黄金

6/21(金)大阪

共演アイドルのライブを観てると自然とステージよりもフロアに目が行ってしまうことが多い。

お客さんの方がライブ感があってずっと観ていられることも少なくない。

自分の好みとしては声がデカければデカいほど好きだ。

ステージから見ててもあの顔、かっこいいなと思う。

久しぶりのワンマンライブは今までで1番では?というぐらいデカい声を浴びることができた。

歌うこともそうだが合法的にデカい声を出すってのは健康に良さそうだ。

未だにみんなが何を言ってるのか何となくしか分からないけどこのままずっと何となくのままでいい。

リズムのズレてるコールは多くのアイドルが困っているだろうが私はあまり気にならない。

ステージに立ってから客がゼロだった時代が長かったのでその辺の部分は鈍感なのかもしれない。

この初心、そろそろ忘れないといけないということは分かっている。






6/22(土)横浜

MAPAのライブがとても好きだ。

身近なアイドルのライブの中では今1番好きかもしれない。

曲が良いなんて当たり前になったこの時代にちゃんと野生的に曲の良さで突き進んでる。

もちろんその良さにメンバー6人が振り落とされないように体全体心全体で手懐けようと飲み込もうとしてる様も素敵だ。

プロデューサーの大森さんとは昔弾き語りで二度ほど共演したことがあるがこの人の音楽に人生で何回打ちのめされるんだろう。

ほとんどお話したことは無いけどちょこちょこ世間の話題に挙がる度にこんな小さなグループの長である自分が思うのも烏滸(おこ)がましいけど「わかるよ」と立場的に思わざるを得ない時がある。

会場に着いてひと段落していたら楽屋の裏にあたるステージからうっすら聴こえてくる。

何の感情か分からないのに触れたことのあるような歌のような祈りのような壊れたオモチャのようなこの叫びは何だろうと思った。

耳から離れなくて調べたら『怪獣GIGA』という曲だった。

フロアに行ったら『アイドルを辞める日』を歌っていた。

くぴぽの『GOODBYE IDOL』を作った時にメンバーが「まきちゃんは靖子ちゃんと真逆なことを歌ってるんだね」と言われたことを思い出す(GOODBYE IDOLじゃない曲のことを言ってた気もする)。

アルバム『WATER』の曲たちを作っていた時にこの曲に引っ張られそうになって振り払ったことも思い出した。

この日の5人くぴぽのライブはたぶん過去一番と言ってもいいぐらい反響があった。

私が出なくなって5人になったくぴぽは「ステージにまきちゃんが見えた」とよく評されることがあったけどその意味がこの日よく分かった。

確かに私が10年かけて積み重ねてきた血や骨や遺伝子が間違いなく5人に受け継がれている。

そりゃどんな時でもどんな場所でも何度も何度も背中を見せてきたんだから当たり前かもしれない。

と言いたいところだが、実はそんな背中や受け継がれるような精神なんて存在はしていなかった。

この日のライブ前に会場のステージがかなり高いということでほとんどのメンバーが降りて歌うことを嫌がった。

怒りというか失望というか何を言ってるのか理解ができなかった。

今までくぴぽで何をしてたの?何を見てたの?何を感じてたの?

ライブというものをくぴぽというものを何だと思ってるんだと胸ぐらを掴みたくなるぐらいの憤りを抑えながら袖へ連れていき落ち着いて大丈夫だと伝えた。

その直後に彼女たちは良いライブをした。

これがアイドルの良さと言えばそうなのだが、こんな風にこれからも私は未熟な心と心を擦(こす)り合わせながら産まれる灯火のような感動と引き換えに、壊しては育まれるただただ偶然でしかない丸い命をまだまだ抱きしめていかなければならないのかと想像するだけで眩暈がした。

きのホ。のメンバーが楽屋で話してた何気ないお互いを気遣っていた言葉がところどころしか聞こえなくて概要はよく分からないのだけど好感が持てた。

どうしてもポテトさんとか千夏さんと話すことが多いので距離はあるけど、この子たちもきっと同じようにお互いを傷付けあって守りあって絆を強くしてきたんだろう。

呼んでくれた主催のtip Toe.とは今までほとんど共演したことが無かった。

しっかりライブを観たのは1期がデビューしたての時のサイクロン以来じゃないだろうか。

とても好きなアイドルだったけど残念ながら縁の遠いグループだった。

胸が苦しくなるような眩しいライブに自分の青春時代を重ねてしまう。

くぴぽが好きだと言ってくれていたメンバーの子をずっと観ていた。

音楽は無力だ。

すべてが一瞬だった。

ここ最近ライブを休むことに対しては焦ることなく割とリラックスして過ごしていたけど今日のステージは少し羨ましくなるようなライブだった。

立派なステージに立たせてもらえて有り難い。






6/23(日)名古屋

名古屋に良いイメージはあまり無い。

名古屋って言うより愛知って言った方が良いんだろうかとか考えちゃうし。

界隈の音楽的にも好みでは無かったので身近なグループが出てるようなイベントに誘われないことへ誇りを持っていたぐらいだった(30%ぐらいは負け惜しみ)。

強(し)いて言えばツチヤチカらと呂布カルマが住んでいる街ということぐらいだろうか。あと昔対バンした不完全密室殺人というバンドが名古屋から来たと言っていた気がする。素晴らしい。

我々を待ってる人なんてほとんど居なくて関西と関東のお客さんが無理して来てくれる場所っていうイメージだった。

なので、特典会の列があんなに長くなるなんて夢にも思わなかった。

この3日間泣き出したいぐらい運転がとても大変だった。

スケジュールの組み立ても大変だった。

でも来てよかった。

楽屋でmekakusheさんとより仲良くなれた気がする。

ごいちーやグデイの2人と話せたのもリラックスできた。

ただ少し頑張り過ぎたかもしれない。

運転はしばらく止めようと思う。




同日、大阪でsui suiがラストライブを終えた。

GREAT MONKEYSも終わった。

沢山の人がアイドルを終えていく子たちに感情の整理を後に任せて花を手向けていた。

もう仲間という間柄でも無かったかもしれないし、無くなることへのゴシップ的な側面すらも知ろうとは思わない、よく共演してた会えば顔がほころんで話すぐらいのよく知ってるグループたち。

何度も見た風景で何度も感じたことのある感傷をひたすら繰り返すこのパラレルワールドを覚えているはずなのに私はまたそれを忘れて彼女たちを少し羨ましく感じて煌びやかに瞳へ映す。

未だに泥水とカフェオレを啜り続けてる私たちをどうか笑ってほしい。

死んだら私にも泣いてくれますか。

続けることを選んだ者たちは先人たちの砕け散ったダイヤモンドのような光を通してみんな思っているだろう。

夢から覚めた時はいつも夢で良かったと思う。

続けることに意味は無い。

嫉妬してしまうことにも意味は無い。

ドーパミンとかアドレナリンなんてそこらじゅうに転がっている。

1つ1つを抱きしめるように受け入れていくと壊れてしまうかもしれない。

それでも全てを麻痺させて生きるぐらいならそんな人生は辞めた方がいいかもしれない。

ちょうどいい感情の黄金比がきっとあるはずだけどそこに辿り着く頃にはこの世界はきっと滅んでしまってるだろう。

私には夢がある。

少しずつ形や大きさは変わっていくけど。

それでいいよね

それでいいよ

うん

大丈夫

大丈夫だよ。

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