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元ガールズケイリン選手の薬学生が語る:アンチ・ドーピングが存在する意味
1,「アンチ・ドーピング」は、なぜ、存在するのか?
競輪選手時代、アンチ・ドーピングは正直、面倒な制度だと思っていた。(無論、規定は順守したが)
風邪薬、塗り薬、貼り薬・・・
いかなる時も、ドーピング対象物質でないことを確認してから使う必要があった。
何の物質がドーピングに該当するのか、自分だけの力では判別がつかなかったので苦労した。(余談:意外にも、この経験が私のセカンドキャリアを薬学へと導いてくれた。)
アンチ・ドーピングを「正直、面倒な制度」と思っている選手は多いことだろう。
私は、薬学部で学んできたこの3年間、「アンチ・ドーピング制度が存在する意味」を考え続けてきた。
入学して3年が経過した今、その答えは2つあると考える。
1つ目は「選手の体を守るため」、2つ目は「フェアプレーの精神」である。
2,存在意義①:選手の1つしかない大切な体を守るため
「クスリ(薬)はリスク」
「クスリ(薬)」という言葉を逆さに読むと「リスク」になる。
私が薬学部に入って初めに覚えた言葉だ。
どんな薬も正しい使い方をすれば薬として有効な効果を発揮するのだが、誤った使い方をすれば害をもたらし危険な物に変わる。
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しかし、実は、その意味は奥深い。
クスリには、目的や量を誤って使用した場合、馬鹿にできない副作用が出ることがある。
例えば、どんな副作用がでるのか?
公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構が公表している「2025禁止表国際基準」に記載のある「メテノロン」を例とする。
メテノロンは、蛋白同化男性化ステロイド薬(AAS)に分類される。
蛋白同化男性化ステロイド薬は、過去の記事で紹介している。
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https://www.playtruejapan.org/entry_img/2025_prohibited_List_jpn.pdf
(引用元:公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構HP 2025,02,24)
メテノロンの詳細は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のHPから検索し入手することができる。
メテノロンは本来、骨粗鬆症や再生不良性貧血に使用する薬だ。
副作用は主に以下のようなものが挙げられる。
肝機能障害(肝臓の機能が悪くなる)
黄疸(肌や眼が黄色っぽくなる)
悪心、嘔吐
嗄声(声がかれること)
多毛(体毛が濃くなる)
ざ瘡(にきびや吹き出物などの肌の異常)
色素沈着(肌の色が濃くなる)
月経異常
女性の男性化現象
本来の目的とは異なる目的や量を使用した場合、先のような、望んでもいない副作用が出る可能性があるのだ。
選手の体は1つしかない。
そして、スポーツをすることは、体が資本となる。
「禁止表国際基準は単に禁止物質が載ったカタカナの表」と思う方もいるだろうが、「順守することで唯一無二の大切な体を守ってくれている」ということにも気づいてほしい。
3,存在意義②:フェアプレーの精神
流通網が発達した今日、自分で様々な物質を入手することができるようになった。
ただ、ある場所で線引きをしなければ、なんでも使用して良いことになってしまう。
それを防ぎ、薬物に頼らず選手の努力で勝負するために制定されているのではないだろうか。
私は、アンチ・ドーピング規定を順守することは、各スポーツにおけるルールを順守するのと同等だと考える。
4,まとめ
「フェアプレーの精神」が一番重要だと言う方もいるだろう。
しかし、私は、アンチ・ドーピング制度は「面倒な制度だが、選手の体を守るために存在する」ということを強調したい。
クスリの使用は、上記の通り、場合によっては、リスクを伴う。
そして、壊れた体を簡単に戻すことはできないのだから・・・
最後に
私は、全ての選手がクスリに頼らず自身のパフォーマンスを最大限に発揮できる日が来ることを祈りたい。
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