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今日より明日が、少しでも良いものであるように

夕卜にも 占にも告れる 今夜だに 来まさぬ君を 何時とか待たむ
万葉集 巻十一 集歌2613 詠み人知らず

みんながやってる「夕卜」って占いでも、ほかの占いでも「今夜、恋人が来ます」と告げているのにあなたは来ない。私、このままずっと「いつ来るんだろう…」って待ってるばかりなの?(※筆者による意訳)

奈良時代末期に成立したと言われる万葉集。そこから1200年以上経っても私たちは、同じように「ここにいない誰か」の気持ちを思っては、眠れない夜を過ごすことがあります。「夕卜」とは、この時代に流行したと言われる占いのこと。夕方に街の十字路に立ち、耳に入った見知らぬ人の言葉で吉凶を占うというものです。あとに続く「占」は、広く占い一般のこと。来てくれない恋人の気持ちが不安でたまらなくて、次から次へと占いにすがったのだろうと想像します。いつ来てくれるの、いつまで待てばいいの。忙しいよね、わかってるけど。もしかして、もう終わりってこと? 別の人が好きになっちゃったの? ――というのは意訳に過ぎるかもしれませんが、私はこの句の文字の連なりからきりりと冴えた精神性ではなく、どこか疲れ切った、乾いた諦念を感じるのです。あらゆる手を尽くして幸せを願った、何度も何度も。でも空振りばかりで涙も枯れ果てて、優しさも使い果たして、抜け殻になった気持ちを。

恋でも仕事でも、友人関係でも、「他人の気持ち」という見えないものを思うとき、どんどん不安な想像ばかりが頭のなかで大きくなっていくことはよくある話です。相手がはっきり言ったわけじゃない、態度にも示したわけでもない。それでも、一番欲しくない言葉を突きつけられるシーンをありありと、相手の声色までもリアルに、まるでエンドレスの動画のように頭のなかで再生してしまう。まだ起こってもいないことなのに。仕事で成功するイメージとか、幸せに暮らしているイメージなんて夢のなかみたいにぼんやりとしか思い描けないのに、悲しいシーンばかりがリアリティを伴って再生されるのは、どうしてなのでしょう。

ただ――どなたも想像はついておいでと思いますが――そうしたネガティブのループにはまってしまうと、物事はあまり良い方向には向かわないものです。暗く沈んだ表情が、しぐさに滲むおびえが、かちかちに固まったメッセージの文字列が、未来にもたらすものは影であることが多いのです。

ネガティブな想像を強めてしまうのは、その人が幸せになりたくて一生懸命だからであると、私は考えています。今日より明日が少しでもいい日になるように、必死で頑張っている証拠なのです。それがいつだってポジティブなものでなければならない、なんてことはないでしょう。強く希求するからこそ、真剣だからこそネガティブな方面にも目が向かいます。リスクだからです。それを押しつぶそうとしても、余計に大きくなるでしょう。だからこそ、占いを上手に使って「じゃあ、こうしよう」という希望に変えていけたら理想的なのではないか。そんなふうに思い続けて数年(長いよ)、その思いがかたちになりました。2月22日、新刊『タロットであの人の気持ちがわかる本』が説話社より発売されます。

タロット本

タロットカードを持っていなくても、24時間いつでも、思い立ったときに「誰か」の気持ちを占える本です。誰か、というのは好きな人でも、上司でも、友達でも、誰でも大丈夫です。思い立ったとき、ぱっと開く。そこに、その方のお気持ちがあります。使って、使って、使い倒していただく本です。

もし筆者としてわがままを言わせていただけるなら、「そう思っているんだ。じゃあ、こうしよう」と、ご自分の行動につなげていっていただけたら、すごくすごく嬉しいです。「じゃあ、さらっとLINEを送ってみよう」でも「じゃあ、しばらく時間を置こうかな。仕事がんばろ!」でも、なんでも大丈夫です。「じゃあ」の先をいろいろ考えれば、不安のループは止まります。ネガティブな方向に頭から突っ込んでいくようなことは、防ぐことができます。

想像しても絶対にわからないことを延々と想像してご自分を追い詰めてしまう、そんな夜をなくしたくて、ずっと胸のなかであたためていた本です。もちろん気軽にパッと占っていただけたりするのもとても嬉しいです。ぜひ一度、お手にとってご覧いただけたらと思います。

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真木あかり
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