10/10
その日は台風が接近していて
昼間から雨が降っていた。
ある日曜日、
いつもの友人と飲んで恋愛話になる。
連絡しちゃいなよ!
というやりとりの中で
彼に連絡を取った。
飲みに行こうよ!
5分足らずで返事がくる。
いいよ!来週はどう?忙しいかな?
そんなスムーズなやりとりで
あっさりとその日は決まった。
お店は彼が予約してくれた
和食のお店。
待ち合わせは雨が降る都心の19時。
改まって会うのは8年振りだった。
相変わらず歩くのが早い。
あの頃もいつだって
私は後ろから追いかけていた。
仕事の話
同級生の結婚の話
彼は夢を叶えていた。
やりたかった仕事についたんだと
嬉しそうに写真を見せてくれた。
それから前の彼女の話。
仕事中に声をかけてきた
5歳年下の子と付き合っていたらしい。
数ヶ月前に別れたらしい。
それで私に連絡なんてしてきたんだ、
合点がいった。
二人で日本酒を頼む。
同じ日本酒を飲んで
同じ感想を並べて笑った。
そして彼は、
笑いながらこんなことを言う。
俺たち、なんで付き合わなかったんだろうね
彼は、
何回も、何回も、繰り返した。
まさか頼んだばかりの日本酒に酔ったのだろうか。
何も覚えていないはずがないのに。
私ね、
知ってたと思うけど、
〇〇くんのこと、すごく好きだったよ
私も負けじと、
何回も、何回も、繰り返した。
彼は本当にずるい。
あの時だって、
そうやって上手くとぼけてかわしてきたんだ
今日、帰らなくていいよね?
彼はそう言って、どんどん日本酒を頼む。
私たち、大人になったんだね。
私たちはそれぞれに大人になっていた。
そして、
またお互いに大人になった。
私の長かった片想いは、
二回終わった。