4回の転職から、新しい環境への適応力とコミュニケーション力には自信があった。入院中6か月大部屋で過ごしたことや医療現場での医師らとのやり取りで、さらに私の適応力とコミュニケーション力に磨きがかかっているはずだ。
「苦労しているプロジェクトマネージャーのサポートや、最近増えてきた転職者への配慮なら、きっといい仕事できるはず」と意識を新たにした。
最近は、海外出身者の社員も増えている。社内のダイバーシティは確実に上がってきているが、一方でインクルージョンはうまく進んでいるのか、疑問を感じた。そこで、社内のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)検討会へ参加することにした。
個人的にはワーキングマザーの忙しさについても心配しており、自分の娘たちが働き始める将来も意識しながら子育て世代の働く環境改善のため何かできないと思案中。また、がん罹患者の復職が、スムーズに進むよう支援していきたいとも考えている。そのため、社内のD&I施策については今後も自分事にしてかかわっていくつもりだ。
クライアントがコンサルタントを雇う理由の1つに「部外者なので社内の前提に疑問を投げかけることができる」ということがある。今の自分もその立場にあると感じている。3年ぶりに戻った私には、「社内の前提を疑う権利の行使」があると信じている。フレッシュな視点で社内での検討内容について質問させてもらう機会が多いので、社内コンサルではないが、社内の課題について前提を含めて質問をぶつけていこうと思う。
3年休みはしたが、以前の実績や顧客リレーションを含む外部ネットワークが無になったわけではない。自分が40代前半まで大切に構築してきたものを復活させるべく様々な方面でコミュニケーションを作れば、新たなプロジェクトや協働のチャンスを作っていけるとも確信している。
また、トータル2年におよぶ急性リンパ性白血病の治療経験は、医療関連プロジェクトへのインプットという形でも貢献が可能だろう。民間企業と医療機関はその運営方法も、価値観や優先順位も違う。患者として疑問に感じたこと、困ったこと、欲しかったサポート等、治療中の経験を積極的に還元していきたいと考えている。
白血病を発症したことで、私の人生には大きなチェンジが起こった。辛いこともたくさんあったが、いろいろと経験して学ばせてもらったとも感じている。ある友人から、「治療後はMakiko Version 2.0になるね!」と声をかけてもらったことがあった。復職して改めて、休職前と後では違う部分が自分の中にある、まさに別Versionの自分になったと感じることが多い。
「Version 2.0になった自分は、きっと会社でも新たな価値が作れるはず」
そう思いながら、進んでいこう。
1. パワーアップした適応力とコミュニケーション力の活用
2. 社内D&I施策検討へのインプット
3. フレッシュな視点での社内課題・前提への問題提議
4. 社外ネットワークの復活とプロジェクト・協働の組成
5. 医療現場で患者として経験したことや学びの還元
この5点を意識して価値創造にトライしながら、Makiko Version 2.0 として2022年も邁進していきたい。