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盛岡台湾プロレスへの道~第1章 きっかけは小説『リングサイド』

2022年の春くらいのことだった。

「台湾にローカルプロレスをテーマにした小説があるんだけど」
と紹介された一冊の本があった。台湾の小説家、林育徳の『リングサイド』という作品。

「みちのくプロレス(略:みちプロ)が夏に岩山パークランドで『岩山プロレス』というイベントをするんだけど、この作品のイメージとも合うので、作家の林育徳さんを盛岡に呼びたいんだよね」と告げられ、この本を手渡された。

小説を渡された自分はといえば。

転勤などでいくつかの街に住んだことはあるものの、人生の大半は盛岡周辺で過ごしていて、盛岡に『みちのくプロレス』という団体があることはもちろん存じている。
みちプロ代表のグレート・サスケは元岩手県議であり、知らないはずはないが身近すぎてあまり意識もしていなかった。

そして国技館のマス席にて観戦したこともあるくらいの相撲はファンだが、プロレスにはさほど興味はない。
台湾好きといっても、文学においては台湾小説よりむしろ韓国小説を好んで読む。
そんな自分にはこの作品は関心の範疇からは完全に外れているのである。
薦められなかったら一生手を出すことはなかったかもしれない。

まあ、とりあえずそんな感じで本を渡されたので読み始めた。
プロレスの話そのものより、自分にとっては小城(小都市のこと。花蓮市がモデル)に住む人々の人間模様が、転勤先も含め田舎住みが長い私にとっては「ああ、田舎ってなんかそういうのあるよね」とか色々思うところがあり、面白く読むことができた。
田舎の小都市でローカルプロレスをする人、その界隈の人たちの物語だった。
舞台の小都市のレベルは東北だと盛岡や青森くらいかな。
まあ、再開発がすすめられたりしているけれども、基本は田舎なのだ。
どこも田舎の中核都市ってこんなものなのだろうか、と思いつつ本読み進め、気が付いたら読み終わっていた。

とりあえず情報も集めてみた。
この作品の作者は、台湾の有名な小説家、呉明益のお弟子さんで
盛岡市と提携都市である花蓮市に在住。
そして、『リングサイド』のモデルと思われる小都市(小城)は花蓮市なのだ。

周辺にもいるみちプロファンから情報を得て、実はみちプロは世界におけるローカルプロレスの老舗でもあり、プロレス好きには憧れの団体のひとつらしいということもわかった。

それなら「プロレス小説から盛岡と台湾を結ぶ」のは面白いかもしれない。
こうして私の所属する台湾カルチャー研究会の目標のひとつに「プロレスでつながる盛岡と台湾」が加わった。


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