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推し映画について語る11-牯嶺街少年殺人事件

2017年4月、元町映画館で「牯嶺街少年殺人事件」を観ました。

フー・ボー監督の「象は静かに座っている」も大好きなのですが、どうも、長尺の群像劇が好きみたいです。まるで映画の登場人物たちと、同じ空気を吸って、同じ世界を生きているような気持ちになる映画。

また観たいけれど、かなわないかもなあ、と思っていたら、まさかのNetflixにありました。気付かなかった…!

推し映画について語る11:「牯嶺街少年殺人事件」

1991年公開の台湾映画です。楊徳昌(エドワード・ヤン)監督。この作品の中で生きる少年少女の姿が瑞々しく、美しく、そして切ない名作です。

1961年6月に台湾で起こり、当時思春期だったエドワード・ヤン監督に衝撃を与えた、中学生男子による同級生女子殺傷事件をモチーフにした青春映画。1950年代末期から1960年にかけてが時代背景であり、エルビス・プレスリーに憧れる少年やごく普通の少年たちの風景や心情、そして事件に至ってしまった少年の心の機微まで描いている。(Wikipediaより)


2017年鑑賞時の感想

ずっと気になっていた映画だったので、上映してくれた元町映画館には感謝しかないです。大傑作と言われながらDVD化されていなくて、観れる日は来るんだろうか…と思っていました。本当に、観れて良かったです。

中学生の小四(シャオスー)(チャン・チェン)は外省人の子で、学校では不良グループのメンバーと仲良くなったり、同級生らはプレスリーに憧れたりと多感な時期を過ごしていた。小四の兄も頭は良いがゴロツキと仲良くなっていく。そんな中、小四は不良グループのボス・ハニーの彼女だという小明(シャオミン)(リサ・ヤン)という女の子に淡い恋心を抱くようになる。(Wikipediaより)

1960年代の台湾が舞台です。3時間56分という、普通の映画の2本分の長さの映画ですが、飽きなかった。主人公の14歳の少年と、その仲間や家族の群像劇をひたすら、傍観者として眺めていました。
10代前半の少年ばかり出てくるから、名前も顔も関係性も覚えきれなくて、途中から考えることを諦めてひたすら観るに徹していたんですが、それが良かったなあ。
普通の映画みたいに、全然親切じゃないというか、説明っぽさや演出の匂いがない分、余計にリアルで、主人公にのめり込んでしまって、心を持っていかれました。
凛とした佇まいの少年と少女のまっすぐさ、美しさに惹かれた分、鑑賞後は、しんどくて涙が止まらなかったです。
観て、本当に良かった映画でした。

改めて見返しての感想

4時間弱という長尺の映画で、かつミニシアターでかかる、ちょっと昔の台湾映画。…というと、たぶん映画を見慣れない若い人には、敷居が高いかもな?と思います。けれど、改めて見返すと、10代前半の少年少女の日常が軸なので、なんというかジュブナイル的な作品でもあるのかなと思いました。

時代が違うだけで、小四や小明たちの言動や表情、環境からくる鬱屈や暴発する感じは、同じ年代の子達には「めっちゃわかる…!」のじゃないかなと思って。特にラストシーンにかけて…

先日「ミニシアターエイドLIVE」で、玉城ティナさんが「17,18歳の時に牯嶺街少年殺人事件を観た」と仰っていて、10代でこの作品を観ると、本当に、世界観に没入した感覚を味わえるのかもな、などと思いました。羨ましい。

なんというのか、バタフライエフェクトか、ドミノ倒しか…”日常”だったはずが、すこしずつの周囲の変化が、自分の外郭を歪めていく”圧”をかけていく。その結果、実が弾けてしまうような。2回目鑑賞では、そんなイメージを抱いています。

好きな場面

2017年に1回観たきりなのに、びっくりするくらい、シーンを覚えていました。長尺だけど、やっぱり印象深い、”残る”作品だからかなと思います。

・保健室で、怪我をした小明と小四が出会い、一緒に学校を抜け出すシーン。足を引きずる小明を、小四がちょいちょい気にするところ、男前。映画撮影現場に忍び込んだ後、軍隊の演習所近くの原っぱでふたりが語らうシーン、ここの絵が本当に素晴らしい。

・小四の友達・王茂が小公園の中のクラブで歌う場面。彼のボーイソプラノ、めっちゃ美声で初めて聴いた時は椅子からずり落ちそうになりました。小猫王(リトル・プレスリー)と呼ばれているだけある。普段の言動とギャップが凄い。

・小四の父が学校に乗り込み、先生と対決する場面。小四はわりといろんな問題を起こしているのですが、父は小四をすごく評価しているし、信じている。ふたりで自転車を引きながら帰る場面もいい。父の「勉強して自分なりの正しい道を探すのさ/信念を信じる勇気がないなら生きる意味がない」「自分の未来を信じろ/努力が未来を決める」という言葉にグッときます。

・小猫王との待ち合わせのため、小公園 冰菓室(かき氷の店)に小四と小明が来て、テーブルに座っている場面。気恥ずかしいような、はにかむ表情が可愛い。そこからの、小明の恋人であるハニーが帰還して、チンピラ組に囲まれる不穏なムードが重いです。こういう気持ちのジェットコースターというか、翻弄される感じが、「牯嶺街少年殺人事件」の魅力だなと思っています。(途中まで、ハニー帰ってくるなよ~と思っていたのですが、この、ハニーのキャラがすごく魅力的なので、好きになっちゃうんですよね…強烈な個性)

・コンサートの夜の、怒涛の展開。転校生・小馬と小四が仲良くしてる感じとか、小猫王のステージとか、晴れやかな場面盛沢山なのですが、一方で、ハニーが敵対する217グループに単独で挑みに行って、殺されてしまうという…小馬の登場で、小四の周りは賑やかで明るい感じになるのだけど、小明の周辺が昏い雰囲気になっていきます。

・沈む小明を追いかけて「小明 僕がいる 勇気出して/怖がらなくていい/僕は一生離れない 君の友達だ/守ってあげる」と伝える小四。背景で吹奏楽部が演奏している賑やかな廊下で、そんな真摯で切実な対話をしているのが、すごくリアルで。けれど小明は「誰も要らない 当てにならない」と言い捨てて去るのでした。この場面、公式サイトのトップ画になっている名シーンですね…

・小馬は司令官の息子。家に日本刀やライフルがあって、無邪気な少年達が武器類で遊ぶのですが、明らかに異質なものたちに、遊び道具として触れていくうち、どんどん日常と非日常の教会が曖昧になっていく感じが、不安を掻き立てます。小馬はほんと明るくて、小四を「兄弟」と呼んで仲良くするんだけど、小明が彼の自宅で働き始めるようになって、もやもやします。

・小公園 冰菓室の、夜の暗闇に、鮮やかなネオンが浮かぶ感じ。私が「牯嶺街少年殺人事件」で思い出すイメージです。なので突然(でもないけど、均衡が破られた)敵対グループとの抗争が激化して、人がばんばん死んだり、冰菓室にも殴り込まれたりっていう、雨の夜のシーンがきつい、重い。もう日常には戻れないんだと。

「僕だけが君を救うことができる/僕は君の希望だよ」切ない…


登場人物が多くて混乱しますが、こちら、わかりやすいですね。確かに上映前に観ておけばよかった!


激アツなレビュー

「牯嶺街少年殺人事件」は本当に、熱狂的に愛されている感があります。ロケ地巡り、したいなあ…!

「牯嶺街少年殺人事件」は本当に名作です。スクリーンで観れてよかった。もしまた、何処かの劇場でかかることがあったら、必ず観に行きたいです。あの瑞々しく、美しい色合いは、スクリーンでこそ観たいもの。ぼんやり眺めているうちに、牯嶺街の世界に取り込まれてしまうような、同じ時間を生きているような感覚を、また、味わいたいです。


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