変わるもの、変わらないもの 第5話(最終話)
彼女が語る半生を聴きながら
映画『ラン・ローラ・ラン』を思い返していた。
愛する人のために奔走するローラと彼女の姿を重ね、
万が一、これから先、
彼女が選択を誤ることがあったとしても
きっと正解にたどり着くため
あるいはその選択を正解にするために
神様が彼女に再生のチャンスを下さるのでは、と
本気でそんなことを考えている。
(↓ご興味のある方は映画を是非に)
どんな色がすき?
クレヨンの色を唄うその歌を
子どものころに口ずさんでは
好きな色ってほんとうにいちばん先になくなるし
悲しいことにいちばん先に折れたりもして
好きな気持ちが強まるあまり
ときに傷つけてしまうことがあるのは
愛そのものであろうと
彼女というメタファーを通して改めて
原体験というのは
思いもよらぬところに転がっているのだと知る。
ところで、
この世にはつくりだせない色、というのがあるという。
現存する色を何色か重ねておりなされる色たち。
いくつもの色をパレットに取り出し
少量ずつインクを混ぜながら
例えば空の色であったり
花の色であったり
肌の色であったりをつくることができたりする。
つくりだせない色はあるけれど、
近しい色をつくることはできる。
変えられないものはあるけれど、
変えられるものもある。
語りを終えた彼女は晴れやかな笑顔に満ちていて
それは彼女がこれからの人生を楽しく迎えていくことを思わせるに容易く
これまでの出来事を反芻させ、受け止め、進む。
他に向けた愛を惜しみなく与えることができる彼女だからこそ、
いつか、彼女という人生の物語がほんとうに幕を下ろすそのときには
他では変え難い、唯一無二の彼女になっているのだと、想像しては、胸を高鳴らせているのだ。
全身全霊で半生を語ってくれた彼女に
改めて御礼と盛大なエールを贈る。
そう、彼女のほんとうの人生は、
まだ始まったばかりなのだから。
BGM
True colors/シンディー・ローパー
変わるもの、変わらないもの
おわり
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