スタートライン 25(小説)
タンクを背負い、周囲の安全確認をする。安全良し。バックロールエントリーという方法でまず先に船から海に入る。浮力を確保し、水面でゲストが入るのを待った。次々に海に入り、その度に水しぶき上がる。全員揃った事を確認すると、ゆっくりと僕達は海の中に降りていった。
少し早く降りながらも、インストラクターなのでそれぞれの安全を把握している。視界に全てすっぽりとおさまる様にしながら潜降を続ける。
今日はどんな魚に会えるかな?このままいけば透明度は期待出来るかな?という程度は考えるが、当然思考の大部分をチームの安全の為に使う。
これ、僕がダイビングが好きな理由の一つだ。僕の脳は普段、無意識に様々な事を考えて頭がフル活動している。だが、水中に入ると何故かいつもより考えなくて済み、毎回潜ると頭の中がクールダウンされる感覚を覚えている。だから仕事等が忙しい人にもダイビングをすすめたい。
とにかく癒されるし、あと大自然を肌で感じると普段抱える悩みがどうでもよく思える時がある。悩みは誰でもある。悩みがない人なんてきっといない。悩みとうまく付き合えればいいが、ロボットじゃないから難しい時ってある。だからこそ癒しは必要だ。何でもいいけど、癒しはなくてはならない。車もガソリンがないと走れない様に、人間も癒しというガソリンがないと走れない。じゃないと、こんなにシンドイ!と悩む人多いハズがない。癒しがないとシンドイ。休憩も必要だ。
そもそも、心の病の人は頑張っていないのかなか?皆どう思っているのだろう?
心がしんどくて心療内科に通ってて、治したいと願っている状態を、『めちゃくちゃウルトラ頑張っている』と言わず、何を頑張っていると言うんだろう?と思う。それを『闘病』と言わず何と言うのだろう。体の病を治そうとしている時に『闘病』と使うけど、心の病の時も同じだと思う。
心が疲れている時は、頑張っていないとか、怠けてるとか言われたり、自分でも思ってしまうかもしれないが、違う、頑張っている。頑張っていなかったら、そんなに辛くない。そんなにしんどくない。立派すぎる位頑張っているから、そんなにツライのだ。『仕事や学校、逃げていいと思う。充分頑張った。休んだりやめてもなんとかなる!!なんとかなる!!』と声をかけてあげたい。皆どんな声をかけているのだろうか『頑張れ!』なのか、もしくは『もっと頑張った方がいい』かな。
何が正解かはわからないが、僕は『充分頑張ったよ、逃げていいよ』と声をかけたい。
日本では、毎年多くの人が自殺をして亡くなっている。体の病気別では癌の次に亡くなっているのでは?と思ってしまうくらい、多くの人が自殺している。原因は様々だけど、仕事や学校が理由という人も少なくないはず。死を選ぶ位シンドイって、どれだけシンドイのだろう?。想像出来るのかな?そして、トコトン想像した後、どんな言葉が出てくるのだろう。
そういう心の病を抱えている人が苦悩している状態を、頑張っていると認めていない人が多い気がする。悲しいし、寂しい。何げない一言が、苦悩している人にとって重い言葉になってしまったり、引き金になってしまう。今は人生の中で、車でいうとガソリンをいれている時なのかもしれない。ガス欠なのかもしれない。早く走る他の車に焦らなくてもいいんじゃないかな、今はそういう時なのかもしれない。みんながみんな、同じ目的地じゃないのに、どうして比べてしまうのだろう。
実は比べなくていいんじゃないかな。
~しなければならないというのは、実は生きる上でそんなにない。学校やめても何とかなる。仕事やめても何とかなる。家事しなくても何とかなる。
息抜きしてもいいんじゃないかな、休んでもいいんじゃないかな。ダラダラのんびりしてもいいんじゃないかな。いい、いい、いいよ、いいんだと言いたい。ホントにシンドイ時はどんな言葉も入ってこないし、入ってこなくていい。スグに変わらなくていい。スグに切り替えられなくていい。下むいてもいい。たっぷり自分に癒しをあげてほしい。たくさん、いっぱい。顔をあげるのはそれからでもいい。
それからでもいい。HPがなくなりかけの人に、優しい言葉をかける人でありたい。
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