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推し映画について語る-22:「侍の名のもとに~野球日本代表 侍ジャパンの800日~」

2020年2月7日からわずか2週間の限定公開だったドキュメンタリー映画「侍の名のもとに~野球日本代表 侍ジャパンの800日~」が、昨日からNetflixで配信スタートとなりました。これは本当に嬉しい! 何度もリピートしてしまっています。
私は広島出身なこともあり、生まれた時からカープファン、そしてプロ野球の、侍ジャパンのファンです。だからこの映画が楽しめたのか…というと、決してそれだけではなくて。若いトッププレーヤーの成長記録であり、理想のリーダー像を学べる、とても面白く貴重なドキュメンタリー映画だと思います。
チーム運営、マネジメントに大きなヒントをくれる作品として、全力で推させていただきます!

「侍の名のもとに」について

稲葉篤紀氏が野球日本代表・侍ジャパンの監督に就任してから800日。チーム編成や戦略・采配を中心としたミーティング、海外視察、そして10年ぶりの世界一に輝いた「2019WBSCプレミア12」をはじめとした数々の国際試合を経験し、結束力を高めてきた。
各球団のスター選手が集結した侍ジャパン。代表への強い想い、選手の素顔、激闘の裏側・・・。チーム専属カメラがとらえた貴重な映像を通して、明らかになる真実とは。(オフィシャルサイトより)

2017年7月に公開された前作「あの日、侍がいたグラウンド ~2017 WORLD BASEBALL CLASSIC™~」は、劇場公開を最終日に知って見逃しました…なのでDVDを購入して、何度も視聴していました。最高でした。
今作は無事、映画館で観ることができました!スクリーンで侍ジャパンの躍動を目の当たりにできて、めちゃくちゃ嬉しかったです。

前作は、準決勝敗退となった2017年WBCの1ヶ月に密着したドキュメンタリー。
今作は、2017年7月31日に稲葉さんが侍ジャパントップチーム監督に就任し、2019年11月の「2019WBSCプレミア12」で”10年ぶりの世界一”に輝くまでの800日間をまとめたドキュメンタリー映像です。

序盤に稲葉監督が言う「いい選手を集めるんじゃなくて、いいチームを作りたい」。ここに、侍ジャパンが世界一を奪還できた理由があったのではと思っています。
稲葉監督が”チームづくり”からはじめ、選手を集め、経験を積み重ね、クライマックス——プレミア12の決勝戦に向かっていく800日間のストーリー。
野球の面白さ、侍ジャパンの躍動を目の当たりにできるだけでなく、本当にたくさんのことを教えてもらえました。


チームづくりの大切さ

前作は選手にフォーカスが当たっていましたが、今作は稲葉監督のチームメイキングから入り、「チームが作られ、成長していく様」を見届けることができました。同時に「稲葉監督が、日本代表の監督として、悩み、学び、成長していく様」を、共に体感できた気がします。

メンバー個々の能力が高くても、チームとしてまとまり、機能しなければ意味がない。どんなに戦闘力が高くても”生身の人間”なので、緊張するし、身体は固くなるし、落ち込みもする。限られた時間の中で、120%のプレイをする為に必要な要素は何なのか——それはやはり”人間”のチカラでした。
対話から生まれる信頼、与えられた役割を全力で全うしようとする姿勢。そのために必要な人財がいる。稲葉監督の“譲れないポイント”はそこだったのだと思います。

メンバー同士が、すごく“対話”してるんですよね。秋山が誠也と、松田が丸&坂本と、バッティングについて語ってるシーンが大好きです。こうしてチームの結束が高まり、チーム力が強くなり、ひいては日本のプロ野球が底上げされていくんだな…と実感できました。
トップ選手たちが、チームの垣根を越えて、侍ジャパンのメンバーとして一緒に戦うことで、得るものがたくさんあるんだなと。
そして、そんなふうに選手自らが動いていけるチームをつくった=メンバーを集め、鼓舞していったのが、指揮官である稲葉監督でした。

稲葉監督は「こんなチームをつくりたい、こう勝ちたい」とビジョンを掲げ、言葉を尽くして伝え、そしてプレイヤーに預けました。
責任は全部こちらが持つから行ってこい、と信頼した。選手はそれに全力で応えた。その結果が世界一でした。まさに“組織は人なり”を実感できるドキュメンタリー映画です。

野球に限らず、どんなスポーツにおいても、あるいはビジネス面においても、チームが”最大限の力”を発揮するためには、様々な工夫が必要です。チームの内外に”多様性”が溢れる現状、正解を掴むのはなかなか難しい。
成功するチームには、いろんなリーダーの“型”があると思います。昨今のプロ野球の強いチームの指揮官を思い浮かべても、いろんな人がいる。
その中で、稲葉監督や、松田選手が体現する”リーダー像”は、ひとつの正解だと思うし、それは意識さえすれば、誰もが参考にできる“型”だと思うのです。そういう意味で、とても学びの多い1本だと感じました。


好きな選手のエピソード

すべての場面に胸熱ポイントがあるのですが、あえてのピックアップ!好きな選手だからグッとくるのか、エピソードを目にしたから惹かれたのか、我ながら謎です。どっちもかな。

秋山翔吾選手
秋山がいきなりのアクシデントに見舞われました。10月31日の強化試合で、右足に死球を受けて骨折、離脱。不動の1番にして、“侍ジャパンのことを唯一相談できる相手”と稲葉監督から絶大な信頼を寄せられる名プレイヤー。事実上の”侍のキャプテン”として、なくてはならない選手です。辛すぎる幕開けでした。
けれど55番のユニフォームがいつもベンチに掲げられていて、「28人+1人」で戦っていくぞ、という皆の心意気が堪らなかった。
決勝戦で勝利が決まった瞬間、ユニフォームを着ながらマウンドに駆け寄っていく秋山の後ろ姿を観ていると、涙が溢れました。
無念すぎる離脱の時「(優勝して)シャンパンファイトする時は、ゴーグルつけてビーチサンダルで駆け付ける」と言っていた、その約束を、皆が叶えてくれた。泣くしかなかったです。

菊池涼介選手
菊池よ!秋山と仲良しの菊池よ!秋山が離脱した後の初戦・ベネズエラ戦、負けるかもしれない…という重い空気の局面、「秋山さんとのシャンパンファイトの約束を守りたい。秋山さんの分も」と“気持ちで”タイムリーを打った菊池よ!堪りませんでした。
稲葉監督が「秋山の不在をどうチームでカバーするか」と語っていたけど、不運な事件は、間違いなく菊池のハートに火をつけた。菊池を見ていると、身体能力や日々の練習に加え、気持ちの強さがパフォーマンスを左右するのだと、つくづく思います。

鈴木誠也選手
誠也!みんなから愛される天然の誠也!強くなったなあ…としみじみ思います。カープの4番から、ジャパンの4番打者へ。凄いですよね。いつも「まだ25歳…⁉︎」と驚き続けています。
とは言え、初戦の第3打席までほんときつかったし、見ていられなかった。当時を思い出すだけで、こちらも胃のあたりが重くなってきます。やっぱり誠也でも、「日本の4番」には重圧を感じるんだな…と思ったものです。
けれど重圧から抜け出した、プエルトリコ戦でのHR。続いて台湾戦、オーストラリア戦と、三試合連続HR!最高です!
2017年シーズン中の骨折・離脱を転機に、身体だけでなく、メンタルも、強く逞しくなったように思います。才能ある“野球小僧”が、強靭なメンタルを身につけたら、最強ですよね。これからも、本当に楽しみな選手です。

松田宣浩選手
前作に引き続き、マッチが最高すぎました…!「いいチームをつくりたい」という稲葉監督の顔をじっと見つめる松田の顔がいい。
稲葉監督から“ジャパンに召集したいと思ってる”と言われた時のやりとりに、いつも笑ってしまいます。「どう?マッチ的に」「はい、元気です」。元気て。笑
チームのムードメーカー&守備固めとして招集されて。その役割をよく理解して、ずっと声を出して、仲間を鼓舞して。決勝戦では“必勝の日の丸鉢巻”を作って円陣で盛り上げて。松田にしかできないですよね。いつかその役割を菊池が担うかもしれないけど、でも今は、松田がそれをやってくれるから、菊池がのびのびプレイできる。そういう“ポジション、役割の絶妙さ”ってあると思うのです。
思えば、カープの三連覇も、新井さんがチームの中心になっていました。試合中のパフォーマンスも勿論ですが、ベテランが誰よりも先頭に立ち、声を出して、コミュニケーションを取っていくことで、チームが“常にベストな状態”をキープできていた。
自分自身が成績不振だと、なかなか余裕も持てなくて、周囲への気配りや声出しが出来なくなったりもする。けど、指揮官が「チームのまとまりが最重要だ」と理解していて、そのまとめ役として託していたからこそ。松田がその信頼に全力で応え、侍ジャパンを最高のコンディションをキープし続けた。ここの関係性がすごく大事なんだなと、前作以上に感じました。


好きなシーン

野球ファン的に熱かったシーンもピックアップします!普段見えない“舞台裏”や、チームの垣根を越えた選手間のやりとりなど、本当にワクワクするシーンの連続でした。

坂本勇人選手を、稲葉監督が褒めるシーン
シーズンMVPを獲るほどの選手が、不振に陥り、代打まで出されてしまう。悔しいだろうに、腐らず卑屈にならず、ベンチ前でチームのために声を出し続ける。
そういう姿勢が、ひいてはチーム力を高めることになるんですよね。
稲葉監督は言う、ジャパンでだけでなく、自チームに戻っても同じ。自分の信頼度が上がっていくはずだと。
ジャパンの勝利に収まらず、日本のプロ野球全体のレベルが上がり、活気を増して、未来も野球人口が増えていったらいいなと思うのです。

決勝戦、山田哲人選手の逆転3ラン
何度見ても痺れます。本当に値千金!皆の笑顔も最高でした。

周東佑京選手の俊足
走塁のスペシャリスト!ソフトバンク、本当に選手の厚み、育成が素晴らしいですよね。惚れ惚れする。
スーパーラウンド初戦のオーストラリア戦、1点ビハインドの7回での代走シーンが堪りませんでした。二盗→三盗→源田のセーフティバントでホーム帰還、同点!足でもぎ取る1点の価値。これぞ日本の野球!って感じです。ホームインの走塁が、もう、めちゃくちゃ速くて美しいんですよね、本当痺れる!あの走塁は芸術です。

ブルペンの緊張感
トップチームとしては2009年のWBC以来10年ぶりに世界一がかかるマウンド。リリーバーにのしかかる重圧。哲人の3ラン後も1点差が続く場面、ブルペンのモニターを見つめて「あと1点ください!」と呟く投手陣。浅村のタイムリーで1点追加となり、ほっとした空気が流れるのが、なんというか、興味深かったです。
大竹がリリーバー山本を送り出す時「(野手が)守ってくれるから!」って声を掛けていた場面が印象深かったです。大竹ってすごい声出してるんだな…と意外で。投手陣の精神的支柱なんだなと、嬉しくなりました。

優勝が決まった直後、會澤翼選手の笑顔
コーチと固く抱き合うアツの姿に、グッときました。試合開始直前、山口俊也投手とマウンドに向かう場面もよかったです。あんなふうにピッチャーを励まし、信頼関係を築いていくんだなあ…と新鮮な気持ちになりました。
そして皆のハイタッチ。本当に皆、いい笑顔です。


東京五輪に向けて

ペナントレース中はライバルなのに、日の丸を背負ったらあんなにOne Team感に満ち満ちてるのが凄いなと、しみじみ思います。侍ジャパンとして過ごす1分1秒が、選手の糧になってるんだなあと実感できる映画でした。
今年2月、劇場で観終えた後、2020年7月からの東京五輪が、本当に楽しみで仕方なかったです。今回のプレミア12での経験を武器に、さらに強く、逞しい侍ジャパンになっているに違いない、と。

Netflixでの配信が始まり、この映画の冒頭のシーン——2019年11月17日21:58、東京ドームの、満員のスタンドを観ただけで、涙が溢れました。
歓喜の大歓声。ハイタッチ、抱き合って勝利を喜び、讃え合う。私達がほんの半年の間に失ってしまったものが、そこにありました。
「次は東京オリンピックでの金メダルを目指す」のナレーションに、泣けて泣けて仕方なかったです。
未来はわからないけど、また侍ジャパンが世界一になる瞬間を、心待ちにしています。

予告編Movie&リンク集

未公開のシーンを集めた予告編、何度観ても笑ってしまう。

超楽しい予告編
秋山に寄りすぎる菊池

逆手投げ選手権でいじられる大竹

秋山の差し入れをいじる菊池

決勝戦のスコア


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