映画『シン・ウルトラマン』のこと
ウルトラマン無知だし期待しすぎないように。前日に初代「18話(ザラブ星人)」「33話(メフィラス星人)」だけ予習して臨んだ。
知と愛の足りなさかオマージュへの悦びはない。設定・構想はよくても表現・結果が伴っていない印象。そんなにウルトラマンが好きだったのはわかるが、ほんとにコレでよかったのか。
🛑ネタバレ🛑
🖤苦手なところです
・好い意味での驚きがない。前日予習で観た「誘拐されたハヤタを発見したのに自然に見捨てるムラマツ」のほうがびっくりしたよ
・神永(演:斎藤工)、演技は巧いし、逃げ遅れた子を助けて命を落とした性質がウルトラマンに影響したのはわかる。だったらその融合シーンもしっかり描いてほしい。本編の神永はただの「器」で意思や感情が読めない
浅見(演:長澤まさみ)はバディ、バディと繰り返すが、まるでバディ感がないので終盤に響いてこない
・禍特対がエキスパートに見えない。過去の禍威獣退治で活躍したらしいが本作では右往左往ばかり。田村班長(演:西島秀俊)は影が薄い。滝(演:有岡大貴)と船縁(演:早見あかり)も役立つ場面が少ない
・最終兵器ゼットン。太陽系を消滅させる破壊力でも衛星軌道上に浮いてるだけじゃスケール感、絶望感が乏しい。地上に襲来して未曽有の恐怖を与えないとダメでしょ。CGとCGが戦って終わり。人類が怯えたり祷る姿もないのでウルトラマンが無謀に挑んだエモーショナルも薄くなる
・人類諦め早ッ。ウルトラマンからベータシステムと知識を伝授されるまでやる気ゼロ。そこから人類の叡智を結集するのも滝のVRソロプレイしか映らず何が何だか。結果、ウルトラマンと人類が協力してゼットンを撃破する醍醐味もない。ヤシマ作戦、ヤシオリ作戦のカタルシスはどこに
・「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」
単独行動ばかりでいつそんなに人間を好きになった? それに名台詞も地球人破棄任務失敗したゾーフィが吐くと「お前が云うか」と興醒めしそう
・画質やCGがときどきチープ、旧作オマージュか予算不足かクオリティコントロール失敗か、せっかく大画面なのに
・長澤まさみへの異様な執着。お尻スパンキング(セルフと神永と船縁)、巨大催眠タイトスカート分析官へのローアングル一斉撮影、お風呂入ってない発言させて体臭クンカクンカ… 必然性もなくノイズなだけ
などなど不足や不備に見えても、絶賛・感涙の声も多いから「ウルトラマンの作法・流儀としては正解」なのかな。私が招かれざる客、お呼びでないだけなのかも
🖤好きなところです
・ウルトラマンや外星人のデザインは美しい。スペシウム光線の所作、変身バリエーション、赤から緑の変化もユニーク
・『シン・ゴジラ』彷彿シーン。政府の俳優がかぶってて、同じ世界線かとドキドキ、別人らしいが竹野内豊まで登場して笑った
・外星人メフィラス(演:山本耕史)は面白い、本作の収穫。「郷に入っては郷に従え」私の好きな言葉です。彼なりに人類への不気味な愛情や飼育欲をもっていて、発言や所作でほかのキャラクターを喰っちゃってる。ブランコや居酒屋で神永と語り合う姿はメトロン星人ぽさも。互角以上にウルトラマンを苦しめながら自ら去るのも初代踏襲(理由はゾーフィが来ちゃったから)。山本耕史メフィラスのスピンオフは観たいな、星々を旅してまわるダークヒーローものとか
・全宇宙に「地球人は生物兵器化できる」と知れ渡り、ゾーフィが「地球人は危険だから破棄」と訪問する滅茶苦茶な理屈は嫌いじゃない。ゼットンが光の星の粛清兵器なのも意外性あってよい
🖤追記 1
ある方のご厚意に預かり庵野秀明インタビューを読んだら莫迦みたいだけど涙がこぼれた。諸般の事情で断念断念断念ばかり。作品への違和感は消えずともその苦闘には敬意を表します。
彼の発言や記事はたくさん読んできたが、世間で「庵野が好き放題やりやがって」と云われるほど実際そうでもない。『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』でもそれがわかった。幼い頃から愛してやまないウルトラマンを手掛ける機会を得たのに、出来栄えに喜びのないまま送り出したのかな、ちょっと哀しい。
🖤追記2(2回目を観て)
この映画、好きになれたかも。寛容になったか無意識で忖度したか時々熱くなり、ラストシーンからのエンドロール(米津玄師『M八七』)でじーんとした自分に驚いた。楽しみ方がわかったのかな。相変わらず残念なところもある。時間と予算と構成をしっかり立て直しての続編を観たいです。
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