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2章: 迷走と模索の日々 5.文化の違い、語学の壁、そしてお金の不安
スペインでの生活は、私にとって未知の挑戦そのものでした。新しい環境、新しい言葉、新しい文化――すべてが新鮮であると同時に、戸惑いと不安をもたらしました。日本で当たり前だったことが通用しない現実。言葉がわからないために自分の意見を伝えられないもどかしさや、誤解されるたびに感じる孤独感。そして、外国人という立場から受ける小さな差別や偏見。これらのすべてが、私の心に少しずつ負担をかけていきました。
特に、「日本人であること」を強く意識させられる瞬間がありました。それは、スペインの人々の間で当たり前とされる自己主張や直接的なコミュニケーションに、私はうまく対応できなかった時です。「Yes」や「No」をはっきりと言えず、曖昧な答え方をしてしまう私に対し、不思議そうな目を向けられることが何度もありました。そのたびに、私は「自分の意見がない」「はっきりしない」という日本人らしい特徴を、恥ずかしく感じるようになっていました。
さらに、経済的な不安も常に頭の片隅にありました。スペインでの生活は、日本よりもお金にシビアな感覚を持たなければならず、日々のやりくりに苦労しました。仕事を見つけることも簡単ではなく、「自分はこの国で生きていけるのだろうか」という不安が募る一方でした。
そして、私にとって最も大きな気づきのきっかけとなったのは、「物理的に頼れる人がいない環境」であると同時に、「簡単に次々と試せる選択肢がない」という現実でした。日本であれば、困った時にはすぐに誰かに相談できる環境や、問題が起きた時に試せる解決策が豊富にあると感じていました。しかし、スペインでは「外国人である」という事実が大きな制約となり、新しい選択肢を試すことすら難しい状況に直面しました。
当時の私は、この環境に押しつぶされそうになりながらも、依然として「外側」に解決策を探していました。新しい環境、新しい人、新しい何かが、今の自分を変えてくれるのではないか――そんな思考が私を突き動かしていました。しかし、その期待が満たされることはなく、私は次第に「環境に依存する」生き方の限界を実感し始めました。
もちろん、このことに本当に気づけたのは、コーチングに出会ってからのことです。当時の私は、環境を変えるだけでは根本的な解決にはならないこと、自分自身が変わらなければ何も変わらないことに気づくことができませんでした。それでも、スペインでの厳しい生活を通じて、私は「自分が変わるしかない」という課題を突きつけられたのだと思います。
今振り返ると、この経験は私にとって必要不可欠なものだったと思います。物理的に頼れる人がいない環境、そして次々と試せる選択肢がないという制約の中で、私は初めて「自分の力で考え、行動する」ことの重要性を学びました。確かに、当時の私は多くの後悔と自責の念に苛まれていました。しかし、それらを通じて得た気づきが、私自身の成長に繋がったと思うのです。
スペインでの生活が私に与えてくれたものは、単に文化や言葉を学ぶことではありませんでした。それは、「外側」に頼らず、自分自身と向き合い、自分を変えていく力を養うための貴重な時間だったのです。