UFOと友人
新しい私に会えるかもしれない。
そう思った私は連絡を取った。
この数年会えてなかった彼女たちはあの頃のまま私を私で居させてくれた。
想像以上に心が満たされたそこに新しい私の姿は無く、居たのはかつての私だった。
手放しに心から私を認めてくれる彼女たちの言葉に浸ると何もかもが溶けていくようだった。
彼女たちは私がとあるイベンターから言われた心無い言葉なんて知らないし、幾つかの根拠の無い噂を色んな人たちから立てられてることも知らないし、私がグループで人気の無いメンバーだということも知らない。
流行りの映画の話も、同じ過ちを繰り返す恋愛話も、顔が思い出せない友人の友人の話も、誰も話そうとはしない暗黙の話も、太古の時代から繰り広げられてるであろう最近の若い子の話も、「これ美味しいね。」と言い合うことも、大きな声では話せない性の話も、いつものあの子の天然話も、こんなにありふれた話に私はずっと、ずっとずっと遠い世界に居た。
「頑張ってるね。」と言われてすぐさま否定したけど、布団の上で思い直す。
また「ありがとう。」って言えなかった。
私は頑張ってたのかもしれない。
いや、頑張った。とっても。
だってこの私が。
身体を休めて、心を休めて、そんな休みをずっと探してたけど、
私はまた頑張ろうとやっと思えた。
ちゃんと次は「ありがとう。」って言えるように。
UFOキャッチャーに行こうと言われたので譲り合いで行き場を失ったお釣りをそこで使おうと提案した。
好きでも嫌いでもないこのキャラクターを何処に付けるかここ数日ずっと考えている。
たまに「まきちゃん。」と呼んでみる。
何回も口に出して呼んでみる。
誰にも言わないことを断片的に散文的に虚空に語りかける。
返事は無い。
ただの屍ではない。
言葉の主はいつも哀しそうで割れてしまいそうだ。
こんな夜ですら。
私で良ければそっと抱きしめてあげたい。
こんなにも亡骸や約束や種がそこら中にいっぱいでごちゃごちゃしてるのに、壊れそうな夜や冷んやりした夜に限ってこの部屋はいつも真っ白で何にも無い。
携帯電話の充電ケーブルまで届かずに力尽きたのを見ていたかのように、夜はひっそりと誰にも気付かれないように朝へと名前を変える。
そういえば麻貴という子に会えたことはあれから1度も無かった。