【ベリショーズVol.10発刊記念 ボツ作品供養】マグロどん
日よう日にお父さんが「おい、けいすけ、マグロを食べにいくぞ」と言いました。ぼくはマグロが大すきなので、やったぁと思いました。
お父さんが「まぁ、いつものようしょくだけどな」と言うので「ぼく、わしょくのほうがすき」と言うと「ちがうわよ、ようしょくっていうのは、プラントでそだったマグロってこと」とお母さんに言われました。「ようしょくの反対はてんねんっていって、海でおよいでいるマグロのことなんだよ」とお父さんが言いました。
ぼくは生きているマグロを図かんやインターネットでしか見たことがありません。お父さんもお母さんもじっさいには見たことがないと言っていました。
海が立ち入りきんしになったのはずっとずっとむかしのことみたいです。でも、かわりに国がプラントという大きなたてものをたてて、その中で海の生きものたちはみんな暮らしていると一年生のときに学校でならいました。
車にのって、一時間くらいしてお店につきました。ここで、プラントからはこばれてきたマグロを食べられます。たくさん人がならんでいたけど、少し待つと席にすわれました。
ぼくはマグロどんにしました。お父さんはマグロのにぎり、お母さんはマグロのカルパッチョをちゅうもんしました。
りょうりをまっているあいだ、ぼくはお父さんに「どうしてお魚はマグロしか食べられないの?」と聞きました。「ほかのお魚もプラントの中にいて、本当は食べられるらしいよ。でも、数が少ないからたいせつにされているんだ。マグロはたくさんいるから食べてもだいじょうぶなんだよ。すぐにふえるし」とお父さんは答えました。
ぼくのたのんだマグロどんがきました。明るいエメラルド色をしたマグロがたくさんごはんの上にのっています。
ぼくはピンク色のソイソースをマグロにかけてから、ゆびをチョップスティックにへんかさせて、マグロとごはんをはさみました。
口に入れると、コリコリしたマグロのあまいあじがして、ごはんがしたの上でパチパチはじけました。とてもおいしかったので、ぼくは一気にどんぶりごと食べてしまいました。
かえりみち、フェンスのすきまから海が見えました。海はまっかな色で少しこわかったです。でも、めったに見られないので、ぼくはのうないでカメラアプリをきどうして、見たけしきをしゃしんにおさめました。
たのしかったです。
ショートショートマガジン「ベリショーズ」という電子書籍に参加させていただいております。
私はVol.4からの参加なのですが、Vol.5のテーマが「食べる」で、その時に書いた作品です。
ネタがたくさん浮かぶほうではないのでだいたい書いたものは世間に出してしまうんですが、書き終えた後に「これはさすがに……意味がわからなすぎる」と思い、ボツにしました(笑)。でも、掲載された「ゼリー」も今読み返すと大差ない気がします(笑)。あの頃(約3年前)は尖ってたんですよ、知らんけど。
このたび、ベリショーズがついにVol.10の発刊ということで記念に(?)公開してみました。あ、そういえば今回私がVol.10で書いた話にもマグロが出てきますねぇ……(手前味噌)。
総勢32名の豪華な作家陣(いや、掛け値なしに)の作品が無料でダウンロードして読める……すごいことです。
ぜひぜひ下記のリンクからダウンロードして、ご一読くださいませ!(既刊9巻とLightもよろしく!)