バジャのスタジオ
朝ドラの後、急に可愛いアニメがはじまって驚いた。
主人公は猫? 犬? いや、このサイズ感はハムスターか。
舞台はアニメ制作会社。そこで飼育されている小動物「バジャ」と、そこで制作されているアニメの主人公「ココ」の、不思議な日常を描いたファンタジー調のアニメだ。
魔法少女ココが魔法を使うシーン。七色の光がほとばしり、澄んだ声の少年が合唱する歌が流れる。宮沢賢治の『星めぐりの歌』だ。
♪あかいめだまの さそり ひろげた鷲の つばさ
一瞬にして分かった。これは、京都アニメーション襲撃事件で亡くなった人たちに捧げる追悼作品なのだと。
変身の魔法を使ったココがバジャに言う。「忘れないで。あなたはいつだって、何にでもなれるんだから」と。
そして、エンディングに流れるボーイソプラノの合唱。『てのひらを太陽に』。天から降ってくるような美しい声が歌う。
♪ぼくらはみんな 生きている 生きているから 歌うんだ
そう。彼らはいまでも、視聴者の心の中で生きている。アニメを通じて、私たちに、いつでもなんにでもなれるということを教えてくれた。
そんな深い追悼の意を感じる演出でありながらも、魔法少女ココのコケティッシュな喋りと脚線美はアニメファンの心をくすぐる設定だし、敵役のツンデレぶりも、バジャの愛くるしい仕草も魅力的だ。
観る人を楽しませながら深いメッセージを伝えることができるアニメのちからを、これでもかと見せつけられた。
事件のことを思い出すたびに、悲しみと憤りに塗りつぶされそうになる私たちの心を、この作品は美しく塗り替えてくれた。
アニメは負けない、そんな声が聴こえた気がした。
忘れてはならないのは、無差別殺人という凶行に走ったのは、私たちとは全く違う「異質な存在」ではないということだ。
社会とのつながりを絶たれ、経済的に精神的に追い込まれたら、誰しもなりうる姿だと認識することだ。
自分さえ良ければいいという考えを正さなければ、いつかしっぺ返しが来る。経済格差しかり、環境問題しかり。
しかも、そのしっぺ返しを食らうのはいつだって、権力の上に胡坐をかく富める者ではなく、毎日懸命に働いているわたしたち市民なのだ。
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