フランシス・ガヌー異世界転生

 ラスベガスTモバイルアリーナ、今日この場所でUFCという格闘技団体の試合が行われる。
 そしてメインイベントに据えられている、フランシス・ガヌーvsジョン・ジョーンズ 
 この試合はMMA史上最強、否ッッッ!! 人類最強を決める"闘い"と言っても過言ではないのだ!!
 試合直前、会場の客たちは興奮を抑えきれずにどよめいていた、人類最強を決めるという誰もが待ち望んだであろう夢のカードが目と鼻の先にあるからである。
 そして時は来た!! お互いが入場しオクタゴンの中心でお互いを睨み合う。ガヌーは笑みを浮かべた。ジョーンズは表情を一切変えない。会場では声援が上がっている。

ジョーンズ「⋯⋯」 ガヌー「⋯⋯」


「行け!!ガヌーッッッ!!パンチでKOしろ!!」
「ジョーンズ!!テイクダウンして極めちまえーッッ!!」 「さっさとやれー!!」
 観客の様々な感情、想いが声援となりホールに響き渡る。
 『カーンッッッ!!!』 試合開始のゴングが鳴った!!


ゴングは鳴った!!
ガヌーが先に仕掛ける!!

 会場が割れんばかりの歓声ッッッ!!観客の興奮は最高潮に達した!! その瞬間ッッッ!!
 ガヌーの目の前は真っ暗になった。数分して視界が戻る。
「なんだ?俺はやつにKOされたのか?だがダメージはないゼ。ジョーンズは?!試合は?!」戸惑いを隠せないガヌーだが自分がまだオクタゴンの上にいることを再認識する。
 

「ここはオクタゴンの上だ⋯」
叫ぶガヌー

 ガヌーは叫んだ。「ダナッッ!!どこにいる!!ジョーンズは!?試合はどうなった?!なんの冗談だこれは!!?」ガヌーの咆哮は虚しく会場にこだました。
 その直後である、「うヴヴヴッッッヴヴヴッッッ、プシューッ!!」
 背後から獣のような唸り声と小さな孔から蒸気が漏れ出したような音が響いた。
そしてガヌーはその怪物の存在に気付いた。
 そして観客の歓声が鳴り響く
「いけー!!地上人!!」 「殺せー!!邪神様ぁ!!!」 
 怪物はガヌーの目の前にゆっくりと近づき顔を覗き込んできた。


驚くガヌー

「なんだッ!?!!このタコみたいな怪物は!!下手なSFXよりリアルだゼッッ!!」
 ガヌーは驚くと同時にすぐさまファイティングポーズを取る。ヤワな話し合いなどで穏便に事が済むような相手ではないことをガヌーの闘争本能が察知したからである。
今までいた世界とは違うことをガヌーは理解したと同時に"闘って倒す"という今までの世界と変わらぬ目的が出来た事により冷静さを取り戻した。そしてガヌーは怪物に対して啖呵を切った。
「来ナッッ!!タコ野郎!!ジョーンズの前に貴様をKOしてやるゼ!!」

 『カーンッ!!』
会場にはゴングが鳴り響いた!! 同時にガヌーのバズーカのような右ストレートが怪物の顔面部の下(人間の顎に当たる部分)にクリーンヒットする!!
『ドゴォッッッ!!』鈍い音が鳴り響いた!!
 怪物の顔からは緑色の体液が飛び散る!!

ドゴォッッッ!!


 普通の人間が喰らえば倒れるはずの一撃、しかし怪物は立っていた。

「コイツ、アリスターより丈夫だな」

 そして激昂したかのように怪物は両腕を振り回しガヌーに近づくが、ガヌーはすかず距離を取った。
 ガヌーの頭に疑問が浮かんだ、コイツの顎にパンチを打ち込んだところで意味はあるのか、果たして人間の急所とコイツの急所は共通しているものなのだろうかと、それに触手もあり皮膚もヌルヌルしている、人間と違う部分がガヌーの疑問をより深めた。しかしここで怖気づくガヌーではなかった。
 ガヌーは元ホームレスであり用心棒でもあった、危険など日常茶飯事、闘いにおける想定外などこの男にとっては想定内なのである。
 ホームレス出身という異色の経歴を持つガヌーだが彼の天性の肉体、ファイティングセンスそして過酷な環境を乗り越えるバイタリティが彼をUFCヘビー級チャンプの座に導いたといっても過言ではない。



 ガヌーは怪物を観察し、人間と違うところではなく同じところを探すように注力した。
 二足歩行、両腕を使った攻撃、この2点が人間と似通った部分である。
 そして攻防の中で弱点も発見した。先ほどから怪物が腕を使い横薙ぎにパンチを振り回してくるが予備動作の大きいぶん回しでとてもフックとは呼べるような代物ではなかった、ガヌーはディフェンスして確実に右でカウンターをいれる、怪物にはテクニックが無いとガヌーは確信した。
 ならば懸念すべきは怪物の体の頑丈さである、右と左を10発ほど顎に入れたが前進を止めない!!
 ガヌーは怪物の前進を止める方法を思案する。そして思いついた、二足歩行で膝の曲げ伸ばしをして歩行するなら膝関節があるはずだと、そこを壊せば前進が止まる。
 試しに逆関節蹴りを蹴った、対戦するはずだったジョーンズがよく使う蹴りなのでジョーンズキックと呼ばれる技術だ。『バキィッッ!!』膝が壊れる音が鳴り響いた。 怪物の片膝は壊れた。

音を立てて怪物の足が折れ、怪物は咆哮した!!
 「フゴァォオ!!」効果あり。いくら丈夫でも関節さえ折ってしまえば移動に支障が出るはずと踏んだが正解だった。
 それに殴っているうちに怪物の体から緑色と赤色の体液が噴出した。目に見える形で相手の体に異常が出ていることが確認できる、それがガヌーの自信につながった!!
 「HAHAHA!!怪物が一丁前に血を流してるゼ、血も涙もねえはずの怪物が!!テクニックもないぜ、コイツはただの頑丈なタコ型サンドバッグか!!」
 このままダメージを与え続ければ勝てる。ガヌーはそう確信した。
 「シュッッッ!!」ガヌーが踏み込み右を当てようとした。その矢先である。
 とてつもない速度で怪物の顎の触手が伸びてガヌーの首に巻き付いた。


「フシュルルル⋯!!」感情があるかは定かではないが怪物は憤怒しているように見えた。
 ガヌーの攻撃がこの怪物の防衛本能を呼び起こしたことは間違いない、この怪物の命に届く攻撃をガヌーは与えていたという証明であった。しかし怪物もたった今ガヌーの命に手を触れたのだ!!
 ガヌーの意識が遠のく、『ギチギチィ⋯』触手がよりタイトに頸動脈に巻き付く、このままでは絞め落とされる、ガヌーは手で触手を外そうと試みたが外れない、触手は筋肉の塊であった。

意識が遠のく


 触手を切断しなければ己の命はない、ガヌーは本能でそう感じた。なにより腕は触手の締め上げを緩和することにリソースを割いている。一時でも緩めれば落ちるか頚椎がへし折られるほどの力がかかっている。
 ガヌーは本能的に触手に噛みついた!!
同時に怪物の触手をブチブチと噛み千切った。千切れた触手の根元からは体液が漏れ出した。「フゴオオオオォオァ!!」怪物は苦しそうな唸りを上げ触手を戻した。
 この怪物にとっての触手は伸縮性、柔軟性を兼ね備えており、抜群の操作性を持つ便利な器官であると同時にとても敏感で繊細な感覚器官なのだ。それを噛みちぎられるということは人間の雄が局部を噛みちぎられるほどの苦痛に匹敵する。ゆえに諸刃の剣である。
 しかし人間の噛みつき程度の些細な攻撃は無意味なほどの剛性を持っているはずだった触手だがガヌーの高威力のパンチを生み出す類稀なる咬合力の前には耐えられなかった。ガヌーもまた、ただの人類ではなく最強の人類であることをこの怪物は分かっていなかったのである。


 相手も怪物であるが生命の危機に瀕した今、ガヌーも本能により人類最強の怪物となったのだ!!
 「あぶねーゼ、このタコ野郎、絞め殺されるところだったゼ、こりゃグレイシーとかのグラップラーじゃ殺されてたな、、ペッ!!」 
 そう呟きガヌーは口のなかに入った怪物の組織液を吐き捨てた。
 この時点でガヌーは怪物のファイティングスタイルを看破した。タフな体で攻撃を受け切り、前進を止めずに触手で組み付くグラップラーであると。
 それがわかったと同時にもう片方の足を逆関節キックで潰した。『ボキィッッ!!』折れた音が響き渡る。「フゴオアォオ!!!」苦しそうな唸りを怪物は上げた。
 足は潰したので歩行が困難になった、噛みつきによって触手の対策も出来た、ガヌーが取る選択肢はシンプルだった。

膝を破壊したガヌー


 脚が潰され震えている怪物に近づきマウントポジションの体勢を取った。


 腕で抵抗してくるが関係ない、ひたすら相手の顔面に目掛けてフルパワーでパウンドを打ち込む、「フゴォオオオ⋯!!」怪物が苦悶の叫びを上げる
 会場の興奮も最高潮である、客の歓声が上がり声援も響く 「オラオラ!!根性見せろ!!立って戦え!!」
獣の断末魔とも取れるような咆哮が響く
 「フゴーーーー!!」
『ドゴォッッッ!!グチャッグチュ!!グチャッ!!ドゴォッッッ!!』
鈍い音と何かが潰れるような音が交互に鳴り響く、、
 抵抗虚しく怪物の頭部はサンドイッチのように、ガヌーの拳と地面に挟まれる形で打ち付けられている。それは相手をKOするというような生易しいものではなく破壊そのものであった。
 殴り続けるうちに怪物の息は静まり動かなくなった。緑色だった体色が引いて枯れ葉のような色合いに変わった。怪物の生命が終わった瞬間である。
『カンカンカンカンカーン!!』
死合終了のゴングは鳴った。
今この瞬間、ガヌーは素手で異世界の邪神を討伐したのである。



 


 「ハァ、、ハァ、、、ハァ、、、」 ガヌーの呼吸が荒くなる、先ほどまで怪物の顔面を全力で殴り続けていたのだから当然であろう。
 そして呼吸を調整した後ガヌーは叫んだ。 

叫ぶガヌー


 「ここはどこだ!!貴様らは何者だ!!」
 ゴングを鳴らす者がいるということは少なくともここは何者かが取り仕切って管理している場所である可能性がある。元いた世界の興行との違いはレフェリーなし、ルールなし、どちらかが死ぬまで決着はないということである。

 そしてどこからともなく声が聞こえてきた。
「貴様が今回の地上人か、焦るでない、全てを話し己の役割を理解してもらう 場所を移すぞ」
 すると突然、ガヌーの体は不思議な空間に包まれ、ガヌーの意識は飛んだ。

「なんだ、これは?!」
「⋯⋯」
「悪くない気分だ。」

 そして意識が回復した矢先に、ガヌーは神殿のような建物の通路に立っていた。目の前には先ほどまで戦っていた怪物と同じような容姿の者が話しかけてきた。
 「貴様か、法力を使わず素手で邪神を討ち倒したという地上人は」 ガヌーはその目の前の怪物が人語を解することに驚きつつもこう返した。
 「お前か、俺をこの世界に引き入れたのは、全て説明してもらおう。」
 

「まあ、そう焦るな、私はただの案内人だ、すぐに法王の間に案内する、そこで法王から説明を受けるのだ」 
 ガヌーは内心落ち着いていなかったが案内人を名乗る怪物について行った。
 暗い通路をしばらく歩いたあと通路の先には椅子に座る怪物がいた。
 「では私の役目はここまでだ。あとは法王に謁見し、すべてを聞くがいい。」
 そう言い残し案内人の怪物は不思議な力で一瞬にして姿を消した。
 「どうした地上人よ、珍しいか?あれが、、」頭の中に直接声がした。
 気がついたら椅子に座っていて目の前には法王がいた、不思議な力でワープさせられたのだ。
「お前が法王か?今更驚く暇も無い、なにせこの世界は色々なことが立て続けに起こるからな、それより早く説明しろ」ガヌーは淡々と話した。
 「ふむふむ、まさしくワシが法王、この邪神断罪トーナメントを取り仕切る、貴様らの世界で言う興業主のような存在じゃ、」法王はやけに尊大な態度である。
 「そうか、お前は俺らの世界で言う、ダナ・ホワイトてことだな。」ガヌーは自分がいた世界と照らし合わせた。
 「ダナ・ホワイトが誰かは知らぬが、そう思うならそうなのじゃろう、しかしワシが王と知りながらその物怖じのなさ、さすが法力を使わずに邪神を素手で殺すだけはあるのう」法王の声は新しい玩具が手に入ったかのような嬉々とした声色であった。
 「勘違いするな、王はお前一人ではない、俺もUFCヘビー級の王だ。それより早く説明してもらおう。俺がここにいる訳を。」
 ガヌーは虎のような眼差しで法王を睨みつけ雄々しい声で話した。それはまさに王の風格であった。
お互い睨み合った後に法王が口を開く
 「まず、この世界はクトゥルフという世界じゃ、地上人を定期的に召喚する必要がある、だから貴様がここにいる」
 「俺が召喚された理由は?目的はなんだ?」
 ガヌーは眉間にしわを寄せた
 「我々クトゥルフの民は邪神として恐れられているが皆がそうではない、法力、つまり貴様らの世界で言うところの魔法、これを我欲のために使いすぎた者が邪神に堕ちる、邪神は法を乱し、秩序を乱す。災いを呼ぶ、排除せねばならない。そのために地上人を召喚し戦わせて排除するのじゃ。」法王は淡々と述べた。
 「迷惑な話だな、お前たちが自分でやればいい話だろう。」ガヌーは呆気に取られた表情でため息をついた
 「それは出来ぬ。」即答であった。
 「なぜだ?まさか同種だから戦えないとかいう生ぬるいことを言ってるんじゃないだろうな?」
ガヌーは腑に落ちない表情で尋ねる
 「エフッエフッッ!!エフッッッッ!!」
 「ギャハハハハハハハハハハハハハ!!」
すると法王は身を震わせて嘲笑った。声が神殿に響き渡る
 「何がそんなに可笑しい?」
 「ギャハハハ!!あー嘲笑った、、同種だから戦えない?!嘲笑わせるのう⋯ 可笑しいのは貴様の方じゃ地上人!!法力にはリスクがあると言ったろうが!!」 法王の目玉はより大きく開きガヌーを見つめた。
 「リスク?!まさか邪神に堕ちるというやつか?!」ガヌーは半ば笑いながら尋ねた
 「正解じゃ、なぜワシらが邪神に堕ちるリスクを冒してまで邪神を倒さねばならぬのじゃ、そして勝てるとは限らぬ、邪神に負けたら死ぬだけじゃからな、そんなリスクを冒すより貴様ら地上の人間を召喚して戦わせたほうがリスクもなく合理的じゃ、そしてワシは貴様という最高の人類を引き当てた。」
 コイツラに表情はないが恍惚とした表情をしてるかのようにガヌーは思えた。
「怪物でも合理性を求めるんだな、クズどもが、お前らはすでに邪神だ」ガヌーは見下げ果てた表情で言葉を吐き捨てた。

 「本題だ、俺はどうすれば帰れる?」ガヌーは真剣な面持ちで法王に尋ねた
 「貴様はこのワシが開いた邪神断罪トーナメントで優勝しなければ帰れぬ、つまり邪神を全員殺せ。ということじゃな」
 「わかった、マッチメイクをしているのはお前だ、対戦する相手の情報はあるんだろうな」ガヌーは絶望するより先に次の戦いに目が向いていた。
 「わかる、わかるが忠告じゃ、貴様はこのまま死合すれば死ぬ。」法王は自信満々に言い切った。
 「なぜだ?俺は現に化け物一匹を殺したじゃないか?」ガヌーは怪訝な顔をしている
 「ハハハ、貴様は本当に愉快なやつじゃなぁ、貴様が殺したあれは、一番程度の低い邪神じゃよ、あれに苦戦しているようではなぁ、死ぬだけじゃ」法王はまたしても嘲笑った
 「なにい?!では俺らをわざわざ召喚するメリットが無いゼ、地上人がすぐ死ぬなら結果的にお前らが戦わなければならなくなるぞ、残念ながら俺より強い人類はいないからな、定期的に入れ替えても同じことだ」
 「確かにな、だが貴様は法力という力が地上人でも使えることを知らないのじゃ、、、貴様は最高の素材じゃ、邪神を自分の膂力だけで討ち倒す力を持つ人間が法力を習得すれば、更なる強さが手に入るじゃろうて」 法王の触手が無造作にゆらゆらと動いている。
 「使えるのか?それを使ってさっさと元いた世界に帰り、ジョーンズと決着をつけたい。だがしかし人間が使うことによるリスクはないのか?」ガヌーは法力を使いすぎると邪神に墜ちるという話が気がかりだった
 「もちろんリスクはある、貴様の頭に映像を送ろう。」




 ガヌーの頭に映像が流れ込む、クトゥルフの邪神と戦う地上人たちの映像だ。
 「これは、ここに召喚された歴代の地上人達か?」
 目を閉じ頭の中の意識に集中させつつガヌーは尋ねた。
 「そうじゃ」
 「この中で元の世界に帰れた者は?」
「いない、全員が5回戦程度までは行ったがそのどれもが法力に溺れて怪物に成り果てるか実力が足らずに死ぬ、、この二択じゃったなあ⋯」物憂げな声で法王は喋る。
ガヌーの頭には複数の疑問が浮かんだ
「法力のリスクは怪物に成り果てることか、、どのくらいの頻度、出力で使えば怪物になるんだ?明確な基準はあるのか?怪物になればどうなる?」
ガヌーは早口でまくし立てた。
 「そうじゃなあ、個人差はあるが1試合のうちに20回、法力を使えば怪物になっているのう、、怪物になれば自我はなくなり体の組織も変わる、戦うときの習性だけが残る、ちょっとやそっとでは死ねぬようになるからのう、まさに生きる屍じゃ」
 ガヌーはさらに質問を続ける
 「今、1試合での法力の使用回数が約20回で怪物になると言ったな、その1回は何を基準に1回とカウントされるんだ?」
 法王は怪物になるとどうなるか等の具体的な説明をしたのにも関わらず、怖気づかずに法力の用法を質問してきたガヌーに驚くと同時に一抹の期待を抱いた、此奴なら或いはと⋯ そして常に闘いにしかベクトルが向いていないガヌーに対して法王は同じ王として畏怖の念を抱き始めていた。
 「初めて名前で呼ばせてもらう、ガヌーよ、、貴様の得意技が右ストレートじゃとして、右ストレートに法力を込めて撃つ、これで1回分じゃ、これは攻撃で次は防御の話だが法力のオーラを身にまとい防御力を高める、例えば相手の蹴りをカットする際に脚に法力を宿らせたとしよう、これを合計1分も使えば怪物になるのが平均じゃな、、」
 「なるほどな、法力に頼るタイミングを見極めて使えということか、、」
「そうじゃ、使いすぎれば邪神になるからのう、最も貴様はただの人間ではない故に攻撃の威力も絶大じゃ、、法力を使えば少なく見積もっても50倍の威力になるじゃろうから、、普通の地上人よりは法力に頼る回数は減るであろう、、、」『もっとも、自らの力で1回戦を勝ち上がる地上人など今まで存在しなかったからのぅ、、、恐ろしい潜在能力じゃ、、』法王の胸中にはガヌーに対する驚嘆の意が渦巻いていた。
 それもそのはず本来1回戦というものは皆、自力では乗り越えられず邪神に瀕死の状態まで追い込まれる。1回戦の邪神は程度が低く外部からの介入が可能である、瀕死になった地上人は案内人によりワープで回収され法王の間に誘導されるのが通常の流れであった。
 つまり1回戦は地上人に法力を身につける必要性を身を持って体感させ、法力のリスクを度外視させるためと法王が地上人の素体としての能力を見極める機会となっているのだ。しかしガヌーは例外であった。
 「最後にガヌーよ、地上人の成れの果ての映像を送るぞ」
 ガヌーの頭の中に映像が浮かんでくる。
 地上人の成れの果てだ、、半分怪物に成りかかっているもの、完全に成り果てたもの、様々な情景が流れてくる。
 最後には自分が怪物に成り果てる映像までもが流れる。
ガヌーはただ黙り、微動だにせず頭の中の映像に意識を向けていた。

 「どうじゃ、決心はついたか?」法王は想ってもいないことをガヌーに尋ねる
 ガヌーは一言、「早くしろ。」とだけ言った。即答だった。
 法王は嬉々とした声で喋った「よし手の平に意識を集中しろ、自身の法力のオーラに身を委ねるのじゃ」


 「これが法力か⋯」ガヌーはそう呟きながら手のひらに浮かぶ球状の発光体を眺めていた。
 今まで冷静だったガヌーもこれには驚きを隠せない。
 「そうじゃ、それを握りつぶせ」法王は指示した。
 指示通りにガヌーは発光体を握りつぶした。
 体の全身にパワーが漲るのをガヌーは実感していた。 それと同時に金色の法力のエネルギーが全身に張り巡らされた。
 

 そして数々の闘いを乗り越えガヌーは全ての邪神を討伐した。
 

二匹相手でも関係ねえ〜!!

 全部の邪神を倒した直後ガヌーの意識は飛んだ。
 意識が回復すると隣には2人の日本人がいた。
 「ん、お前はあの時ボコったジャパニーズ、ストリートの伝説か、よくこの世界で生きてたな、法力まで身に着けて」
 朝倉「記憶がない」

 

 数年前、小さな小国の島国で幅を利かせていた格闘家兼ユーチューバー、通称"路上の伝説"の動画が偶然、UFCの"化け物"ジョン・ジョーンズとフランシス・ガヌーの目に偶然止まったのである。

 そこから紆余曲折、ジョーンズとガヌーどちらか選べと言われてそのどちらにもボコられた朝倉
 

選べ
さあ


俺を選んだか


どうした?ジャパニーズ?次は俺だ
まだやるかい?
感極まって泣いてるぜ、こいつ、そんなに嬉しいかよ

 そんな朝倉とガヌーは対戦後にユーチューブの企画でコラボをして顔見知りとなったのだ

ガヌーと電話ボックスに入ってみた

 ガヌー「なぜ、朝倉なんだ?、ジョーンズは?!」
 ガヌーは我にかえる
 

 隣にはジョーンズがいた。
 ガヌー「なんで俺等がRIZINの服着て、仲良く座っているんだ?」
 ジョーンズ「それはさ、俺たち朝倉に負けただろ。その後にもはやUFCは世界最強を決める場じゃないって言ってRIZINに移籍したんだろうが、忘れてんなや、殴られすぎてドランカーにでもなったか?」
 何かがおかしい!そんなはずはない!!というよりなんで朝倉に勝ったり負けたりしてるんだ?てか朝倉って誰だ?!
 ガヌー「そうだ!!クトゥルフは!?邪神は!?」
 バッ!!

 意識が戻ったその時、ガヌーの視界にはいつも見慣れている部屋の風景が広がった。

 ガヌー「⋯⋯なんだ⋯ 夢か⋯ どうやらとんでもない悪夢を見たようだな⋯ 内容は思い出せんが⋯ まあいい、洗顔して歯磨きだ」

シャカシャカ⋯


 そこにはいつもと変わらぬ日常があった。

          

    


水族館でタコを見るというシチュエーションは、彼のリラックスした時間を想像させるものです。ガヌーがこのような日常的な活動を楽しむことは、格闘技の重圧から離れ、心身のバランスを保つための方法としても考えられます。ただし、これは私の推測に基づくもので、実際に彼が水族館でタコを見たという具体的な記録はありません。


                   完 



 

 

 
 

 
 
 
 













 



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