サポートありがとうnote〜優まさるさん〜
※このnoteは牧真姫子にサポートをしてくださった方へ、わたしが勝手なイメージで書いたショートショートのプレゼントになります。その中で公開を了承して下さった方の作品を順を追って公開しております。
優まさるさん(@youmasaru)へ贈ります。
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「あ、パパ、ほら見て!今日もいるよ!」
そう言って娘は私の手を強く引く。
小さいのになかなかの力強さだ。
「そんなに慌てなくてもいなくならないよ」
私が声をかけても娘の耳には届かない。
ぱっちり二重の瞳を輝かせて、一目散に歩き続ける。
娘の通う幼稚園の帰り道。
住宅街の中にひっそりとそのお店はたたずんでいた。今はもう店を開けていないのだろう。カーテンのはずされた出窓から見える店内には段ボールや布で覆われた商品がぼんやりと見える。
夕日に照らされたガラスの向こうに、その子はいた。
「こんばんは、ハルコ!」
娘は笑顔で話しかける。
「今日も可愛いね!」
ハルコの瞳がキラッと光で揺れた気がした。
ハルコは熊のぬいぐるみだ。
お店の出窓にこちらを向いてちょこんと腰掛けている。身長は50cmはあるかもしれない。座っているせいか、娘と同じぐらいの大きさに感じてしまう。ぬいぐるみらしからぬ、可愛らしいワンピースを着ているから特に。
娘はハルコに今日あった出来事を延々と話している。
「今日はね、ゆぴちゃんとお絵描きして遊んだんだ」「お弁当に大好きなハンバーグが入ってたんだよ」「キレイな石を見つけたんだけど、忘れちゃったから明日持ってくるね!」・・・
頷くことも、相づちもしないハルコだけれど、その瞳はまるで、娘が自分の妹みたいに優しく見つめているように感じる。
「じゃあ、そろそろ行くね」
満足した娘がハルコに手を振る。
「また、明日!」
ハルコはいつもそこにいる。
いつだってそこにいる。
そして私たちは明日もハルコに会いに行く。
それが娘と私の小さな喜び。
娘と私の内緒の逢瀬。
『また、明日』
ガラスの向こうから優しい声が聞こえた気がした。
優まさるさんはnoteで小説を主に書かれています。文章がやさしくて、起きた出来事の描写や比喩表現がとても素敵です。ぜひ一度、ご覧ください。本作品に登場したクマの「ハルコ」ちゃんも度々登場していますよ!
牧 真姫子より🍙ありがとうをあなたに。(@makicome1986)
※こちらのnoteは、下記のサポート企画の一環になります。