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ビートルズが生まれたとき

 ビートルズ。私はリアルタイムで彼らの歌を聴いていた世代なんです。当時は格別ファンではなかったんですけどね。やかましい音だと思っていました。だからYesterdayを初めて聴いて、えっこれがビートルズ? とびっくりした時の記憶があります。
 彼らの映像を当時はあまり見ることができませんでした。髭を生やしてヒッピー風の服装をした彼らの写真ぐらいしか知りませんでした。ところが最近はネットで、動いているビートルズが見られるのです。白黒のライヴ映像なんですが、スーツ姿のジョン、ポール、ジョージの脚のそろって長いことや、髭のないジョージの美青年ぶりや、おかっぱ頭を振りたててドラムをたたくリンゴの可愛いさに感じ入って繰り返し見ました。
 リンゴってドラム下手じゃないのとか言う人がいて、それに対して、とんでもない、リンゴのドラムはすごいんだと反論する人々との議論がネット上に飛びかっています。私も、Come Togetherのドラムなんかは、シュールとしか言いようがないと思うんですけど。
 アメリカには野球殿堂のような、ロックの殿堂なるものがあって、ビートルズは1988年に殿堂入りし、その後、ジョンやポールやジョージは2004年までにそれぞれ個人として殿堂入りしたのですが、リンゴが殿堂入りしたのはようやく2015年になってからでした。そのセレモニーの司会をしたのがポール。その時のスピーチが、ネット上であちこちに引用されています。
 
(リンゴの生い立ちについて簡略に語ったあとで)
……その後リンゴはロリー・ストームとハリケーンズというグループに加わった。僕たちはハンブルグに行った時に彼らに会った、あそこで演奏した時にね。その時リンゴはプロのミュージシャンに見えた。僕たちはあれこれジャカジャカやってたけど、彼は髭を生やしてプロらしかった。スーツを着ていかにもプロ風だった。彼はバーに座ってバーボンのセブン割りを飲んでいた。そんなやつを見たのははじめてだった。まさに大人のプロのミュージシャンって感じだったのさ。
 そのうち僕たちは彼と親しくなった。彼は夜遅く僕たちが演奏する時に来て、一‐二曲リクエストしたりしたので、彼と知り合いになった。ある晩その頃のドラマーのピート・ベストが出演できなくなって、リンゴが代わってくれた。僕はその時のことを思い出す。いや、ピートはイケてるやつだったよ。僕たちは彼といい時を過ごした。でもね、僕とジョンとジョージが(彼らに神の祝福を!)歌うために前に立って、後ろに一度も一緒にプレイしたことのないやつが座った。彼がプレイし始めた瞬間を僕は憶えている。あれはレイ・チャールズのWhat'd I Sayだった。たいがいのドラマーはあのドラムのパートを真似できないんだ、チチチ、チチチチってね。ちょっと難しいんだよ。でもリンゴはやった。そう、リンゴはやってのけたんだ! 僕はあの瞬間を忘れないよ。あそこに立って、ジョンと顔を見合わせ、ジョージと顔を見合わせた。その顔が言ってた、チクショー、なんなんだこれは? ってね。その瞬間だったんだよ、それがまさに、ビートルズの始まりだったんだ。(ローリングストーン誌より拙訳)
 
 ちなみに、レイ・チャールズのドラムパートとそっくりなのを、リンゴはI Feel Fineでやってるそうです。
 歌も下手と言われるリンゴですが、彼の歌がアメリカのヒットチャートで1位になったことがあります。ビートルズ解散後の1974年のことです。1960年にジョニー・バーネットという歌手が歌ったYou’re Sixteenと言う歌のカヴァーで、ポールも含む友人たちが伴奏に参加しています。美声でもなく技巧もない歌声ですが、ほっこりします。原曲の方は8位だったそうです。

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