【ネパール親子旅行記#2】 カトマンズの丘では犬猿もすやすや
その日に宿泊したホテルは、とてもきれいで現代的で拍子抜けした。ホテルに着くと、とてもかわいいウェルカムケーキが置いてあり、食べてみるとスパイシーなキャロットケーキみたいな感じで、すごく美味しい。ちゃんとお湯のシャワーも出た。
ネパールというと、バックパッカー旅行のイメージが勝手にあったから、これでいいんだろうかと勝手に戸惑う。
翌朝、朝食のためにレストランに降りると、窓の外に、朝の出勤や通学で行き交う人や車が見えた。ただそれだけでも、期待が高まった。
「みなさんナマステー!おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
この旅の間、私たちの1日は、日本語ガイドのおじさま、ディプさんのこの言葉から始まった。
ディプとは、ネパールの言葉で、明るいという意味らしい。背も高く恰幅も良く、日本語でもまさに明(あきら) って感じの雰囲気だ。
この方が本当に良い方で大変お世話になり、彼の独特のイントネーションの「みなさんナマステー」は、帰国後しばらく私たちの流行語になったのだった。
旅の間の移動車は、おんぼろタクシーではなく、ちゃんとしたセダンタイプの車だった。
ドライバーさんは、30代くらいの男性で、ピチピチのデニムに革ジャン、アクセサリーを色々つけて、髭がプリングルスのおじさんみたいにクルンと固めて作られている。イケてる兄ちゃんだ。
はじめに向かったのは、カトマンズの丘の上にある寺院「スワヤンブナート寺院」だった。
ネパールで最古の仏教寺院、別名モンキーテンプルというだけあって、境内に入るなり、そこらじゅうに猿がいる。
ちょっと身構えてしまったが、人を襲うこともなく、毛繕いをしたりしながら、のんびりとひなたぼっこしている。その横には野良犬がすやすや。日本では犬猿の仲、なんて言葉があるけれど、こちらでは、猿も犬も人も、ゆるやかに共存しているみたいだ。
境内にあった泉の真ん中には、金ピカの仏像が立っていた。その下の的に、コインを投げ入れるという世界共通の行動を、例に漏れず息子もやってみる。やっぱり入らない。(難しいからみんな投げたくなるのかもね)
ここからさらに階段を登って、丘の頂上を目指していく。道の途中には、祈りの風景があった。いろいろな石像の前にお供え物をし、火を灯す人たち。
ネパールは「人よりも神様たちがたくさん住んでいる国」らしい。
ほぼヒンドゥー教だけれど、仏教も少し。民族は60以上もいるとガイドさん談(TRANSITには、100以上と書いてあった)。
インドと中国に挟まれ、西部のジャングル地帯から、ヒマラヤのシェルパたちが住む地帯まで、実に多様な民族の暮らしがあり、中心のカトマンズ盆地には、主にネワール族が暮らしている。
このスワヤンブナート寺院も、仏教寺院だけれど、ヒンドゥーの神様たちも祀られていた。ひとつひとつ説明を受けていく。例えば、ガネーシャ神様はどんな時も最初に拝まないといけない神様ですよ、など。
境内の一番上のあたりまでつくと、小さな仏塔やお土産物屋さんがずらりと並んでいた。日本の整然とした寺社仏閣とは全然違う。異国だ。中央には、白いストゥーパ(仏塔)が、青い空を背景に堂々と建っていた。
中央のストゥーパの周りには摩尼車があった。
それを右手で回しながら、一周してみる。これにはルールがあって、時計回りに歩いて回さないといけないらしい。逆回りは絶対だめと教わったが、観光客の方々(インド系かな)は、スマホ片手に、平気で逆回りで回していた。私も、教えてもらわなければわからなかったな。
息子の様子といえば、かなり無口になってはいるが、すんなり適応しているように見えた。ガイドのディプさんが日本語を話してくれている安心感が大きいんだと思う。やはりガイドさんをお願いしてよかった、と思った。
2000年前、カトマンズ盆地がかつて湖だったころから、この丘の上に建っていた伝説のあるスワヤンブナート寺院。
濃い霞で、街の景色は見えなかったけれど、どんな風景が広がっていたんだろう。
その後、昼食はなんだかオシャレでアメリカっぽいレストランに案内された。そこでパスタを頼んで食べていると、息子、突然の大量嘔吐。(レストランの方に申し訳ない…)
水のせいか、スパイスのせいか、とにかく子供の胃腸に洗礼が。ここからはスパイスのきついものは食べないように、優しいものを選んで食べることにする。