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推し映画32-「ブエノスアイレス」

1997年公開の「ブエノスアイレス」。25年振りにスクリーンで鑑賞してきました。

2年前、「天使の涙」を劇場で鑑賞したい!とnoteに書きましたが、まさか「ブエノスアイレス」「天使の涙」「2046」までスクリーンで観ることができるとは…本当に嬉しいです。
ウォンカーウァイ監督、4Kリストア上映、本当にありがとうございます。いまだに夢を見ているみたいです。

今回の4Kリストア祭りで、一番楽しみにしていたのは勿論「天使の涙」だったのですが(2列目の席で思う存分浴びてきました!!)、まさかの「ブエノスアイレス」にガツンとやられてきたので、noteにしたためておきます。

「ブエノスアイレス」は1997年の公開当時に観ています。当時、「恋する惑星」「天使の涙」で香港映画ブームがきて、私もその映像美にすっかり虜になり、“ウォン・カーウァイ監督の新作”を楽しみにしていました。
当時、地元(広島)で「香港映画といえばシネツイン(今はもうないミニシアター)」だったように思うのですが、なぜか「ブエノスアイレス」は鷹野橋にあったサロンシネマで上映された気がします。まだ子供だったので、知らない映画館に行くのはめっちゃ緊張していました。

1997年。わくわくしながら観た「ブエノスアイレス」は、子供には難しくて、一度観ただけでは意味がわからなくて、続けて2回観たのでした(当時は入れ替え制ではなかったので…!)。
それでもやっぱりよくわからなくて、「どうしてお互い好きなのに、離れなきゃいけないんだろう?」「このふたりは恋人同士ではないの??」と腑に落ちないまま、なんとなく「綺麗だけど理解しにくい映画」という印象で置いていました。

なので今日、「天使の涙」の前に「ブエノスアイレス」を観ることに決めた時も、(眠いしうたた寝しちゃってもいいかな)位の気持ちだったのです。

それが、まさかの。

ウォン・カーウァイ監督作品で、一番「わかる」かもしれません。共感できるというか…。
すべてのシーンが、台詞が、表情が「わかる」のです。パズルのピースみたいに、「それしかない、そこしかない」とバチっとハマる感じ。
25年の時を経て、それなりにいろいろ経験してから観ると、こんなに感じ方が変わるんだなあ…とゾクゾクしました。本当、興味深い体験でした。

子供の頃は、どうして離れるのか理解できなかったけど、執着しすぎて辛くなる感じ。楽になりたくて離れるけど、寂しくて恋しくてまた戻ってきてしまう感じ。そういうことか…!と。

私の解釈ですけど、「ブエノスアイレス」はファイとウィンの2人&ファイの同僚チャンの3人しか出てこなくて、時系列が飛ぶこともなくシンプルな構成で描かれているので、すごく丁寧に描かれているというか、登場人物に共感しやすい気がします。

“男同士の恋愛だから”とか、あまりそこは関係がない気がして。
“想いが強すぎて、一緒に居るのがつらくなってしまう感じ”は、いろんな関係性に当てはまるんじゃないかな…と思ったりしました。
だから(私にとっての、ウォン・カーウァイ監督作品には珍しく)主人公ふたりに共感できたのかなと。

“悲しみを捨ててきてあげるよ”と笑うチャンの存在が眩しい光ですね。


なにからなにまで完璧でした。映像も勿論ですが、物語の流れが、美しすぎる…。
25年前に公開されたというのが嘘みたいに、2022年のいま観ても、洗練されていて、新しくて、色褪せないです。

※ネタバレあります※ 

ウィンがファイにタンゴを教えて、ふたりでキッチンで踊っているシーンとか。
チャンが差し出したレコーダーに語りかけながら顔を歪めるファイとか。
チャンが灯台に佇んで録音を聴いている姿とか。
ウィンが、イグアスの滝のランプの“シルエット”を観ながら泣くシーンとか。 


本当に、すべての映像、所作、台詞、光、音が美しくて。理解と共感ができて。たまらなかったなあ…。
「一番好きな映画」になりました。また観に行きたいです。

傷つけ合いながらも惹かれ合う、
恋人同士の切ない愛

香港から南米アルゼンチンへやって来たウィンとファイ。自由奔放なウィンと、そんなウィンに振り回されっぱなしのファイは何度も別れてはヨリを戻している。これも"やり直す"ための旅だったが、些細なことからまた痴話喧嘩をして別れ別れに。しばらくしてふたりは再会を果たし、怪我をしたウィンをファイが看病しながら一緒に暮らすようになるが……。

出演:トニー・レオン、レスリー・チャン、チャン・チェン
監督・脚本・製作:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル
1997年/香港/原題:春光乍洩/英題:Happy Together/96分/1.85:1/広東語・中国語・スペイン語/5.1ch
https://unpfilm.com/wkw4k/
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