写真展 のこと
ことし3月以降に決まっていたおおきな写真展は 秋までの3ヶ所 白紙にもどし 夏までのミニパネル展は 6ヶ所 中止となりました。
石井麻木写真展【3.11からの手紙/音の声】
あの日からの、9年間の手紙。
2011年3月。最初はひたすら物資を届けに通いつめた東北。
写すつもりはなかった。
傷ついた地へカメラを持ちこむことは 暴力になってしまうと思っていました。
「写して伝えてほしい」
現地の方にその声をいただかなければ 今でも写しつづけることはなかったとおもいます。
知ることしかできないということは 知ることならできるということ。
写真は言ってしまえば1枚の紙切れかもしれない。
けれどその1枚の紙切れが なによりものたからものになることもあることを教えてくれたのも、その1枚に もう逢えなくなってしまった存在との思い出が写しこまれていることも、はみだすほどの笑顔でこどもたちがファインダーのなかにあらわれたことも、なにもかもなくなってしまった絶望からの最初の一歩として最初の1枚を写してほしいと言ってもらえたことも、音のなくなってしまった地でまた音が鳴らされはじめたことも、あの日からのひとつひとつの出逢いが この写真展の旅をつくってくれました。
開催するたび、全国あちこちで家族のように頼れる仲間がふえ、帰れる場所ができ、声を拾い、声が届き、声を放ち、つないでもらえたもの、つないできたもの。
これまで、おおきな写真展としては全国38ヶ所で開催できました。どこかで見てくださった方々、ほんとうにありがとうございます。いただいたたくさんの声が、ちからになって続けてこれました。
東北や震災のことで1円もうけとりたくない想いから、入場無料を貫きとおしてきました。
いつも、これがさいごの写真展かもしれないと思いながら開催してきました。
それでも、精一杯がんばれば開催を続けてこれました。
現在、新型コロナウイルス感染症の終息がまだみえない状況により、人の多く集まることが危険となってしまっています。
たいせつな場所やひとを守るため、前向きに、いったん白紙にもどしました。
また安全に安心して開催できるようになるまで開催は見送りとなりますが、必ずまたどこかで見ていただける機会が来ることを願って そのためにも今は今できることを続けます。
これまで支えてきてくださったみなさま、今も心を支えてくださっているみなさま、心を寄せてくださっているみなさま、ほんとうにありがとうございます。
たくさんの方に支えられて続けてこれています。
とっくに私ひとりの写真展ではなくなっています。
この先も一緒につくっていけますように。
この9年間、毎月11日に東北へおじゃましてきましたが、今年は3月11日を最後に、4月と5月は東京から出ることも控えなければいけない状況となっており、足を運ぶことが叶いませんでした。
また東北にも笑って帰れる日まで、ちいさくてもここでできることを続けます。
たいせつな場所とたいせつなひとたちを 一緒に守らせてください。
音の鳴る場に、笑顔の咲く場に、1日も早く帰れますように。