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【雨水】草木萌動(そうもくめばえいずる)

虹を見つけた。一日に2回も!

自分の幸運さを祝福するのに、それは十分な遭遇だった。

虹始見というのが、晴明の末候にあったよね。四月の中旬ごろ。そして、小雪のころ(11月中旬)には、虹蔵不見というのも。

虹の存在を廻る季節に重ねてみる古の人たちの雅。今年は少し前にも、大きな虹が見えたとあちこちの人たちがSNSにアップしていたっけ。ああ、自然というのはなんて不思議で美しいのだろう。そして私たちもまた、そのような自然という美の造形であり、スピリット(存在)なのだ。

やさしい雨に包まれながら、鴨川沿いを足どり軽く歩く。光を集めるようにして輝く黄緑。柳の新芽がゆらゆら小風に揺れている。少しずつ膨らむ、薄紅色した蕾も。雨と風と、光と。水飛沫をあげて走る自転車と、濡れたアスファルトの滑りと、規則正しい硬度と。

そういう時は不思議と、隣に人の存在を感じて、歩幅をそれにあわせたくなる。隣にいるのを感じながらも、目線は空に。より多くの光が世界へともたらされるように。

そんな気分で思わず微笑む空の下、虹は何度も姿を現し、そして溶けて、また少ししてさらに鮮やかに、この風景を彩り続けた。

はしゃぎすぎたのか。私はいつの間に、ソファに横たわりうとうとしている。猫にでもなった気持ちになって、猫のような声で小さく(くしゅん)とくしゃみをする。

虹のもとで、透明のグラデーションになる私の輪郭。いくつの色彩が潜んでいるのか、本当の答えは、こころの奥の、見えないところに。