文を書く人になる#0 原体験
中学3年生、ずっと苦しかった部活を引退した。
費やした時間と精神を受験勉強に100%切り替え、
勉強はすればするほど理解が深まる手応えがあり、
すぐに偏差値に現れるのが面白く、どんどんのめりこんだ。
帰宅部組と教室で自習をしながらお喋りする時間も好きだった。
これまで喋る時間がなかっただけで、色んなタイプの気が合う人がいることにも気づいた。
秋が過ぎ、冬の寒さも厳しくなり、いよいよ本番までカウントダウン…となる頃、ちょっとピリピリした空気のなか友人が呟いた。
「もうやだなー。なんのために、勉強してるんだろう。」
彼女は派手な化粧に隠れがちな真面目さと素直さをもっており、学区一可愛い制服の、学区一高い偏差値の私立高を目指していた。
成績は確か、一歩及ばずといったところだったか。苦しい時期だったんだろう。
そのとき、私がこう答えたらしい。
「やりたいことを、諦めないためじゃないかな。」
要は、潰しが利くように、と。
夢ができたとき、出身校や知識量といった障壁にならないよう、可能性を広げることが目的なんじゃないかと。
彼女は、その回答に納得し、また頑張り始めた。
ただ、現実は残酷なもので、確か第二志望校に進学したように記憶してる。
この話には後日談があり、卒業式の日、文集の発表の中にこのやり取りがあった。
「この会話から、将来のためだと思って苦しくても頑張れました」
ふとした会話のひとつだったけれど、彼女の背中を押せたんだ、辛いときにふんばる力になれたんだ、とおもうと、ものすごく嬉しかった。
『彼女の心に灯をともした』
とお世話になっているキャリアカウンセラーさんに返され、はっとした。
ずっとお客さん向かいの仕事をしているのは、誰かを励ましたり、癒したり、喜ばせたり、そういう『心に灯をともす』体験を積み重ねたいんだなと気づいた。
私自身が、いろんな人やことばや時間に『心の灯をともさ』れる。例えば、書籍から得た新たな視点にドキドキしたり、ピリピリした日のコーヒーにほっとしたり、辛かった出来事へのあたたかな声かけに癒されたり。
そして、仕事やなりたい人物像を含めた将来を考えたとき、もっと意識的に誰かの『心に灯をともし』たいと強く思った。
だから、文章を、ことばを綴ります。
忘れられない原体験とそこから生まれた想いが、スタート。
いま始まったばかり。