スローなカフェ①
1度目の滞在
広島の瀬戸内海に面した町竹原、その街並み保存地区にある(スローカフェなかざわ)は、英子さんという女性が一人で切り盛りしている。 私がそこに初めて訪れたのは5月の竹原竹祭りの頃である。私は三泊の滞在を申し込んだ。到着すると、そこは〈なかざわ〉という酒屋さんだった。店に入ると、商品の半分は自然食品や環境に配慮された物が陳列され、店の奥には、カフェが併設されている。私のここでの希望は、自然食の料理を教わる事と、畑の手伝いである。夜、英子さんからいろいろな話を聞いた。妹は生まれつき体が弱く、若い頃に亡くなった。その妹の遺言があって、自然食品の取り扱いを始めたそうだ。英子さんのやっていることは徹底していた。食事は玄米菜食で、使う野菜や果樹は無農薬で自家栽培したものを使う。調味料も作れるものは作り、生活面では洗剤は使わず、酵母液を作り〈すべての洗剤〉の代わりに使っていた。それを畑にも利用し、病院にはほとんど行かず〈自然療法〉で治して来たらしい。そんな英子さんを手伝う日々は学ぶ事が多く、貴重な体験ばかりだった。
朝は、必ず梅醤番茶を飲み、したくを調え畑に行く。畑仕事から戻ると開店準備を始める。野草茶を沸かし、季節のポタージュスープを作り、とれたての野菜でサラダを作る。メインのおかずに〈人参葉のフリッター〉や〈里芋のハンバーグ〉などを作った。これらはカフェの看板メニュー(マクロビランチ)に添えられるものである。それが終わると、私に最初に与えられた仕事は葛の根を細かく砕く事だった。掘り起こしてから少し時間の経った葛は堅く乾燥していて包丁では刃が立たず、途中からノコギリも使った。二日間をかけて、ようやく細かく乾燥させる状態にまで、する事ができた。
2018年5月始め
竹原竹祭りでの竹筆作り↑