穴の中の薬
「助けて!」
精一杯の声を張り上げる。しかし、返事はない。こんなことをもう10日も続けている。
ハイキングの途中でついコースを外れたのがよくなかった。あっと思った時には、この深い穴に落ちてしまっていた。
もう体力も限界……アレを飲むしかないか。知り合いの化学者からもらった薬がリュックの中にあるのはわかっていた。ただ、どうしても踏ん切りがつかなかった。
不老不死の薬。ただし、成功率は20パーセント。失敗した場合は心臓が麻痺してその場で……。
しかし、このままではどのみち終わりだ。私は錠剤をひとおもいに飲み込んだ。
するとどうだろう。空腹がピタリとおさまった。喉の渇きもない。これは……。
その時、頭上から轟音が聞こえた。誰か来たのか?
「助けて!助け……」
私の叫びに対し、頭上から降り注いだのは大量の土砂だった。
「幽霊?よせよ、ようやく手に入れたマイホームだってのに」
「でも、夜中にうめき声が聞こえるのよ……地の底から響くような」
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