31.サンクトペテルブルクは白夜のはじまり
サンクトペテルブルクの実験音ギャラリーの場所は、モスクワ駅のかなりそばなのだが、ビルとビルの間の中庭を抜け、小さなドアをくぐり怪しげな階段をのぼり切り、ベランダを越えたあたりにあるので、そう簡単には辿り着けない。なぜこんな場所にあるのだろうと思うのだが、モスクワのDOM文化センターも、謎めいた場所の奥の奥にある。もしかしたらソビエト時代の秘密クラブめいたもののなごりなのではないか。そんな夢想をしてしまう。
アルタイを旅してきたせいもあるけれど、サンクトペテルブルクはかなりの都会である。広い道路に沢山のクルマ、ロシア人だけでなく、さまざまな民族に会うことが出来る。エルミタージュ美術館と言う最大級のコレクション持つ美術館。マリインスキー劇場、ミハイロフスキー劇場という世界最高峰のバレエやオペラで有名な劇場もある。
そして、なんと讃岐うどんのチェーン店丸亀製麺もある。うどんは日本とほぼ同じシステムだけど、店員はすべてロシア人。天ぷらがやけに大きかったり、寿司などがあるのも珍しい。こちらの寿司は、クリームチーズがもれなく使われているのが特徴だ。しかし、なにもサンクトペテルブルクに来てうどんを食べなくても? と自問はするものの、割りと気軽の入れるのが、ライブ前にはかなり助かる。
さらに、サンクトペテルブルクにはアンダーグラウンドなシーンが、そこかしこにあり、日々 先鋭的に活動している場を目撃することが出来る。なんとも素敵な街である。
会場の実験音ギャラリーには、IVA NOVAのメンバーも駆けつけてくれ、お客さんも満員で、前回の悔しい思いが払拭された。なかには子供連れもいて、このギャラリーなかなか懐が深いようだ。
演奏がはじまるヒカシューの歌を一緒に口ずさんでいる人もいて、もしかしたら前回わずかに来てくれた人なのか。
終演後、もう夜の11時近いのに、かなり明るい。子供もまだたくさん歩いている。ひょっとしたらぼくたちは、白夜の季節に来たのだろうか。でないとしても白夜のはじまりに違いない。繁華街ネフスキー大通りの店という店もほぼ開いている。また、この街は人工都市で、運河が張り巡らされているので、どうも白夜には夜のクルージングもあるようだ。気がついていたら、そんな素敵な時間を過ごすこともできただろうに。
それでも大通りをそぞろ歩くだけで、優雅な気分を味わえるのだから、サンクトペテルブルクというは本当に特別な街なのだろう。(2014.6.3)