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アート×国際協力。支援する↔されるの境界線を壊す、新たな外交の形を創り出す。-Taishi

MAKERS U-18 PEOPLE シリーズ。今回は【和傘×国際協力】で新しい外交の形をつくろうと奮闘する、9期生・村上太栞さん。

国際協力の二分される関係性に疑問を抱きつつも、解決策が見つからなかった村上さん。気持ちだけが「世界を変える高校生」に向かっていたといいます。

アートを通して国際協力に向き合う「狂気」を今、どのように形にしているのでしょうか。

アートと国際協力を結び付けたきっかけ、今までの葛藤、そして自分自身が大切にしていきたい生き方について伺いました。

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“ウィンウィンな新しい外交を提案できる和傘を作りたかった”

簡単に自己紹介をお願いします。

 村上太栞と申します。アートを切り口とした国際協力を提案しながら、アフリカ・ルワンダ共和国のひとつの地域と共に和傘のブランドを立ち上げています。

活動をはじめたきっかけは何ですか?

 ルワンダの人たちが日々たくさん生み出しているアートをもっと実用性のあるものに昇華させたいと思ったためです。

 自分は元々外交官を目指していましたが、MAKERS U-18の合宿で自分のルーツや日本を忘れずにいたい気持ちが外交官という夢につながっていると気づきました。

 そこで日本文化とアフリカを掛け合わせ、アートを表現した和傘を考えました。

 和傘は地元の山形にもあり、江戸時代には東北一の和傘の生産地として栄えていたそうです。しかし現在はお年を召した職人さんが細々と伝統を紡いでいます。全国的にも需要減と高齢化で存続の危ぶまれる業界です。

 発展途上国だけではなく、日本にも貢献できるウィンウィンの新しい外交を提案できる和傘を作りたかったんです。

 どんな和傘なんですか?

 和傘にはルワンダの要素を多く取り入れ、素材や絵付けも現地の人々に担当してもらっています。

 アフリカのアートや産業生産品を、日本の技術を使ってより高めるという構造は、日本にとってもルワンダにとってもメリットがあることなのではないかと思っています。

 アフリカのアートはすごくユニークで面白くて、色のタッチも日本人と全然違うのです。日本人にも新鮮なデザインとして響くと思います。

”境界線を壊して、対等な存在として一緒に価値を作れたら面白い”

昔から和傘や日本文化に関わることもされていたのですか?

 一番最初の活動は和傘や日本文化とは関係がなく、アフリカの人々とものづくりの楽しさを体験するワークショップをしていました。

 国際協力の支援する側・される側の関係性に疑問を感じていました。その境界線を壊して、対等な存在として一緒に価値を作れたら面白いのではないかと思い、絵画ワークショップを始めました。

 アートの強みは有形性だと考えています。楽しんで生まれた創作物が、新たに誰かに何かを伝えるツールになっていく。日本に帰国後も、制作した絵画の展覧会をしていました。

  外交官や途上国に関わる仕事に漠然と憧れていた時、アフリカで起業している日本人の方と出会いました。その方が示してくれたアフリカの姿は、自分が思い描いていた発展途上国の姿とは一線を画していました。

 発展途上国に暮らしている人々は、貧しくて生きる希望を持てていないのだろうと思っていましたが、実際にはそうではないと学びました。

 これがアフリカに興味を持ったきっかけです。

“支援という言葉を使うと、情けをかけているように聞こえてしまう。対等な関係性を築くために、商品の価値だけで売っていきたい”

和傘が形になるまでの経緯を教えてください。

 MAKERS U-18の合宿で和傘に着目し、和傘工房に協力の依頼を続けていました。その後、湘南の和傘工房の皆さんに協力していただき話が進んでいきました。

 その後、他の起業家育成プログラム、「BLAST! SCHOOL」に参加し、プロダクトが誰に求められているのか考えました。

 ターゲットはミレニアル世代やアートに関心がある層へ、国際協力という社会的な価値から呼び込むところにフォーカスしてブランディングを進めています。

和傘を届けるにあたって大切にしている価値観はありますか?

 支援という言葉を使いたくないのです。情けをかけているように聞こえたり、「アフリカがかわいそうだから買ってあげよう」というニュアンスが生まれてしまうのではないかと。

 そうなってしまうと、独善的な関わりになりたくないという当初の思いに反してしまいます。対等な関係性を築くために、商品の価値だけで売っていきたいと思っています。

 日本にもルワンダにも完全に属さず、その中間にある存在として新しい文化を作るカルチャーブランドを作りたいと思っています。

ブランディングで参考にされている人はいますか?

 同じMAKERS U-18の先輩、髙橋史好さんのTOKYO LOLLIPOPに影響を受けています。一番最初に来るイメージは「東京」で、インドで制作したリングのストーリーはブランドを知るうちに徐々にわかっていく。国際協力に繋がりつつ、最初から見せすぎないブランディングを参考にしています。

 また、JICA出身でルワンダで活動されている日本人アーティストの方も参考にしています。その方はルワンダの子どもたちにアートを教え、画家やデザイナーとして独り立ちできるサポートをしています。すぐ結果に繋がるわけでも、自分の利益になるわけでもない。それでも、アートを子どもたちに教えることが好きだから活動を続けていらっしゃって、作品を買う側と作る側の二つの方向性を持つことが、自分にとっても大事にしたい姿勢です。

“自分の好きで続けているものと、身の周りから求められているものをうまくマッチングできた”

アートはいつ頃から興味を持たれたんですか?

 小さい頃からアートや自己表現が好きで、続けていました。

 国際協力に繋げたいと考えるようになったのは、先ほどお話ししたアーティストの方に出会い、刺激を受けたことが大きいですね。

 その方は韓国出身、横浜在住のアーティストで、国境を越え、知らない土地で人々と共にものを作る姿を見ていくうちに、自分がやりたい国際協力の形にアートが機能するのではないかと仮説を立てました。

子どもの頃の印象的なエピソードはありますか?

 遠くに住む祖母が服薬補助が必要になってしまったことがありました。その時祖母は何十種類もの薬を毎日服薬しなければならず、何か祖母にできることがないかと考え、自分の好きな工作を使って服薬補助のガチャガチャを作り、プレゼントしました。

 この出来事が、自分が好きでやったことが社会に繋がる感覚を掴んだ原体験です。

 また、小中高で学校行事のパンフレットやポスターの製作を担当させてもらうことが多く、好きで続けているものと周りから求められることをうまくマッチングできたのは大きかったと思います。

 なので仕事と趣味で分ける感覚があまりなくて、好きでやっていることの延長線に仕事がある感覚です。

他に印象に残っていることはありますか? 

 中学校の時、コロナ禍で学校生活がストップしてしまいました。その時、委員会活動が始まり、自分が求められていることは何だろうと考えていました。

  コロナ禍では日常の活動がほとんど制限され、友人とも会話ができませんでした。そこで、会話を引き出す側に回りたいと思い、当時普及していなかったZoomを使って昼の放送を作りました。

  祖母のために作ったガチャガチャは、祖母や周囲からの要望ではなく、自分が祖母のためになりたくて考えたものでした。それはある意味自分の押し付けの感情で、祖母の時はうまく機能しただけでした。

  対して、独善的ではない考えで始めてうまくいった経験が、この昼の放送で作りです。コロナ禍でみんなの気持ちが沈んでいて、昼の給食の時間も前を向いて食べなければいけなかった。会話が止まっていたところに会話を作り出せたことで学校のみんなから感謝してもらえて、社会と繋がった感覚がありました。

”地に足がついていない感覚を、自分の中でも他の人からの見られ方でも感じていました。”

今まで活動をされてきた中で、しんどかったことや嫌だったことはありましたか?

 地に足がついていない感覚を、自分の中でも他の人からの見られ方でも感じていました。

  発展途上国に行きたいと思うような人は少なかった中で、自分はどうして発展途上国にこだわっているんだろうと自分の中に迷いがあり、周りからの目も気になりました。この方向性で進んでいいんだろうかと。

  この感覚に苛まれることが多く、苦しかったです。

その感覚は今も続いていますか?

 今は自分の中に落とし込めています。

  発展途上国で活動している方々とお会いすると、みなさん口を揃えて、自分の地元や両親を置いて活動を続けていていいのかとおっしゃっていました。その方々も悶々とされていたのです。

  ルワンダに行くまでは地元へのこだわりなどはありませんでしたが、発展途上国に資するだけでなく、日本や地元にも関わり続けたいなと、その方々の言葉から思うようになりました。和傘をプロダクトに反映しようと思ったきっかけでもあります。

  ルワンダに在住の日本人ご夫婦に折り紙をプレゼントしたらすごく喜んでいただいて、海外で活動している日本人の方も、日本との繋がりを求めていると感じました。

  それは精神的にもプロダクトとして形に残るものでも提供できる価値だと思っています。

  この和傘ブランドも、国際協力関係者の方や、海外在住の日本人の方々にもフォーカスしていきたいです。

”途上国と自分の地元や日本を繋げる存在になる”

その葛藤を乗り越えて変わったと思うことはありますか?

 地に足がついていない感覚は、独善的さとも関わっていると思います。社会のため、役に立つため、そういった感情って周りを巻き込んでいないとあまり評価されないのではと思います。自分が評価されるためにやっていなくても、周りからは独りよがりに活動しているように見えるのではと思います。

  自分の好きを追求する上で、事業まで価値を高めていくことで巻き込める人が増えていくと、独りよがりではない形にできると思います。

  地に足がついた感覚は、地元に残るとかそういったことではなく、海外の地で地元のことを想い、関わりを持つことでも成立すると思います。

  発展途上国に関わるだけではなく、途上国と自分の地元や日本を繋げる存在になることで、地に足をつけていない感覚から解放されていると感じます。自分の和傘への思いともマッチしているので、よかったと思います。

”自分の理想とするアートやデザインの追求と、社会から求められていることの両立を図る。できなくても両立しようともがいていく”

今、何を追い求めていますか?課題解決や世界一を目指す人もいれば、自分の好きなことを追い求める人もいたり、人によって違うのだろうなと思っていて。

 そうですね。自分の事業をソーシャルビジネスとして考えれば、社会課題の解決や貢献という側面もあります。一方で、ただ単に自分の好きなことをしているだけという感覚もあります。ハイブリッドに色々な側面があります。

  事業を進めるにあたっては、自分の追求したい感情とは一旦離れて、社会側の視点に立って設計していくことが必要だと思っています。事業を通じて、アフリカで起きたジェノサイドのサバイバーの方の自立をサポートしたいです。作品製作を通じた金銭的な支援もそうですし、アートセラピーとして心の安らぎにも繋がる、雇用を生むだけでなく、寄り添うようなサポートを進めています。

  自分の内面にある追求したい感情との両立はできている気がします。サバイバーの方をサポートすると同時に、自分がやりたいアートやデザインをアフリカの人たちと一緒に作ることができる。これ以上に最高なことはないですね。 

 自分が好きなことを社会にわかりやすい形で提供できる。それがアートをビジネスに繋げている理由だと思います。

  MAKERS U-18の合宿に参加する前は、国際協力の道だから外交官になりたいという、なんとなくの思いしかありませんでした。

  しかし、外交官になって自分が目指す「対等な関係を前提とした支援」が実現できるのか迷いがあり、進むべき道を定めきれずにいました。その結果、芸術や和傘を活用した支援活動に十分に力を注げていませんでした。

  合宿を通じて、自分の好きを追求していくことが、いずれ社会的な価値に繋がっていくことに気づきました。

  だから、いずれ社会的な価値に繋がると信じて、アートやデザインを続けています。

自分の本能や望んでいること、自分自身の野性や狂気を開放していった先に、5~6年後の自分はどうなっていると思いますか?

  5年後は、大学を卒業するぐらいのタイミングで、アフリカでデザインやアートを作りまくっていると思います。フラフラしていると思います。

  あとは国際協力の視点で物事を考えたくて、マクロとミクロの視点をすごく考えています。

  マクロは広い視点、ミクロは小さい視点で、発散と収束に似ています。

  自分の興味や好きなことを発散させていくと全く違う領域との交わりが生まれることがあって、そこにフォーカスして収束させて、また発散を繰り返すことが大事だと思っています。

  これから先、もしかしたら別のテーマにフォーカスして突き進む可能性もあると思っています。アフリカでアートやデザインをしている中で新たな出会いがきっかけになって、別のテーマにこだわっている未来もあるかもしれません。

では、10年後はどうなっていると思いますか?

 野性や本能を開放しつつも、しっかり折り合いをつけることがテーマになってくると思います。それは国際協力の文脈でも、自分の内面でも同様です。

 国際協力では、一つの施策を打ち出しても効果を生むのは一部の地域だけかもしれませんし、短期的なものかもしれません。でもそれが絶対に駄目ではなく、色々な層や長期的なアプローチが必要だと思います。

 自分の理想とするアートやデザインの追求と、社会から求められていることの両立を図る。できなくても両立しようともがいていく、それが自分のしていることだと思います。

 なので、もがき続けていると思います。それが大事だと思います。

 動くのをやめずに、とりあえずもがいてみる。いずれそれが何か良いものに繋がるかもしれない。繋がると信じて進むしかないと思います。

村上さんの想いや願い、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援しています!

[取材日]2024/08/25
© Taishi Murakami & ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

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