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推し映画26-「ガザ・サーフ・クラブ」について

はじめて「イスラーム映画祭」で鑑賞しました。情けないほど中東情勢に本当に疎い私は、昨年までこの映画祭に興味を持ちつつも(自分には縁のないもの)として触れてきませんでした。

けれど5月に開催された「ミニシアターエイドLIVE」で加藤るみさんが“国や社会情勢を取り上げた映画を観て勉強をするのが好き”と仰っていたのを思い出し、無知のままでいるより一歩を踏み出したい、映画の力を借りよう、と考えた次第です。

結論から言えば、観て本当によかった。できれば来年は、一本だけでなく、いくつか観てみたいです。

「イスラーム映画祭5」について

今年は13作品が上映されました。私が選んだのは「ガザ・サーフ・クラブ」です。タイミングが合えば「花嫁と角砂糖」と「銃か、落書きか」も観てみたかった。公式サイトより

・アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン〈デジタル・リマスター〉
・銃か、落書きか
・ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール
・ガザ・サーフ・クラブ
・ハラール・ラブ (アンド・セックス)
・ベイルート - ブエノス・アイレス - ベイルート
・ラグレットの夏
・イクロ2 わたしの宇宙(そら)
・神に誓って
・私たちはどこに行くの?
・アブ、アダムの息子
・花嫁と角砂糖
・わたしはヌジューム、10歳で離婚した

あまりにも中東情勢について疎すぎて、何を観ればよいのかわかりませんでした。なのでまず自分がソフトランディングできそうな「ガザ・サーフ・クラブ」を選びました。結果、正解だったと思います。(イスラーム映画祭公式Twitterより、画像を転載させていただきました)

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「ガザ・サーフ・クラブ」について

上映前に、主催者の方から、ガザの現状や、映画の見どころについてインプットしていただいてありがたかったです。

【Gaza Surf Club】
2016年 ドイツ 87分
フィリップ・グナート、ミッキー・ヤミーン / Philip Gnadt、Mickey Yamine
言語:アラビア語 / 英語 / ハワイ語 字幕:日本語 / 英語
【物語】 42歳のアブー・ジャイヤブは、若者たちにサーフィンを教えている。23歳のイブラヒームは、いつかガザでサーフショップを開くのが夢。そして15歳のサバーフは、子どもの頃は父親にサーフィンを教わっていたが…。
【解説】 イスラエルによる封鎖が続くガザの人々の現実を、サーフィンを通じて描いたドキュメンタリーです。天井のない監獄のようなガザの窮状や保守的な社会に夢を阻まれながらも、人間らしく生きる彼らの姿に希望が湧きます。

主催者の方が仰っていたとおり、映像も音楽も、本当に素晴らしかったです。
冒頭、ガザの海辺でのサーフィンの場面。ベンチャーズのあの曲(ダイヤモンド・ヘッド)ではなくて、アラビアっぽい、メロディアスなBGMなのが、すごく新鮮で素敵でした。ラスト付近の曲、「世界を揺らす波を待っている」という歌詞の歌も素敵でした。(知りたいのだけど、タイトルがわからない…)

※追記:SNSで教えて頂けました!本当に嬉しいです!



ハワイとガザのビーチが、かわるがわる映るシーンが印象的でした。ワイキキは色鮮やか。女性もサーフィンしてるし肌を露出している。ガザは褪せているというか、渇いた砂と、白っぽい色合いの海と空。そして男性しかいない。同じ世界なのにあまりにも違う。「ガザのビーチは世界で最高だ」と言っていた若者の言葉が、なんだか切なかったです。

ガザにサーフクラブをつくるのが夢で、海外で学びたいと語った23歳の医療従事者、イブラヒーム。ガザから出国することが本当に大変と言うか、まず叶わない。友人の誘いがあってもエジプト経由で5回チャレンジの末に却下され、イスラエルの米国領事館でやっとビザが発行され。念願のハワイで波乗りを楽しんだり、ボート作りについて学ぶ一方で“外の世界”を知る。映画の最後に「彼はまだ、ガザに戻っていない」とテロップが出たけれど、2020年のイブラヒームは、どうしてるんだろう。今は戻っているんだろうか、戻れないんだろうか。「ガザ・サーフ・クラブ」は、作られたのだろうか。もし私が彼だったら、ワイキキでやりきったと実感できるまで、戻らないかもしれない…と思いました。

42歳の漁師、アブー・ジャイヤブ。家族よりもサーフボードが大事だと笑う。ガザではボードが手に入らないから。どこに希望がある?と言いながら微笑む。それを見てなんとなく「Laughter in the Dark」という言葉を思い出しました。

15歳のサバーフ。海が好きで、サーフィンが好きで。でも成長した彼女はもう、海で泳げない。スカーフをしたまま泳いだら窒息しそうになるし、周りから奇異な目で見られ、罪だと言われる。自由がない。けれどラストシーン、お父さんにボートで沖まで連れて行ってもらって波に乗る場面。本当に晴れやかな表情をしていて良かったです。「帽子(スカーフの代わり)はしなくてもいい、どちらでも(好きにしたらいい)」と告げたお父さん、素敵でした。

浜辺に戻ったら女子たちに囲まれて質問攻めにあっているのも良かった。「いつか外国に行きたい。エジプトの俳優のように、ガザで有名になってサインを求められたい」と語っていたけど、ちょっとだけ、それが叶ったかのように見えました。いつか、彼女が抱くすべての夢が叶いますように。


映画の後の世界

上映前に、主催者の方から伺った現状。“天井のない監獄”と呼ばれるパレスチナ自治区のガザ。これは2016年の映画で、撮影自体はもっと前です。今はもっと状況がひどく、海の水質汚染が進んでサーフィンすらできない。ずっと街がロックダウン状態で、2014年に激しい戦闘があり、元々脆弱だった医療インフラもますます悲惨な状況になっていると伺いました。

元町映画館で開催されたトークショーのレポートも拝読しました。

本作が制作された2015年から5年経った今では、ガザの海はサーフィンができる状態ではないと岡さん。封鎖による燃料や物資の不足が土壌・水質汚染を引き起こしているだけでなく、生活のあらゆる場面に影響を及ぼし、封鎖さえなければ助かった命も次々と奪われている状態です。

異世界の出来事ではなく、半日とすこしの時間で行ける国で、人間らしく生きるために必要な夢や希望を閉ざされている人たちが居るのだということを知ることができて、本当に良かったと思います。知ったことで、次に“自分に何ができるのか”を探しながら生きていきたいと思う。

こうした映画祭を開催してくださる方々、また映画館の皆さんに、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また来年も必ず、勉強させていただきたいと思います。


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