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〔少年サッカー〕ジュニアユースになって、一番使えるフェイントって何?

少年サッカーを楽しむ、パパコーチ体験記の第10弾!

今回は、フェイントと相手との駆け引きについて書きます。

サッカー少年の多くは、フェイントが大好きです。
憧れの選手のNo1は、いつもドリブラー。今であれば、三苫選手が久保選手ではないしょうか。Youtubeでも彼らのスーパープレーの動画は、ものすごい閲覧回数になっています。

僕も、メッシのドリブルは何度も見返していました。地球上に2億5千万いるサッカープレーヤーすべての親と同じように、ジュニア時代の長男に「こんなプレーができるようになって欲しい」と考えていました。(すぐにタイプが違うことに気づかされましたが…)

なぜ、駆け引きが大事なの?


ジュニアからジュニアユースで一番変わること。
それは、ディフェンス力です。

守備の意識が高まり、フィジカルコンタクトやステップワークの練習が本格化。一人ひとりのプレーヤーとしての守備力が高まります。
さらに、チームとして、チャレンジ&カバーの基本が身につき、組織的なプレッシングが整理されるので、チームとしての守備力がアップする。

「個人守備力アップ × チーム戦術アップ」によって、ジュニア期とは比較にならないぐらいチームのディフェンス力が上がります

日本代表の選考でも「ボールを奪えること」が選ばれるための条件になっているように感じます。遠藤選手、守田選手、田中碧選手がスタメンで、伊藤涼太郎選手はなかなか選ばれない。
当然のことですが、今の日本代表レベルでは、守備意識の低い選手はいません。それでも守備スキルの上手い下手は確実にあります。これからワールドカップ優勝を目指し、格上のチームと対戦していくことを考えると、守備スキルが一定以上高いレベルにない選手は使いにくい時代になったのだな、と思います。
森保監督は「よい守備から、よい攻撃を」と、まず「よい守備」を考えていくことを繰り返し言っています。
同様に、U22の代表監督も、中盤の選手は「ボールを奪う力」を重視しいることをインタビューで聞きました。アンダーの代表はU15から始まりますが、日本サッカー協会として統一した基準で選んでいるのでしょう。

守備スキルの重視は、監督の好き嫌いや、日本だけの傾向ではなく、世界的なトレンドだと思います。
ペップ・シティでも、サイドバックは、カンセロやジンチェンコといった攻撃スキルに特徴のある選手から、アケやグヴァルディオルのような守備スキルの高いセンターバックタイプの選手に変わりました。チャンピオンズリーグのように同格のチームを相手にして、勝ち抜いていくためには、ペップでさえも守備を優先せざるをえなかったということでしょう。
(ドイツのザマーが、「ペップは、熊のように大きな選手をそろえるように変わった。なのにドイツはバイエルン時代のペップのやり方から進化できていない」と言っていました)

筋力トレーニングや身体づくりは高校年代でよいと思いますが、ボールを奪う感覚は小学年代から意識的にスタートさせるのがよいと思います!

ディフェンス力が高まった試合の中で大事になってくるのが、相手の狙いを外すプレーです。

ディフェンスする相手チームは、こちらのパスの方向を限定しながら、プレスをかけてきます。
相手の誘導する方向にパスを繋いでいくと、次第にパスコースがなくなり、相手チームの考える「ボールの奪い所」に向けて追い込まれて行きます。
いわゆる「はまる」状態です。
ここから逃れるためには、どこかのタイミングで、相手の狙いを外すプレー、相手の裏をかくプレーが必要なのです。

フェイントは、そのためのプレーの一つです。

しかし、今日僕がお話したいと思っているのは、1試合に1、2回使うかどうかわからないシザースやまた抜きではありません。
実際の試合で、もっとたくさん使うフェイントです。
長男は、少なくとも1試合で50回は使っていると思います。(数えたことはありません!)

そんな、ジュニアユースのプレーの中で一番使われるフェイント
どのポジションの選手にとっても有効なフェイント。
キックフェイントについて書きます。

キック・フェイントってどんなもの?

ここで紹介したいキックフェイントは、三つです。

1.いわゆるキックフェイント

マフレズの得意なフェイクシュートです。

こちらは、右足反転の解説動画です。
長男は左利きではなかったので。(残念)

これに近いことができる小学生はたくさんいると思いますが、ここまでキレのあるフェイクシュートはなかなかできません。マフレズは実際にシュートを打ってくることもあるので、本当にシュートをうつか、最後の瞬間までわかりません。
マフレズの特徴は、切り返しの足が着地した時点で、逆側の軸足を浮かして次に向かう方向に体が向いていることだと思います。だから連続してフェイクシュートをしても体勢が崩れません。

動画にあるマフレズ版クライフターンは、軸足の後ろを通しながら、自分の態勢を崩さないので取られることの少ないターン。相手との距離が近い場合に使います。フォワードから守備的なポジションまで、どのポジションでも使えると思います。

以前、ピルロが中盤でのプレス回避のためにクライフターンからの360度ターンを使っていました。ピルロはこのターンでブレスを回避できるようになり、「選手生命が伸びた」と言っていました。(古い選手ばかりですみません)

長男がアンカーをやるようになった時に練習させたのですが、何度が繰り返すと「目が回る」と言ってました。バレエのように視線を切ることが大事なようです。

キックフェイントからロールするパターンは、ボールを足元に置きながら動かすことができるので、これも使い勝手はよいと思います。

足裏を使うプレーは、フットサル上がりの南米選手がよく使うイメージがありました。ロナウジーニョやネイマールのようなプレーヤーです。

しかし少し前から、どのポジションの選手でも普通に使うようになっています。スピードとパワーが特徴のプレミアリーグの試合でも、センターバックやキーパーが足裏を使ってターンしているのをよく見るようになりました。

コンパクトな陣形でプレーするのが当たり前になったこと、グラウンドがよくなりイレギュラーしなくなったことが、足裏を使うプレーが増えた要因だと思います。

長男の指導は、利き足重視で行いましたが、キックフェイントは左足も練習しました。ボールを利き足の前に持ってくるために有効なので。

この「いわゆるキックフェイント」も効果的なのですが、今日、書きたかったのは、この後の二つのキックフェイントです。


2.タイミングをずらすキックフェイント

メッシがゴール前でよくやっていた、小さいフェイントです。1と違い、方向は変えません。シュートやパスのタイミングを読めなくして、GKやDFの足を止めたり、反応を遅らせるためのフェイントです。
パスをする時にも、使えます。

メッシの動画であれば何でもよいのですが、こちらはフェイクショットの特集です。(キックフェイントは和製英語です。英語ではFake shot と言われることが多いようです。海外選手の動画を検索する時はこちらで)

メッシがキックしそうなステップを踏むと、キーパーはいつシュートが打たれるのがわからず、反応が遅れてしまっています。
これはディフェンス側を一度やってみればわかると思いますが、小さなキックフェイントを一度入れられるだけで、シュートブロックのタイミングが合いにくくなります

得意のカットインでは、メッシが斜めにドリブルしながら、キックをする前の腕を回すモーションを小さくするだけで、DFがシュートブロックしようとバタバタと倒れていました。

3.方向を変えるフェイント

これはブスケッツがよくやっていた、”右に出すふりをして縦パスを通すアレ”です。(この動画の矢印は少し大げさですが、わかりやすいので参考まで)
ブスケッツだけでなく、うまいパサーはみんなやってました。
主に利き足のインサイドで、体の向きと視線と異なる方向にパスを出します。今では日本の中学生も普通にやります。

なぜ、キックフェイントは使えるの?

それはプレッシングの逆をつくことになるからです。

プレッシングとは、相手選手が「認知・判断・実行」をするための「時間を奪う」戦術だと言われます。
そのため、相手がボールを受けてから何秒で相手に寄せられるか、が成否を分けます。

低い位置からのビルドアップにこだわるブライトンの試合を見ると、ビルドアップが成功してチャンスをつくるか、ボールを刈り取られてピンチを招くかは、紙一重のケースが多いと思います。
トップレベルでは、攻撃と守備のレベルが拮抗しているので、どこかにまったくフリーの選手がいるなんてことは、ほとんどありません
マークを外す動きや配置の工夫によって一瞬だけフリーの選手をつくり、守備側がスライドしてポジションを修正するまでの1~2秒の間に、プレスを回避するパスをつないでいけるかの勝負、だと思います。

長男のいるジュニアユースの関東リーグのレベルでは、U13ではボール保持にこだわるチームがボールをおもしろいように回して試合を支配することもありましたが、U15になるにつれて攻撃と守備のレベルは拮抗してきます。

U15も終わりつつある今、11月の時点だと、試合会場のピッチサイズが小さかったり、ボールスピードがどうしても遅くなる天然芝だと、守備側が有利になるのでプレスを回避できないケースが多くなります。ちょっとした環境に左右されるぐらいの微妙なバランスにあるようです。

時間の奪い合いなので、プレッシングをかける時は、できるだけ相手との距離を詰めるために「相手のパスに反応してスプリントする」ことが基本動作になります。

守備のよい選手は、相手のパス方向を読み、パスが出される前からパスの出る方向に向けてポジションを修正します。実際にパスがでる前にスプリントする時もあります。

だからこそ、相手の読みを外すプレーが効果的なのです。

相手がパスコースを読んでポジションをとっている時に、パスを予想外の選手に届けることができれば、受け手が「プレス回避のパスをつなぐ」、または「ターンして前を向く」ための数秒間の時間をつくることができるのです。

小さなキックフェイントでタイミングをずらされると、ディフェンスはプレスのダッシュを一度ストップしなければならなくなる。一度足を止めたディフェンスが相手に寄せるのは、どうしても数秒遅れることになります。この数秒間が、プレスにはまるかどうかを左右します。

キックフェイントは、自分に対するプレスだけでなく、パスをもらう味方のプレスを外したり、遅らせたりすることもできるのです!

たとえば、長男のチームで、一試合に何度かやられるプレーがあります。
ボールを持っている相手の右CBにFWがプレスをかけているシーン。
FWは中へのパスコースを切りながらプレスをかけていて、相手右CBは右サイドバックにパスを出そうとしています。
それを見た味方左サイドハーフがプレスをかけるためにダッシュで寄せていきます。するとサイドハーフが元々いたポジションが空くことになるので、そこを埋めるためにボランチがポジションを修正します。
相手のパスの方向をを読み、味方の選手が連動してポジションを修正していきます。
ここで、右CBのキックフェイントでタイミングをズラされ、切っているはずの中のパスコースにボールを入れられると、かなり危険な状況になります。
味方のポジションが左に偏っているので、ピッチ中央のエリアでに前向きにボールを持たれたりしたら、かなりの確率でペナルティエリアまで運ばれます。シュートを打たれることも多い。
(見ている親としては「外れろ~ 外れろ~」と祈るばかり)

どうやって練習するの?

ここでは2つ目の「タイミングをズラすキックフェイント」と、3つ目の「キック方向のフェイント」に関して、長男とやっていた練習を書きます。

但し、いつもやっているシュート練習やパス練習があれば、その練習の中にキックフェイントを組み込むということでよいと思います。

タイミングをズラすキックフェイントの練習方法

シュート練習です。

(以前のこちらの記事も参照ください)

・ボールを右に出してすぐにシュート。
・シュートのタイミングをズラすために、上半身でキックモーションをつくりながら、打たずにもうワンタッチ右にズラしてシュートします。
・一拍ではなく、半拍だけズラすイメージ。イチ二でシュートしているのを、イチㇳ二でシュートするという感じです。
・この時は、小さなステップでボールにタッチします。メッシの動画を見るとわかりやすいと思います。メッシは半拍ずらすのを、二回三回と行います。
・シュートは、DFのシュートブロックの足を避けるために、ファーにカーブで流し込むか、DFの股下を狙います。

カットインからDFにファーを予測させて股下を狙うシュートは、今では得点パターンの一つとして定着しています。最近の選手では、久保選手やムバッペがよくやっているのを見ます。
これは既に基本シュートの一つなので、小学生のころからやっておいた方がよいと思います。タイミングをズラしながら、キックの方向も変えているので、2と3を組み合わせたプレーとなります。

古い動画ですが、こちらはわかりやすい。ムバッペが小さなシュートフェイントでタイミングをズラして、ディフェンダーに足を出させてからまたを抜いています。

「3.キック方向のフェイント」の練習方法

パスコントロールを少し工夫して練習します。
(以前のこちらの記事も参照ください)

●「身体の向き」と「視線」を、ニセのパスコースの方向に極端に向けます。練習時は少し大げさなぐらいがよいです。
●基本は、利き足のインサイドキック、インフロントキックで練習します。
長男は右利きなので、右側に身体を向けつつ、左側に縦パスを出します。
●ボランチがウィングにパスを出すフリをしながらトップに縦パスを差し込む、もしくは、センターバックがサイドバックに出すフリをしながら、落ちてきたインサイドハーフに出すイメージです。

●慣れてきたら、逆側も練習します。左側に身体を向けつつ、右側にパスを出す。左利きですが、こちらの動画が参考になります。(この動画でも言っていますが、アウト回転は気にする必要はないと思います。左を向いて右に出せれば問題ありません!)
●逆側は左足のインサイドで練習してもかまいません。 

●「軸足」と「顔」はニセコースの方に向けます。
その時に大事なのが、視線です。パスの直前にチラッとでもパス相手を見るとDFは騙されません。味方の動きは、少し前に見ておいて、パスの時は間接視野で見ることが大事です。

●右を向いて左に出す場合は、軸足を通常より少し後ろに置いて、ひっかけるように蹴る。逆に左を向いて右に蹴る場合は、軸足を通常よりも前に置いて、押し出すように蹴ります。

「おおげさにやる」とはいっても、ロナウジーニョのノールックパスのように、スタンドの方に顔を向ける必要はありません。
なぜ味方もいない方向、というかピッチ外の方向に向けて顔を向けるのかはプレーの意味としては、わかりませんが、エンターテイメントとしておもしろかった。
プロのサッカー選手として、ファンを楽しませんことを考えてのプレーだと思います。

キックフェイントが使えるポジションとは?

すべてのポジションです!

マフレズやメッシのような攻撃的なポジションの選手のシュートフェイントはすごく強力です。
フェイントかも、と感じていてもシュートされる様子があればDFはシュートブロックの動作をせざるを得ません。

加えて最近では、GKやCBといった守備的なポジションの選手のキックフェイントの使用頻度が増えていると思います。

たとえば、プレミアリーグの試合では、GKがパスを出すフェイントから足裏で方向を転換して、パスの相手を変えるのをよく見るようになりました。これは、相手チームのプレスの出足を遅らせるためのプレーです。
相手のハイプレスは、CBに対する相手FWのプレッシングがスイッチになって始まります。そのため、GKからCBに出すパスにも駆け引きがあります。その一つのプレーで、CBが判断にかけられる秒数が決まってくるからです。

CBがサイドバックやボランチに出すパスは、GK以上プレスの出足を止めたり、方向をだましたりすることが求められます。
CBは、ボールを触る回数が最も多いポジションの一つなので、一番キックフェイントを使うポジションといえるかもしれません。

SBは、サイド後方でパスコースが限られるので、相手チームの「ボールの奪い所」に設定されやすいポジションです。そのため、SBにパスが入りそうな場面では、相手のFW、サイドハーフ、インサイドハーフが連動して、パスコースを切りながらプレスをかけてきます。

そんな「相手がSBにプレスをかける準備をしてる状況」の中で、CBがSBに出すパスは、「はめパス」と言います。これは、ボールロストの危険性が高いプレーで、できれば避けるべきです。(CBが追い詰められている場合は仕方ないですが)

以前、アーセナルのイケメンCBのベン・ホワイトが「富安にパスをださない」とニュースになっていましたが、それはホワイトが「はめパス」が出さないためです。当時、富安選手も「ホワイトは上手い」と言っていました!

すべてのポジションでキックフェイントは使えるのですが、ポジションによってよく使うフェイントの種類は、少し異なると思います。

FWやインサイドハーフなど攻撃的なポジションでは、「1.いわゆるキックフェイント」や、「2.タイミングをずらすキックフェイント」が多い。CBやボランチなど守備的なポジションでは「2.タイミングをずらすキックフェイント」「3.方向を変えるキックフェイント」が多いと思います。

長男は、U7、8の頃から、「1.いわゆるキックフェイント」は得意な方でした。そこから2、3の練習をしてきましたが、なんとなく形になるまで時間がかかりました。

2のフェイントは半拍ズラすのがなかなかできませんでした。どうしても一拍ずらすことになってしまい、結果としてディフェンスの足に引っかかることが多かった。(味方のため息が聞こえる)

3は、間接視野でボールを見る練習を、その前からしていたので、それっぽいプレーができるようになるのには時間がかかりませんでした。でも、試合の中で効果的に使えるようになるのは、ジュニアユースに入ってからでした。はじめは、間接視野で味方の位置を見ることに慣れないのか、1m位パスがずれてしまいがちです。(味方のため息、その2)

今回は、三つのキックフェイントを別々に紹介しましたが、実際には組み合わせで使うことも多いです。
メッシの、「タイミングをずらしながら(2)」「切り返す(1)」プレーはよく見ました。
長男は、ジュニアユースに入ってから、守備的なポジションにコンバートされたので、タイミングをズラしながら(2)、方向を変える(3)キックフェイントをよく使うようになりました。

実際の試合では、ちょっとパスのタイミングをズラすだけでも、相手のプレスの出足を遅らせることができます。
それを続けると、相手はプレスのためのストップ&ゴーを繰り返すことになるので疲れがたまりやすくなります。すると、後半終盤のプレスが弱まり、パスが通りやすくなるのです。(相手チームにやられると嫌なもので、U13の時は、相手チームにパスを回されまくって、試合の終了間際に失点することがありました…)

そもそもの前提ですが、キックの技術によって、キックフェイントの効き方は決まります!

マフレズは、ペナルティエリアの外からでもシュートを決めることがあるので、DFはフェイクシュートに反応せざるを得ません。
「どうせ入らないから打たせよう」、と思われたらDFはフェイントにかかりません。
パスでも同じです。DFラインの裏にロングパスが出せるCBがキックフェイントをすると、相手DFラインは下げざるを得ません。するとDFとMFのライン間が空きやすくなり、パスを入れやすくなります。


キックを磨きながら、同時にキックフェイントも磨くと、パスやシュートが決まる可能性も高められると思います。
お子さんの練習の時に、意識してみてください!


読んでいただきありがとうございました。


おもしろかったら、いいね ♡ してくれると嬉しいです。


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