スタートライン 30(小説)ラスト

 がらんと何もない空間で一人、感慨に浸っていた。全てはこの状態からスタートした。
 6年前、立ち上げメンバーのみさきとここから始まった。机や椅子を組み立て、何を揃えよう?どんな店にしよう?毎日沢山話し合ったのが、つい最近のような気もする。
 何もなかった。どうなるかもわからなかった。絶対うまくいくように努力をすると決めていたが、その絶対に確証はなかった。

 あれから数年、色々な出来事があった。ここでずっと営業を続ける気はなかったが、ついにここで営業をする最後の日を迎えた。閉店ではない、移転だ。店を大阪の中心地に移転する。それはお客様の利便性向上の為が第一の理由。この数年でお客様が増えて、この広さでは手狭になったのも確か。そして、ハンディキャップダイビングをしている関西で唯一の店として、バリアフリーの店舗にするというのも移転の目的としてある。ここではバリアフリーには建物の構造上改装出来なかった。
 もう35才になる。だが、まだ35才と言いいたい。まだまだ長生きするつもりだから、この先の生きる時間はまだ残っている。けれども、この先の人生の中、元気に全力で一番動けるのは今だ。10年後や20年後ではない。その時も元気でいるつもりだが、今が一番体力があるはずだ。

 嘆くダケでは解決しない。批判するダケでは解決しない。愚痴るダケでは解決しない。だから本気で全力で取り組んでいる。一日は24時間しかないし、人生はたったの1度しかないし、今も、今日も1度しかない。夜仕事をきりあげて店を出る前、ここにあったソファーで、ぼーっとしてしばらく動けない事がよくあった。ずっとそうしておきたくなる位、全力で生きたといつも感じていた。そういう1日の最後、少し休憩をそうやって入れていた。そうしながら、その日あった楽しかった事を思い出し、関わっていただいた人達に感謝した。

 夢は叶うと言ってくれる人の夢は叶っている事が多い。叶えた人、頑張っている人に夢を話すと、応援してくれるし、アドバイスもしてくれる。夢は叶うと言ってくれない人の夢は叶っていない事が多い。叶えていない人に夢を話すと、無理、どうしてそんなに頑張るの?と否定しか言われない。いつか夢描いた「いつかの未来」は今生きてる今日なのだろうか。「いつかしたい」と言っていた事は実現しているのだろうか。今も「いつかしたい」と言った事はいつ実現するのだろうか。実現させるかさせないかは自分に決定権がある事がほとんど。何があるかわからないからこそ、実現させたい。
 人生はあっという間。今挑戦と学びと成長に時間を使っている人はずっと前からそれをしていて、数年後もそうなのだろう。批判にかなりの時間を使うのもアリだけど、数年後どうなりたいか?を考えると、何をどうするか?がイメージつきやすい。

 現代の日本は、努力である程度報われる社会だ。ただ、何か夢や目標を叶えたい場合、同じように努力をしている人は沢山いるという事実がある。だから努力を継続する事は前提条件であり、それに工夫を重ねないと夢や目標は叶いにくい。チャレンジしがいのある社会だ。魔法はないと思っていたが、その存在に気づいた。それは「努力」という魔法。夢や目標を叶えた人はみんなこの魔法を使っている。だったら使わないという手はない。努力しても叶わないとわかっていたらしようとはしないけれど、ほとんどの夢や目標は、この魔法である程度は叶う気がする。努力するのも自由、努力しないのも自由。それは自分で選べるし、これまでも僕らはどちらかを選んできた。そして努力をするという選択をした所で叶わないかもしれないので、それはリスクと思っていた時期があった。しかし、努力をしないという選択も夢が遠退くというリスクがあった。どちらにもリスクはある。

 まだまだやる。まだまだ出来るはず。頑張っている時間が好きだ。その時間が夢や目標へと近づいていると信じている。夢や目標は、一人では叶わない。誰よりも努力をして、誰よりも熱狂をして、誰よりも感謝の心を忘れずに生きる。

 みんな生きているが最後は死ぬ。天才も、お金持ちも、すごい人も、どんな人でも最後は死ぬ。いつかはわからないけど死ぬ。けど、死ぬ事は不幸ではないという考えもある。そうじゃないとみんなハッピーエンドにならない。
 ハッピーエンドってある。
 ハッピーエンドになる人生にする。

 さあ、昨日はどんな日であり、今日をどんな日にしようか。昨日、何回ありがとう言えただろう、何回ありがとう言われただろう。何回批判しただろう、何回批判されただろう。何回笑顔にさせただろう、何回笑顔にさせられただろう。それは望んだ一日であったのだろうか。今日も同じ日がいいのだろうか。さあ、今日はどんな日だろう、さあ、今日ははどんな日にしようか。

【完】

大阪でダイビングスクールをしています。関西の海でライセンス講習をしています。

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